湖水地方の山中に、スーパーはない。確かにちょっとは不便だけれども、
地元の人々が意に介する風がないのは、自分たちで食材を育てたり、
地元の「食」を大切にしているから。
湖水地方の「ありのまま」の自然や農業を守るため、
それに何より新鮮で美味しいから、彼らは地元で採れた食材に強いこだわりをもつ。
湖水地方特集2回目の今回は、「食べる / 飲む」をテーマに、
英国人の誰もに愛されるビールとアイスクリームに注目。
湖水地方の味を守り続ける人々の思いを、舌で存分に感じてみよう。
(本誌編集部:村上祥子)
取材協力: 英国湖水地方ジャパンフォーラム(www.kosuichihou.com)
Local Beer 地ビール
水の美味しい場所には、美味しいビールがある。大自然が生み出す豊かな湧き水に恵まれた湖水地方には、昔ながらの醸造方法を守りつつ、独自のビールを造り続ける小さな醸造所、マイクロ・ブリューワリーが点在している。醸造家たちが慈しむように育てたビールは、造り手たちの思いとともに熟成し、湖水地方の地ビールを愛する人々のもとへと渡っていく。いつもなら喉の渇きとともに一気に飲み干してしまうビールも、ここ湖水地方では、そんな時の流れに思いを馳せつつ、じっくりと味わってみたい。
ビールの種類
ビール醸造は「上面発酵」と「下面発酵」という2種類に大別できる。上面発酵とは、常温(18~25度)で発酵させる醸造法。酵母は液面に浮いてくる。一方、下面発酵は低温(6~15度)で発酵させる方法で、酵母は液体の底に沈んでいく。英国でよく飲まれるエールやスタウトは上面発酵により醸造されたもので、コクと果物の香りが特徴的。色は濃く、冷やさずに飲むのが一般的だ。日本で人気のピルスナーは下面発酵のビールで、色は淡色、爽やかな喉ごしと苦味が魅力だ。リアル・エールとは?
エールの中でも、英国の伝統的な醸造方法を守り、濾過も加熱処理も行わず、樽(カスク)内で二次発酵させたものはリアル・エールと呼ばれる。今回ご紹介する醸造所はすべて、リアル・エールを守るために活動する消費者団体、CAMRA(Campaign for Real Ale)が発行している「Breweries of Cumbria」にその名が載っている、本物の「リアル・エール」を提供している場所である。経験ゼロの職人がつくりあげた味
Barngates Brewery

最近では雑誌等でも取り上げられる人気パブとなった

ビールには、このパブで飼われていた
代々の犬の名が。ラベルにも犬たちの
イラストが使われている
ウィンダミアやボウネスと並び、観光客に人気の高いアンブルサイドを車で走っていると、山中に多数の車が並んだ駐車場が目に止まる。キツネや鹿の頭部の剥製が飾られ、ダーク・ブラウンの家具で統一された重厚な雰囲気のガストロ・パブ兼ホテル「ドランケン・ダック」。近年では予約しないと入れないこともあるという人気店だ。そしてこの店に隣接しているのが、バーンゲイツ醸造所である。もともとはホテルの地下貯蔵室で細々とビール醸造を行っていたが、1997年、オーナーが ホリデー・アパートメントだった隣の小屋を改造し、醸造所を設立。現在では、7種のエールを、カンブリア地方はもとより、ヨークシャーやランカシャー、マンチェスターなどの各地方に送り出す、知る人ぞ知る存在となった。
創業当初からここで働くジョンさんは、92年にブラックプールからやって来た。それまではバーで働いていたというジョンさん、実はそれまで全くビール醸造に関する知識がなかったのだとか。「でもイエーツ醸造所で38年の経験を持つベテランが、ゼロからすべて教えてくれたんだ」。湖水地方最古のマイクロ・ブリューワリーのベテランが、惜しみなく与えてくれたその知識と知恵を吸収し、十数年が経った現在。「ここのビールが一番。岩山から生み出される水が何と言ったって素晴らしいからね」と胸を張る、プロの醸造者として成長していた。

左)ビールのラベルをモチーフにしたTシャツに身を包み、満面の笑みのジョンさん
右)ほのかな明かりに照らされたパブ内は落ち着いた雰囲気
Barngates Brewery
Barngates, Ambleside, Cumbria LA22 0NG
TEL: 015394 36575(Brewery)
015394 36347(The Drunken Duck Inn & Restaurant)
www.barngatesbrewery.co.uk
営業時間(Drunken Duck): 月~土 11:30-23:00、日 12:00-23:00
家族と地元を愛するアットホームさが魅力
Coniston Brewery

深紅の家具と時代を感じさせる写真の数々が印象的な店内
最近、新たにピルスナーを取り入れた。「常に新しいことにチャレンジし続けたいのよ」とにっこり笑うのは、コニストン醸造所に隣接したパブ兼ホテル、「ブラック・ブル」のオーナー、スーザンさんだ。

家族の名前や地名が付けられた銘柄が並ぶ
コニストン醸造所は1995年、ブラック・ブルのオーナーの息子であるイアンさんの手によりスタートした。一部銘柄は米国やスウェーデンなどにも輸出され、英国内外で数々の賞を獲得しているが、この醸造所やパブが醸し出す空気に、気取りは全く感じられない。実はエールよりラガーが好みで……と、リアル・エールが自慢のパブで恐々切り出せば、気分を害した様子もなく、「それならこれ。そうそう、これもお勧めよ」とラガーに加え、オートミール・スタウトを味見させてくれる。口にした途端、スタウトならではのコーヒーのような芳ばしさを舌に感じつつ、喉にはすっと通っていく爽やかな後味に、「ああ、これならラガー好きにもぴったりですね」と言いながら飲み干すと、うれしそうに破顔した。
「このOliver's Light Aleという銘柄は孫の名から、Thurstein Pilsnerは、地元の水の名をとったのよ。いいでしょう?」と誇らしそうに語るスーザンさん。地元や家族を愛するアットホームな醸造所とそのパブは、今日も地元民や観光客、ビール愛好家や初心者を問わず、誰にでも温かく、ご自慢のビールを振舞っている。

左)家族連れも入りやすいアットホームな雰囲気が魅力
右)笑顔で次々とお勧めビールを出してくれたスーザンさん
The Coniston Brewing Co.
Coppermines Road, Coniston, Cumbria LA21 8HL
TEL: 015394 41133
www.conistonbrewery.com
The Black Bull Inn and Hotel
Coniston, Cumbria LA21 8DU
TEL: 015394 41335
www.blackbullconiston.co.uk
営業時間: 10:00-23:00
犬好きが集う、地元民憩いの場
Watermill Inn & Brewing

次から次へとひっきりなしに馴染み客がやってくる
隣り合わせになった2つの家族のテーブルの下で、それぞれの家族の飼い犬同士が、仲良くエサを食べている……。土地柄、犬を飼っている家庭が多い湖水地方の中でも、スタッフ、客ともに犬好き率が非常に高いウォーターミル。店に入れば、挨拶と同時に犬用のエサを手渡してくれるこのパブは、いつでも飼い犬を連れた地元民で賑わっている。とはいえ、このパブの売りは犬歓迎というだけではない。ビールはもちろん、地元の新鮮な食材を使った料理もかなりのもの。特にビールを醸造する際に出たカスを食べて育った牛の肉を、人気の自家製ビールCollie Wobblesに漬け込んで調理したビール・アンド・エール・パイなど、ビーフ料理の評判は高い。

肉料理だけでなく、地元で栽培された野菜を
使った料理も新鮮そのもの
現在、醸造所で働いているのはわずか2人。創業の翌年、1997年から働き始めたブラックプール出身のヒューさんと、1年前に湖水地方にやって来たポーランド人のマーティンさんだ。「英語がまだ上手くないんだ……」と言いつつも、工程表を広げて醸造の過程を一つひとつ事細かに説明してくれたマーティンさんが、「ほら、まだカスが浮いているだろう? これを一日置くと、この液体が澄んだ奇麗な色になるんだ」と目を輝かせながら、醸造途中のビールを飲ませてくれた。酵母がふわふわと浮き、苦味がありつつもまろみを感じさせるそのビールはほのかに温かく、この温かさと柔らかい風味こそが、地元で育まれたビールの醍醐味なのかもしれない、と思わされた。

左)清潔感漂う石造りの建物
右)「これは英語で何て言うんだっけ……」と悩みながら、笑顔で醸造工程を教えてくれたマーティンさん
Watermill Inn & Brewing Co
Ings, near Windermere, Cumbria LA8 9PY
TEL: 01539 821309
www.watermillinn.co.uk
営業時間: 月~土 11:45-23:00、日 11:45-22:30
(食事は12:00-21:00) (12月25日休)
町の集会所の趣を持つビア・ホール
Hawkshead Brewery

モールの一角に位置する醸造所の近くには、手づくりパンを売る店やアイスクリーム・ショップも
「一度カスク・ビールの味を知ってしまうと、缶のビールなんて味気なくなるよ」と笑いながらビールをぐいっとあおる、2人のおじいちゃん。何でも、ここホークスヘッドで年2回、開催されるビア・フェスティバル目当てでマンチェスターから来たのだとか。
ホークスヘッドはもともとはその名の通り、ホークスヘッド地域にその居を構えていたが、創業から4年が経った2006年、事業の拡大に伴い、3倍ほどの敷地面積を持つここ、ステイブリーに移ってきた。数人で経営している他のマイクロ・ブリューワリーと比べると、かなり規模が大きい。

ホークスヘッドの
ビールは、湖水地方の
様々なパブでも味わえる
1階はショップとカフェ、2階がビア・ホールとなっている。ビア・ホールと言っても、広々としたフローリングの床にシンプルな木のテーブルと椅子がゆとりをもって配置されたこの空間、大勢の人が大騒ぎしながら押し合いへし合いビールを飲み交わすというよりは、町の人々の憩いの場といったイメージに近い。実際、時折イベント会場としても使われるのだと言う。ホールからはガラス越しに醸造所の作業工程を垣間見ることもでき、希望すればツアーも行ってくれる。
ホークスヘッドの瓶ビールは、オンラインでも購入が可能だが、やはり現地で味わうカスクの味は格別。クリーミーな泡をつくるため、ゆっくりと注がれたビールは、地元ケンダルのサビン・ヒル・ファームでつくられたボリュームたっぷりのポーク・パイをお供に、一口ひとくち、じっくり味わいたい。

左)昼間からぐびりと一杯。やはりカスク・ビールの味は格別だ
右)すっきり広々としたホール内
Hawkshead Brewery
Mill Yard, Staveley, Cumbria LA8 9LR
TEL: 01539 822644(Brewery)/ 01539 825260(The Beer Hall)
www.hawksheadbrewery.co.uk
営業時間: 月、火 12:00-17:00、水~日 12:00-18:00
Ice Cream アイスクリーム
英国では老若男女、誰もが大好きなアイスクリーム。そのアイスクリームの主原料と言えば、何といっても牛乳だ。至るところで牛が草を食むこの湖水地方で、アイスクリームが美味しくないはずはない。牧場直送の絞りたての新鮮な牛乳をたっぷり使った極上のアイスクリームを頬張れば、口の中いっぱいに湖水地方の自然の偉大さを感じられるはず。
地元食材なら何でもござれ
Low Sizergh Barn

夏場の晴れた日には外でもアイスクリームを販売する

一見、ベリー系に見えるが、
食べると濃厚な味が口に広がる
ダムソンのフレーバー
緑の蔦に覆われた小屋に一歩入ると、チーズや肉製品、色とりどりの野菜など、見るからに新鮮な、生き生きとした食材の数々に目を奪われる。1980年、ナショナル・トラストから農場を借り受けたパーク一家が、80年代半ばの牛乳生産制限による経済的打撃を緩和するため、91年にショップをオープンさせたのが始まり。今ではショップだけでなく、トレイルやクラフト・ギャラリーも併設している。ここで販売しているアイスクリームはもちろん、自分たちで飼育している牛の乳を使用。
お勧めは、湖水地方で多く生産される西洋スモモの一種、ダムソンのフレーバーだ。濃厚だが後味はさっぱりとしているその甘味は、新鮮な牛乳に負けない存在感を放っている。この湖水地方ならではの組み合わせに舌鼓を打った後は、ミート・パイやチーズなど、地元産の食品を買い込んで、湖水地方の味覚を丸ごと味わいたい。

左)とにかく豊富な品揃えのチーズ。「私たちの牛の牛乳からつくられました」というポップがかわいらしい
右)小屋の右隣には牛舎が
Low Sizergh Barn
Low Sizergh Farm, Sizergh, Kendal, Cumbria LA8 8AE
TEL: 015395 60426
www.lowsizerghbarn.co.uk
営業時間: 9:00-17:30(ショップ)9:30-17:00(ティー・ルーム)
(12月25日、26日、1月1日休)
濃厚ながらくどくない、日本人好みの味をどうぞ
Natland Mill Beck Ice Cream Parlour

おじいちゃんから子供まで、誰もが美味しそうにアイスをほお張る
木と石を基調とした、広々とした店内は、避暑地の家族向けレストランのような趣。小さな子供連れの家族が、アイスクリームやパフェをほお張る姿がある。湖水地方の南の玄関口、ケンダルに位置するナットランド・ミルベックでは、オーナーが運営する裏の牧場の牛から採れる牛乳をふんだんに使った手づくりアイスクリームを提供している。様々なフレーバーの中でも「一番人気があるのはバニラやチョコレートなどの定番ですね」と語るのは、何とカオリさんという日本人女性スタッフ。英国人のご主人とともにケンダルに住み、このパーラーで働き始めて3年が経ったのだとか。新鮮な食材に恵まれた北海道で生まれ育ったカオリさんも太鼓判を押すピーチ・アンド・クリームは、採れたて牛乳の芳醇な味と爽やかなピーチの香りのバランスが絶妙な一品。その他のフレーバーも、濃厚ながらくどさがなく、日本人好みの味揃いだ。

左)ピーチ・アンド・クリーム(右)はたっぷり入ったピーチ・ソースが程よいアクセントになっている
右)「日本人と全く会わないので、日本語を忘れてしまいました」とはにかむカオリさん
Natland Mill Beck Ice Cream Parlour
Natland Mill Beck Lane, Kendal, Cumbria LA9 7LH
TEL: 01539 731141
営業時間: 9:30-17:00(12月25日、26日、1月1日休)
人気の観光スポットにある本格派
Windermere Ice Cream

常に多くの観光客が往来を行き来している絶好の立地
湖水地方随一の観光地、ボウネス。同地方の観光の拠点となるフェリー発着所の斜め向かいにあるウィンダミア・アイスクリーム・ショップは、敷地面積は小さいながらも、32種類という圧倒的なフレーバーの多さが魅力。立地の良さも手伝って、いつでも観光客で賑わっている。店内では、ハニー・アンド・ラベンダーやシナモン・プラム、フルーツ・オブ・ザ・フォレスト・ヨーグルトなど、普段はあまり見慣れぬフレーバーを前に、どれにしようか、あれこれ悩むお客さんの姿が。しかし、観光地の中心にあるからと言って侮ってはならない。この店のアイスクリームは、ソルベなど一部の例外を除いては、すべてオーガニックの牛乳を使った本格派。中でも地元の食材を取り入れたレモン・カードやリュバーブ・アンド・カスタードなどのフレーバーは、せっかく湖水地方を訪れたのならば、是非試してみたい個性的な味だ。

左)たくさんのフレーバーを前に、誰もが思わず悩んでしまう
右)大勢のお客さんをてきぱきとさばいていく
Windermere Ice Cream
Lake Road, Promenade LA23 3DE
TEL: 015394 43047
www.scoopchocice.co.uk
営業時間: 9:00-20:30(12月25日、26日、1月1日休)



在留届は提出しましたか?




















グースベリーとエルダー・フラワーの
バルコニー席からは、中世の栄華を彷彿させる
アーティチョーク(£6.50)など、
アーティスティックな
デザートも見逃せない。
スタッフはとてもフレンドリー。
カクテル・メニューも充実している。
隣接するショップの棚には
黒板には毎日手書きで













6人の妻を取っ替え引っ替え、そのためにローマ・カトリックから英国国教会へと一大宗教改革を行ったヘンリー8世ゆかりの地、スードリー城のお膝元の村。歴史に翻弄された女性たちの、悲しくも美しい人生を表したような可憐な花々が咲き乱れる、スードリー城のガーデンには感動すること間違いなし。
「ブロード(広い)ウェイ(道)」の名の通り、広い目抜き通りには、観光地らしい可愛らしいショップが並んでいる。この北まわりのコースでティー・タイムをとるなら、ここの「ティサーンズ」がお勧め。モチモチとした美味しいスコーンと、数十種はある紅茶の中から好きなものをチョイスできる、本格的なティー・ルームだ。
映画「ブリジット・ジョーンズの日記」のロケ地としても有名なスノーズヒル村。村の手前にはナショナル・トラストが管理する「スノーズヒル・マナー」が、村を過ぎるとこの季節に満開を迎える「スノーズヒル・ラベンダー」の丘が広がっている。この畑で採れたラベンダーを抽出して作ったオイルやクリームは、コッツウォルズならでは。
コッツウォルズ地方最北端の町。12世紀から毛織物工業の繁栄とともに成長した町で、中心には1627年に建造された市場があり、現在はナショナル・トラストによって歴史的建造物として保護されている。また、ここはコッツウォルズ地方をおよそ7日間かけて歩くことができる「コッツウォルズ・ウェイ」の北の起点でもある。
丘陵地にふさわしい坂の村。その地形を生かしてか、かつては村内に12もの水車小屋があったと言われている。現在では、その水車小屋を利用した「ミル・ディーン・ガーデン」や、少し離れるが「ヒドコート・マナー・ガーデン」「キフツゲート・ガーデンズ」など、英国有数の素晴らしいイングリッシュ・ガーデンを楽しむことができる。
Stow-on-the-Wold ストウ・オン・ザ・ウォルド
「コッツウォルズのベニス」と呼ばれ、大型観光バスが押し寄せるボートン・オン・ザ・ウォーターは、国道を挟んで目と鼻の先。ただしこちらは大型バス乗り入れ禁止区域なので、コッツウォルズの村の良さがそのまま残っている、静かで美しい場所だ。
コッツウォルズのほぼ中央に位置するノースリーチは、15世紀に建てられた教会を中心に広がる美しい村。この村外れにある18世紀の教護院が、現在の環境保護局のオフィスとなっている。すぐ近くにあるナショナル・トラストの「チャドワース・ローマン・ビラ(古代ローマの荘園)」は、歴史好きな方には必見の場所。
バイブリーはコルン川に沿った小さな村。由緒あるスワン・ホテルと鱒(ます)の養殖場のほかには、小さな店とパブがあるのみ。それでもこの地を訪れる人が後を断たない訳は、この地を称賛したウィリアム・モリスの影響だ。小さな石造りの家が並ぶ有名なアーリントン・ローの景観は、ナショナル・トラストによって保護されており、後世に残っていくことになる。
観光ガイド本などで紹介されることの少ない「シャアボーン」は、村ごとナショナル・トラストによって保護管理されている。石造りの家々、村で唯一の郵便局や小学校、そして広大なパークとエステイト。既に観光地として有名になっている町や村と違い、本物のコッツウォルズの暮らしぶりを垣間見ることができる。
ローマ時代の英国の地方首都の一つであったサイレンセスター。今では「コッツウォルズの首都」と呼ばれ、ローマ時代に負けないほど活気のある町となっている。850年の歴史をもつセント・ジョンズ・バプティスト教会は「コッツウォルズの大聖堂」と称されるゴシック建築の美しい建物。教会前の広場では、曜日ごとに様々なマーケットが開かれる。
14世紀の頃より「ウール・タウン」と呼ばれ、宿場町として繁栄を続けたバーフォードは、今でも当時の面影を保つ、賑やかで華やいだ町。良質のアンティーク・ショップも豊富だ。また、ハイ・ストリートにある人気のベーカリー「ハフキンズ」では、美味しいアフタヌーン・ティーと出会うことができる。このコースお勧めのお茶どころ。
コッツウォルズの西の端にある小さな町。別名「コッツウォルズの女王」とも呼ばれている、美しい場所だ。ここは大型バスが入って来られないので、静かで趣のあるひとときを過ごすことができる。なぜか最後の1本がどうしても育たないという、99本のイチイの木がある セント・メアリー教会。ロマンティックな石造りの家々が連なる通りの奥からは、素晴らしい景観が望める。


















ジョージ・オズボーン
テリーザ・メイ
ウィリアム・ヘイグ
イアン・ダンカン・スミス
ケネス・クラーク
マイケル・ゴーブ
ビンス・ケーブル
ダニー・アレキサンダー
サイーダ・ワルシ
クリス・ヒューン 
木漏れ日が差し込む広場に面した、チョコレート色のひさしが目印。イタリアの最高級チョコレート「アメディ」を使った、細工の美しいケーキが並ぶ。こちらのスイーツは、パティシエであり、ショコラティエでもあるウィリアムさんと寿々江さんご夫婦の出身地、スコットランドと日本の伝統が生み出すハーモニーでもある。他所では見ない、黒酢やウィスキー「山崎」のトリュフなどもいただける。


世界遺産を包み込むスペクタクル


14世紀、7代にわたる教皇が居を構えていた教皇庁宮殿や、「橋の上で踊ろうよ踊ろうよ〜」の歌詞で知られる童謡の舞台となった「サン・ベネゼ橋」など、ここアヴィニョンには世界的に有名な建造物が存在する。しかし、世界遺産に登録されているのは「アヴィニョン歴史地区」、つまり、街全体が世界遺産なのだ。世界最大規模のゴシック宮殿である教皇庁宮殿など、いくつかの見逃せない観光スポットもあるが、それと同時に、のんびり散歩して城壁に囲まれた直径約4.3キロの街並みを丸ごと味わってみたい。
6月から10月にかけ て、フランスでは600以上のフェスティバルが催される。そのなかでも60年以上もの歴史を持ち、先駆者的な役割を果たしているのが、「アヴィニョン演劇祭」だ。毎年7月から8月の約1カ月間、連日、街の様々な場所で芝居やパントマイムなどのパフォーマンスが開催される。イベントは、アヴィニョンの街が招聘する「On」と自由参加の「Off」の2種類に大別される。日本からもこれまで、東京乾電池や自由劇場などの人気劇団が参加しているとか。今年のスケジュールは7月7日(水)から27日(日)まで。
世界に名だたるワインの名産地、ここプロヴァンス地方で、教皇のお膝元であったアヴィニョンと深い関わりを持つワインがある。「シャトーヌフ=デュ=パプ(教皇の新しい城)」という名を持つこのワイン、14世紀にアヴィニョンに居住していた時の教皇が、同地に夏の離宮を建造、その際に製造が始まった。コシの強さと味わい深さが魅力のワインだ。また、アヴィニョンから車で数十分の場所にあるタベル村では、ロゼのみが製造されている。バーベキューのような味のはっきりとした料理にピッタリのこのタベルは、夏にもってこいだ。
多くの謎を秘めたリゾート地


「ネコの楽園」として知られるマルタには、何と人口の倍の数ほどのネコがいるという。そしてこの国には、もう一つ、注目すべき「ネコ」がいる。電車がなく、タクシー料金も高いこの国の主要交通手段はバス。このバス、実は宮崎駿の人気映画「となりのトトロ」のネコバスのモデルになったと言われている。黄色と白を基調に、オレンジのラインが鮮やかなバスの車体は、ころんと丸みを帯びたフォルムが愛らしく、確かにニヤリと笑って走り出しそうな風情だ。
「青の洞窟」と言えば、誰もがイタリア・カプリ島を思い浮かべるはず。しかしここマルタにも、海が青碧色に輝く青の洞窟がある。マルタ島の南、ズリーにあるこのマルタ版青の洞窟は、カプリ島とは異なり、洞窟というより、アーチ状になった岩礁がいくつか点在しているため、「青の洞門」と呼ばれることもある。小船に乗ってこの洞門を巡れば、透きとおった海水と海底の白砂が織り成す自然の神秘を目の当たりにすることができる。観光するならば、日光が青色を鮮やかに浮かび上がらせる午前中がお勧め。
突き刺さるような強い日差しを浴びて長時間歩き回っていれば、当然、喉が渇く。そんなときにぐびりといきたいのが、マルタ特産のソフト・ドリンク「キニー(Kinnie)」だ。コカコーラを薄めたような色合いで、味もコーラを少々、ほろ苦くさせた炭酸水といったところ。クセがあるので好みは分かれそうだが、このマルタの太陽の下では不思議と美味しく感じられる。国外では販売していないそうなので、滞在中、一度はトライしてみよう。飲むならばソフト・ドリンクよりビール、という人は、さっぱりとした後味の地ビール「チスク(CISK)」をどうぞ。
アフリカに漂う欧州の風


ケープ・タウンの街中の至るところで、気付くと目の端に、不自然なまでにまっ平らな山が見える。それが「テーブル・マウンテン」だ。標高は1086メートル。頂上へはケーブル・カーを利用するか、徒歩で登ることになる。富士山と比べればかなり低いが、だからといって油断は禁物。刀ですっぱり垂直に切ったかのような岸壁に沿った、かなり険しいゴツゴツとした岩場の道は、思ったよりも難物だ。しかし、頂上から見下ろす、弓なりに伸びる海岸線とケープ・タウン市街のコントラストの鮮やかさは、その苦労を補って余りある美しさ。体力に自信がある方は、徒歩でこの山の魅力を体全体で感じてみよう。
岩場にもペンギン、海岸にもペンギン、海にもペンギン……。そんなペンギンだらけの癒しエリアが、喜望峰から程近い海岸沿いにある。野生ペンギンの保護区、ボールダーズ・ビーチには、小柄でキュートなケープ・ペンギンが生息している。観光客は遊歩道からペンギンを見ることになるわけだが、それだけでは終わらないのがこのビーチのすごいところ。野生の彼らは、このエリア近隣を自由気ままに闊歩している。道を歩けば、卵を温めているペンギンに遭遇したり、近くの岩場で海水浴を楽しめば、一緒にペンギンも泳いでいたりと、とにかくペンギンの国に人間がお邪魔しているような気分に陥るビーチなのだ。
エディンバラで
ケントで世界最小の
キュー王立植物園で






