第192回
継続企業の前提
継続企業の前提(Going Concern)の概念は財務報告の中核をなすものであり、財務諸表の作成の基本原則となります。英国で適用される財務報告基準のFRS102では、継続企業の前提とは、企業が予見可能な将来にわたり事業を継続することを想定したものです。
継続企業の前提はどう定義されていますか。
FRS102では継続企業の前提を、経営者が清算または営業停止を考えている場合、あるいは現実的にそれ以外の選択肢がない場合を除き、企業が事業を継続すると想定されることと定義しています。
継続企業の前提の評価で責任を負うのは誰ですか。
継続企業の前提の妥当性を評価する主たる責任は、経営者にあります。経営者は、企業が債務の期日に支払義務を履行できるか、業績を維持できるか、必要な資金調達手段を確保できるかなどを評価する必要があります。
経営者は評価する際にどのような情報を確認すべきですか。
評価には通常、次の事項が含まれます。
- キャッシュフロー予想と予算の作成: 将来の売上高、費用、流動性ポジションの正確な見積りは、企業が債務の期日に支払義務を履行できるかを判断する上で重要
- 借入枠の見直し:契約違反の可能性や借り換えの潜在的な可能性を検討
- 事業の業績動向の評価: 景気後退や関税の導入など、業界やマクロ経済のリスクが企業に与える影響を確認
評価の際にはどの程度の期間について検討すべきですか。
評価は、財務諸表の発行が承認された日から少なくとも12カ月間を対象とすべきです。ただし、12カ月を超える期間における状況や事象が、企業の事業継続能力に重大な影響を及ぼす可能性がある場合は、より長い期間について検討することが求められます。
経営者が重大な不確実性が存在すると結論を下した場合はどうなりますか。
重大な不確実性が存在するものの、経営者が事業継続は妥当と判断する場合、FRS102では継続企業の前提に基づく財務諸表の作成を認めています。その際には、不確実性の性質、前提とした仮定、潜在的な財務への影響を詳細に記し、財務諸表で不確実性を十分に開示する必要があります。重大な不確実性には、収入源の喪失の可能性、市場競争、サプライチェーンの混乱、手元資金の不足、追加資金の確保能力、融資枠の更新など、幅広い要因が含まれる場合があります。
経営者が継続企業の前提は妥当ではないと結論付けた場合は、どのような影響がありますか。
経営者が企業を継続企業の前提を満たせないと判断した場合、財務諸表はいわゆる「清算(break-up)基準」と呼ばれる代替基準に基づいて作成しなければなりません。この基準では次のような処理が行われます。
- 資産は回収可能価額に修正される
- 長期債務は、決済が差し迫っている場合には流動負債に再分類される
- 不利な契約や避けられない解約費用については、引当金を計上する
また、開示においては、その企業を継続企業とはみなせない理由を示す必要があります。
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
イアン・ロウ 監査・会計 パートナー 長年にわたり、さまざまな業種・規模のビジネスで、豊富な経験を積む。意思決定プロセスにおいて必要不可欠な存在として多くのクライアントから絶大な信頼を得ている。



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