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Mon, 17 December 2018

第135回 チェスの駒とバイキング

シティから少し東の外れにあるブリック・レーン。週末になるとたくさんの観光客と露天商でにぎわいます。ふと気が付けば道端で中近東出身らしき人が観光客とチェスを楽しんでいます。聞いてみますとイランではペルシャ将棋(シャトランジ)がとても盛んで、ルールがチェスそっくりなのだそうです。早速、自宅に戻って調べてみると面白いことが分かりました。

街頭で楽しむチェス
街頭で楽しむチェス

今から1500年ほど前の古代インドはグプタ王朝。そこで流行したのがチャトランガと呼ばれる卓上の双六ゲームでした。これが西隣りのペルシャに伝わるとシャトランジという盤上ゲームに変わります。更にそれがペルシャから陸のシルク・ロード経由で東方の中国に伝わると、象棋(シャンチー)や日本の将棋に変わります。一方、ペルシャから西方に欧州へ伝わったものはチェスに変身。実は各国の将棋もチェスも、元をたどれば同じゲームだったのです。

古代ペルシャのシャトランジ
古代ペルシャのシャトランジ

更に、欧州の伝播ルートには南北があり、南ルートはペルシャからイスラム圏を経て地中海沿岸から伝わったもので、駒の材質は象牙が一般的。一方、北ルートはペルシャからロシアや北海のバイキング(ノルマン人)が伝えたもので材質は鯨の歯やセイウチの牙。駒の形は、偶像崇拝を禁じたイスラム教の下では抽象的でしたが、西欧に伝わるとキリスト教の下で具象化され、一部がビショップ(僧)やクイーン(マリア様)に変わりました。

セイウチの牙は貴重な交易品だった
セイウチの牙は貴重な交易品だった

ここで思い出されるのがハリー・ポッターの映画にも登場する、大英博物館所蔵のルイス島のチェス駒。これは12世紀後半、セイウチの牙を使ってノルウェーで作られたと推定されています。最近の調査によれば、12世紀後半以降の欧州に出回ったセイウチの牙の8割がグリーンランドに生息するセイウチのものだそう。当時のノルマン人の交易圏がグリーンランドや北米にも広がっていたとは驚きですが、そもそもスコットランド北西部のルイス島周辺は1266年までノルウェー領でした。

ルイス島のチェス駒(大英博物館)
ルイス島のチェス駒(大英博物館)

英国は9世紀ごろにアングロ・サクソン七王国に統一されたものの、その後、10世紀から11世紀にかけて北海からノルマン人(デーン人やノース人)の侵略を受けました。1016年にはカヌート王の傘下に入り北海帝国の一部になり、その50年後の1066年、ドーバー海峡の向こうのノルマン・フレンチ(ノルマン人が西フランスに作った植民地)に英国は征服されます。あら、これノルマン人の挟み撃ちによる「チェックメイト」ですね。

チェックメイト?
チェックメイト?

 
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シティ公認ガイド 寅七

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『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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