ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 08 May 2026

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして22年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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緑のパッチワークの正体

緑のパッチワークの正体

イースター・ホリデーに義父母の住むデヴォンを訪ねました。道中、両脇に見える木々の新緑のグラデーションがうっとりするほど美しい景色に、車の中から何度も「美しい」を連発してしまったのは例年のことです。

デヴォン滞在中には、エクスムーアというデヴォン州とサマセット州にまたがる国立公園でウォーキングをすることにしました。車では何度も通っているエクスムーアですが、ウォーキングするのは10年以上ぶりです。

英国にいくつかある「ムーア」というのは開けた丘で、限られた植物しか育たない荒野といえるような場所を指します。さえぎるものがないので、風が吹き付けるのはお約束。私たちは強風に吹き飛ばされそうになりながら、ところどころに咲くゴース(和名ハリエニシダ)の花の鮮やかな黄色に励まされて、およそ1時間の散歩を楽しみました。

頂上について遠くを見下ろすと新緑で覆われた景色が見渡す限り広がっていました。それはガイドブックなどでよく「緑のパッチワーク」として紹介される、典型的なイングランドの田園風景です。そして、この景観を作り出すのに重要な役目を果たしているのがヘッジ。日本でいう生垣です。

英国はアイルランドに次いで世界で最も生垣の密度が高い国と考えられており、その大部分は280年以上前からあるともいわれるそうですが、特にイングランド全土に広まったのは18〜19世紀に最盛期を迎えたエンクロージャー(囲い込み運動)の影響といわれます。ヘッジは所有地の境界線としてはもちろん、家畜を囲ったり、風から作物を守ったりという役割を果たしてきました。


車2台は行き交えないほど道幅が狭いカントリー・ロードはヘッジで囲まれているところが多く、車体の左側をヘッジの枝先で擦ってしまわないかと心配してしまうのと、視界を遮ることがあるので、運転中の私はつい「ヘッジがなければなぁ」などと思ってしまうことがあります。

でも、ヘッジはハリネズミをはじめ野生生物の生態系のありかとして大変重要かつ英国らしい景観を作り出す最大要因の一つ。とはいうものの、1950年には約100万キロだったものが現在では約40万キロと英国のヘッジの50パーセント以上が失われてしまいました。気候変動に対する対策もあり、英国政府は2050年までに約7万2000キロのヘッジを新設・修復する目標を掲げています。

一見すると私たちには懐かしい日本の田園風景にも似た英国の緑のパッチワーク。人工でありながら幾何学模様のような規則性がないのが、見る人をゆったりした気持ちにさせるこの風景を守るために、これからもヘッジが存在し続けてほしいです。

 
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マクギネス真美マクギネス真美
在英ライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。ポッドキャスト「The Real You with Mamita」とVoicy「英国からの手紙」のパーソナリティー。英国人義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
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