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卒業式のない卒業
今回は117回目のテーマだった全国統一試験GCSE(General Certificate of Secondary Education)に続いて、わが家の双子が通った英国のセカンダリー・スクール(中等教育)の卒業についてご紹介したいと思います。
今週、子どもたちが2年間にわたって準備してきたGCSEが終わりました。10代半ばの子どもたちにとって、進学や将来を左右する大きな節目となるテスト。4月下旬から約1カ月半、頑張った英国中の子どもたちに「お疲れさま!」と言ってあげたい気持ちです。ところで、この試験最終日、また英国と日本のギャップを発見しました。それは、試験の最終日がセカンダリー・スクール登校の最終日ということ。でも、試験は個人個人で科目ごとに試験日が違うため、皆が一斉に最終日を迎えるわけではありません。最後の試験科目が終わったら、それが中学生活の最後。なので、それぞればらばらに最終日を迎えるのです。
私が通った日本の中学や高校には卒業式があり、数週間前から体育館で卒業の歌に加え、歩き方、お辞儀の仕方、手の伸ばし具合など卒業証書の受け取り方を練習した記憶があります。ところが、子どもたちが通った英国の公立中学ではそうした式典はなく、最終試験の日がそのまま卒業の日。子どもたち自身も言っていましたが、なんというか、「あっけない」終わり方です。
とはいえ、試験最終週のある1日に、卒業記念になるイベントがありました。その日は、最終学年の一斉集会が行われ、校長先生が短くあいさつした後、生徒たちは屋外の広場に移動。そして、ユニフォームへの寄せ書き大会が行われたのです。そこではそれぞれが着ていた白いシャツに、友達同士で、あるいは先生にもお願いして、マジックペンでサインやメッセージを書き合うのです。家に帰ってきて見せてくれた子どもたちのシャツには「ずっと友達だよ!」「Good luck!」といった、見ているこちらが「じーん」とするような言葉が刻まれていました。
これは英国人夫の学生時代にはなかった風習とのことなので、比較的新しいトレンドなのかもしれません。でも、とてもすてきなアイデアだと思いました。フォーマルな証書はなくとも、子どもたちの記憶に残る「卒業記念」が、このサイン・シャツだという気がします。また、卒業式がないので、当然、親が子どもの最終登校日に学校に出向くということもありません。卒業式に着物にするか、スーツを着るか、親としてどんな装いをすべきかといったことに頭を悩ませる必要がないのも日本との違いです。もちろん、英国には多くの学校があり、それぞれの学校によって伝統や習慣、儀式のあるなしも違うと思いますので、皆さんのご経験もぜひお聞かせください。