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日経電子版Pro
Wed, 25 November 2020

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして17年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。日本での雑誌編集を経て2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して

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使ったティッシュはゴミ箱へ!

使ったティッシュはゴミ箱へ!

英国に暮らすようになって最初の冬だったと思います。下宿先のランドレディーのお母さんが訪ねてきたので、一緒にランドレディーの作ってくれたフェアリー・ケーキと紅茶をリビングでいただいていました。とても上品な女性で、英語が流暢でない私に気を遣って、ゆっくりと話してくれているのが分かりました。

しばらく話していると、突然、ランドレディーのお母さんがティッシュで鼻をかみました。びっくりしたのは、着ていたセーターの袖口からティッシュを出して鼻をかみ、その後、使ったティッシュを、また袖口の中にしまったことです。一瞬、何が起こったのか分からず、思わず凝視してしまいました。というのも、服装も話し方もとてもエレガントな女性が、目の前で鼻をかんだ上に、かみ終わったティッシュをたたんで再び袖口にしまったという、そのギャップに驚いたからです。

その後、夫と結婚して、義母と仲良くなってからのことです。あるとき、義母が袖口からティッシュを出して鼻をかんだのを見ました。失礼かもと思いつつも、こらえきれずに「どうして袖口にティッシュをしまうの?」と質問してみました。すると、義母は「日本人はやらないの?」と笑いながら、ポケットがないから袖口にしまっているのだと答えてくれました。義母からしたら、そんな質問をされることのほうに驚いたようでした。

ティッシュを袖口にしまうことはもちろんのこと、人前で堂々と鼻をかむこと自体も、日本人にとっては違和感がありますよね。でも、英国人からすると、日本人が鼻をきちんとかまずに、それをすすっているのを見る(聞く)方が気持ちが悪いのだそうです。

さて、ご存知のようにイングランドは11月5日から、再びロックダウンとなりました。新型コロナウイルスの感染対策として、政府やNHS(国民医療制度)がポスターやインターネットで呼び掛けているスローガンは「Catch it, Bin it, Clean it」。「咳やくしゃみをティッシュで抑え、菌の付いたティッシュはすぐにゴミ箱に捨てて、すぐさま石鹸で手を洗いましょう」という意味です。これを見たとき、ちょっと心配になりました。だって、これまで英国の人々(特に女性たち)は、鼻をかんだ後のティッシュを、大事に袖口にしまってきたのです。無意識に長く続けてきた習慣を変えるのは簡単ではないこともあります。でも、新型コロナウイルス感染を避けるためには、使ったティッシュはすぐに捨てなければなりません。

もしかしたら、政府がこの注意をしつこく促しているのは、使ったティッシュを大事に袖口に入れておく英国人の癖をよく分かっているからではないかと思います。

 
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