英作家ラシュディ氏襲撃の男を追訴
「イスラム過激主義に共感」の報道も
英作家サルマン・ラシュディ氏
(ニューヨーク 8月14日 時事)イスラム教を風刺した小説「悪魔の詩」で知られる英作家サルマン・ラシュディ氏が米ニューヨーク州西部で男に襲撃された事件で、地元検察は13日、ヘイディ・マタール容疑者(24)を殺人未遂などの容疑で訴追したと明らかにした。米メディアによると、同容疑者はイスラム過激主義に共感していたとの情報もあるが、過激派などとの明確なつながりは確認されていない。
ラシュディ氏は12日、イベントに登壇したところをマタール容疑者に襲われ、首など複数箇所を刺された。現在も入院中だが、13日には人工呼吸器が外れ、会話や冗談を言えるようになったという。ただ代理人は、片目を失明する恐れがあると指摘している。
マタール容疑者は13日、裁判所に出廷し、弁護士を通じて無罪を主張した。連邦捜査局(FBI)などが動機の解明を急いでいる。地元テレビ局WNBCは、容疑者のソーシャル・メディアから、イスラム教シーア派の過激主義やイラン革命防衛隊に共感を抱いていた様子がうかがえるとの捜査関係者の話を伝えた。
マタール容疑者はレバノン出身の両親の下、カリフォルニア州で生まれ、最近になってニュージャージー州に転居した。ロイター通信によれば、イランが支援す英作家サルマン・ラシュディ氏政治るレバノンのシーア派組織ヒズボラ関係者は13日、事件について「何も知らず、コメントしない」と述べた。
ラシュディ氏は1988年に「悪魔の詩」を発表し、イスラム世界から激しい反発を受けた。イランでは89年にファトワ(宗教令)で「死刑宣告」が出されたが、ラシュディ氏は近年、警備をつけずに公の場に姿を現すことが増えていたという。今回の会場では手荷物検査などが行われておらず、警備態勢の不備を指摘する声が上がっている。