思いのほか広いコッツウォルズ地方を、まんべんなく見て回りたいと思ったら、ロマンティック街道のドライブがお勧め。コッツウォルズの深い歴史と自然を、十分に満喫できる南北2つのコースで構成されている。各コースの所要時間は、要所となる町や村を観光する時間にもよるが、基本的には1日ほど。ロンドンからであれば、2泊3日でコッツウォルズの魅力の真髄を体験できる。
(小野 まり)
協力・写真提供
グロスター観光局 www.the-cotswolds.org
コッツウォルズ環境保護局 www.cotswoldsAONB.org.uk
著者プロフィール
1999年にナショナル・トラスト取材のために来英。2002年、夫で日本ナショナ ル・トラスト協会のオフィシャル・アーティストでもある琢正氏ら家族とともに英国に移住し、以降、英国の環境保護活動に関する研究・執筆活動に携わる。
イラスト: 小野琢正
画家。2001年より英国ナショナル・トラストで巡回個展HENRO(遍路)展を開催、今年で10年目を迎えた。また09年より地元コッツウォルズの景観保護のためにコッツウォルズでのチャリティー展覧会なども開催している。 www.takumasa-ono.com
「コッツウォルズの ロマンティック街道」
ドイツのそれが古城や中世都市で有名なのに対して、コッツウォルズでは童話の世界に出てくるような愛らしい村々や美しい丘陵地帯という景色を楽しめるのが特徴。魅力的な村々を始め、その風景、地元の史跡や文化遺産のロマンスまでを十分満喫できるコースとなっている。
旅の起点はここ
Cheltenham チェルトナム
ロマンティック街道の起点となる町、チェルトナム。ビクトリア時代に保養地として栄えた英国屈指のスパ(鉱泉)タウンの一つだ。今でも鉱泉を試飲できるピットビル・ポンプ・ルームを始め、リージェント様式の華麗な建造物や、ローマ帝国を思わせるような気品溢れるプロムナードなどを内包する、英国屈指の美しい町として人気が高い。
Winchcombe ウィンチクーム
6人の妻を取っ替え引っ替え、そのためにローマ・カトリックから英国国教会へと一大宗教改革を行ったヘンリー8世ゆかりの地、スードリー城のお膝元の村。歴史に翻弄された女性たちの、悲しくも美しい人生を表したような可憐な花々が咲き乱れる、スードリー城のガーデンには感動すること間違いなし。
Sudeley Castle
www.sudeleycastle.co.uk
Broadway ブロードウェイ
「ブロード(広い)ウェイ(道)」の名の通り、広い目抜き通りには、観光地らしい可愛らしいショップが並んでいる。この北まわりのコースでティー・タイムをとるなら、ここの「ティサーンズ」がお勧め。モチモチとした美味しいスコーンと、数十種はある紅茶の中から好きなものをチョイスできる、本格的なティー・ルームだ。
Tisanes Tea Rooms
Cotswold House, 21 The Green, Broadway,
Worcestershire WR12 7AA
Tel: 01386 853296
www.tisanes-tearooms.co.ukMoreton
かつてはウィリアム・モリスも度々訪れたことのある「ブロードウェイ・タワー」。天気の良い日はコッツウォルズを囲む12州を見渡すことができる
Broadway Tower www.broadwaytower.co.uk |
Snowshill スノーズヒル
映画「ブリジット・ジョーンズの日記」のロケ地としても有名なスノーズヒル村。村の手前にはナショナル・トラストが管理する「スノーズヒル・マナー」が、村を過ぎるとこの季節に満開を迎える「スノーズヒル・ラベンダー」の丘が広がっている。この畑で採れたラベンダーを抽出して作ったオイルやクリームは、コッツウォルズならでは。
Snowshill Lavender
www.snowshill-lavender.co.uk
「アーツ&クラフツ運動」の影響を受けた「スノーズヒル・マナー」のガーデン。美しい丘陵地を背景に、絵のように美しい可憐なガーデンが広がる
Snowshill Manor and Garden |
Chipping Campden チッピング・カムデン
コッツウォルズ地方最北端の町。12世紀から毛織物工業の繁栄とともに成長した町で、中心には1627年に建造された市場があり、現在はナショナル・トラストによって歴史的建造物として保護されている。また、ここはコッツウォルズ地方をおよそ7日間かけて歩くことができる「コッツウォルズ・ウェイ」の北の起点でもある。
写真)町の中心にある「マーケット・ホール」
町外れにある藁葺き屋根のコテージ。藁葺き屋根の家はこの地方でも貴重で、小さいコテージでも、その歴史的価値から数億円もする場合がある |
Blockley ブロックリー
丘陵地にふさわしい坂の村。その地形を生かしてか、かつては村内に12もの水車小屋があったと言われている。現在では、その水車小屋を利用した「ミル・ディーン・ガーデン」や、少し離れるが「ヒドコート・マナー・ガーデン」「キフツゲート・ガーデンズ」など、英国有数の素晴らしいイングリッシュ・ガーデンを楽しむことができる。
Kiftsgate Gardens www.kiftsgate.co.uk
Mill Dean Garden www.milldenegarden.co.uk
「コッツウォルズの宝石」と称賛されているヒドコート・マナーは、ナショナル・トラストによって保護された初めての本格的なガーデン
Hidcote Manor Garden |
Stow-on-the-Wold ストウ・オン・ザ・ウォルド
コッツウォルズ観光の魅力の一つに挙げられるのが、アンティーク・ショッピング。昔も今も富裕層が集まるこの地方は、最上級のアンティークの宝庫。ヨーロッパのみならず、世界中のアンティーク・ファンがこの町に「本物」を求め、集まる。
Lower Slaughter ローワー・スローター
「コッツウォルズのベニス」と呼ばれ、大型観光バスが押し寄せるボートン・オン・ザ・ウォーターは、国道を挟んで目と鼻の先。ただしこちらは大型バス乗り入れ禁止区域なので、コッツウォルズの村の良さがそのまま残っている、静かで美しい場所だ。
Northleach ノースリーチ
コッツウォルズのほぼ中央に位置するノースリーチは、15世紀に建てられた教会を中心に広がる美しい村。この村外れにある18世紀の教護院が、現在の環境保護局のオフィスとなっている。すぐ近くにあるナショナル・トラストの「チャドワース・ローマン・ビラ(古代ローマの荘園)」は、歴史好きな方には必見の場所。
Chedworth Roman Villa
www.nationaltrust.org.uk/main/w-chedworthromanvilla
Bibury バイブリー
バイブリーはコルン川に沿った小さな村。由緒あるスワン・ホテルと鱒(ます)の養殖場のほかには、小さな店とパブがあるのみ。それでもこの地を訪れる人が後を断たない訳は、この地を称賛したウィリアム・モリスの影響だ。小さな石造りの家が並ぶ有名なアーリントン・ローの景観は、ナショナル・トラストによって保護されており、後世に残っていくことになる。
The Swan Hotel
www.cotswold-inns-hotels.co.uk/property/the_swan_hotel
Sherborne シャアボーン
観光ガイド本などで紹介されることの少ない「シャアボーン」は、村ごとナショナル・トラストによって保護管理されている。石造りの家々、村で唯一の郵便局や小学校、そして広大なパークとエステイト。既に観光地として有名になっている町や村と違い、本物のコッツウォルズの暮らしぶりを垣間見ることができる。
シャアボーン村とは国道を挟んだ向かいにあるロッジ・パークは、村の大地主であったジョン・ダトンの建てた社交専用の邸宅。17~18世紀の貴族の暮らしぶりを再現し、人気を集めている。
Lodge Park & Sherborne Estate www.nationaltrust.org.uk/main/w-lodgeparksherborneestate |
Cirencester サイレンセスター
ローマ時代の英国の地方首都の一つであったサイレンセスター。今では「コッツウォルズの首都」と呼ばれ、ローマ時代に負けないほど活気のある町となっている。850年の歴史をもつセント・ジョンズ・バプティスト教会は「コッツウォルズの大聖堂」と称されるゴシック建築の美しい建物。教会前の広場では、曜日ごとに様々なマーケットが開かれる。
サイレンセスターまで来たら、ちょっと南に足を延ばしてテットベリーの町散策もお勧め。チャールズ皇太子自ら手掛けているガーデンのある別荘、ハイ・グローブ邸のお膝元である。町には皇太子直営店「ハイグローブ」もある。
Highgrove Shop |
Burford バーフォード
14世紀の頃より「ウール・タウン」と呼ばれ、宿場町として繁栄を続けたバーフォードは、今でも当時の面影を保つ、賑やかで華やいだ町。良質のアンティーク・ショップも豊富だ。また、ハイ・ストリートにある人気のベーカリー「ハフキンズ」では、美味しいアフタヌーン・ティーと出会うことができる。このコースお勧めのお茶どころ。
Huffkins
98 High Street, Burford Oxfordshire OX18 4QF
Tel: 01993 822126
www.huffkins.com
Painswick ペンズウィック
コッツウォルズの西の端にある小さな町。別名「コッツウォルズの女王」とも呼ばれている、美しい場所だ。ここは大型バスが入って来られないので、静かで趣のあるひとときを過ごすことができる。なぜか最後の1本がどうしても育たないという、99本のイチイの木がある セント・メアリー教会。ロマンティックな石造りの家々が連なる通りの奥からは、素晴らしい景観が望める。
財)ロングステイ財団公認
海外サロン・コッツウォルズサロンの紹介
コッツウォルズを訪れるなら……
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財)ロングステイ財団公認海外サロン コッツウォルズ・サロン
www.longstay.or.jp/modules/ls_salon/index.php?content_id=66
※情報は記事掲載当時のものです。