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Fri, 19 December 2025

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映画監督・映像作家 関根光才さん インタビュー

映画監督・映像作家 関根光才さん

関根光才
KOSAI SEKINE 1976年東京生まれ。映画、広告映像、ミュージック・ビデオ、インスタレーション・アートなどをベースとした映像の演出を手掛ける。2005年に短編映画「RIGHT PLACE」でカンヌ国際広告祭のヤング・ディレクターズ・アワードにてグランプリを受賞。また2011年の福島原発事故を受け発足した、アートプロジェクト「NOddIN(ノディン)」に参加するほか、2018年秋には初の長編劇場映画監督作品となる「生きてるだけで、愛。」や長編ドキュメンタリー映画「太陽の塔」が公開される。

ローカルであると同時に
コスモポリタンな表現を

様々な映像作品を手掛けてこられた関根監督ですが、今回の「生きてるだけで、愛。」が初の長編劇場映画監督作品ですね。しかも、日本に先駆け、レインダンス・フェスティバルがワールド・プレミアとのこと。この作品に対する思い入れなどお聞かせいただけますか。

長編映画はずっとやりたかったことなので、ともかく映画が完成して皆さんにお披露目できることが何よりも嬉しく、また同時にやっとスタート・ラインに立ったという思いです。映画は世界の様々な環境や地域で作られていますが、それぞれの文化性や独自の価値観があってこそユニークになるもの。その意味でローカルであることは大事ですが、それだけではダメで、同時に普遍的でコスモポリタンなテーマでないといけないと思っています。このような点から、日本独自の空気の中で、もがきながら生きる若者たちの葛藤を描いた「生きてるだけで、愛。」も、主人公たちのストーリーのなかで見えてくるテーマは普遍的なもので、世界各地で形は違えど人間の心の奥底にあるものだと思います。レインダンス・フェスティバルでこの映画を見て頂く皆さんにも響くものであることを祈っています。

今回、劇作家で女優でもある本谷(もとや)有希子さんの小説「生きてるだけで、愛。」を映画化しようと思ったきっかけは何だったのでしょう。

本谷さんの書く文体は非常に独特。「人間味」を煮詰めてそのインクで文章を書いているような濃いものです。なかでも、初期の作品である本作は、若いころの彼女の疾走感に満ちていて、そのエネルギーに魅了されました。彼女の小説自体は、若いときの社会に対する恨みや罵詈雑言を書き殴っている感じで、それがある種のキュートなコメディーになっているのですが、僕はそれを、近代社会のシステムを破壊し突き抜けようとする、人間の生命力だとか狂おしい情念というものに転化させて、大人の人間劇として描きたいなと思い、そのアプローチがプロデューサーの甲斐さんの意見と一致し、映画化をオファーしたのです。

監督はCM製作を経て、アートプロジェクト「NOddIN」、ドキュメンタリー「太陽の塔」など、社会や政治にダイレクトに関わる作品を作っておられますね。今回の「生きてるだけで、愛。」は、それとはうって変わって、個人の内面へと向かった作品のように見えますが。

そうですね、例えばアート作品にまつわる長編ドキュメンタリー「太陽の塔」とは180度違う映画に感じられるかもしれません。「太陽の塔」は非常に思索的で、哲学的で、情報量も多くビジュアリゼーションに富んだ映画です。その内容は人間とアートとか、現代社会の構造への疑問、果ては宇宙観にまで発展する「マクロ」な映画です。対して「生きてるだけで、愛。」は、非常にパーソナルで、内面的で、「ミクロ」なものです。取るに足らないあるカップルのささいな出来事をテーマにしているように思えますが、実はこの2作品は共通することが無いとは言えないのです。「生きてるだけで、愛。」の主人公たちの、身につまされるような痛々しいエピソードや状況は、やはりこの現代社会からもたらされた抑圧の結果であって、双方ともに、この抑圧的な状況に抗う、あるいは抗うべき人間の姿をテーマにしていると僕は思っているのです。その中で、マクロは個人の内面を問うミクロに達し、ミクロは愛そのものを問うマクロに達します。実は遠いところで繋がっていると、言えなくもないのだと思います。

過去の各紙インタビューで、「作る前のコンセプトを明確にする」「自分の作品の作り方はアイデア・ベース」とおっしゃっていますが、次回作は決定していますか。今後どのような作品を作っていきたいですか。

次回作はまだ決まっていません!アイデアはいろいろとあるのですが、自分の性格上どうも壮大なテーマを扱う傾向にあり、つい巨大なアイデアを考えてしまうので、もう少し小さい規模のものから始めようと考えています。僕は新しい発想や切り口で、「人間とはいったい何なのか」を問いかけるような映画が好きなので、そういったアプローチの作品を作り続けたいと思っています。

好きな映画監督、映像アーティストは誰でしょうか。

たくさんいますが、ヴィム・ヴェンダース、テオ・アンゲロプロス、エミール・クストリッツァ、クシシュトフ・キェシロフスキ……なかなか現代の監督がいませんね(笑)。映像アーティストだと、アピチャッポン・ウィーラセタクン*はすごく刺激的ですよね。日本だとなかなか目にする機会がないのですが。あとは、昔グレゴリー・コルベール**が撮った「Ashes and Snow」は展示の仕方も含めてすごく圧倒されました。

*タイ出身の映画監督・映像作家。「ブンミおじさんの森」で 2010年のカンヌ映画祭パルムドールを受賞
** カナダ出身の映像アーティスト。自らの写真・映像展「Ashes and Snow」のためにノマディック(移動式)美術館も制作した

ロンドン滞在中に特に行きたいところ、やってみたいことはありますか。

旧友に会いたいなと思っています。あとは、昔ロンドンのレバノン料理屋に行ったらローカルのカラオケ大会に巻き込まれて大騒ぎになり、すごく笑える経験をしたので、チャンスがあればもう一度行ってみたいですね。

関根光才監督作品「生きてるだけで、愛。」が
レインダンス・フィルム・フェスティバルで上映

生きてるだけで、愛。監督: 関根光才
出演: 趣里、菅田将暉、仲里依紗ほか

9月26日~10月7日にロンドンで開催の、レインダンス・フィルム・フェスティバル。インディペンデント作品の発掘に力を入れる同フェスティバルで関根監督の「生きてるだけで、愛。」(英題「Love At Least」)も上映されている。

 

布袋寅泰インタビュー 待望のロンドンでのライブ、10月20日開催!

Euro Tour: London, 20 October 2018 今度のライブは僕の集大成であり、
新たなスタート
布袋寅泰

布袋寅泰

前回のロンドン単独公演から早3年。ミュージシャン、父親、そして一人の男としてロンドンに生きる布袋寅泰さんの、待望のライブがロンドンで10月に開催される。公演に先立ち、英国生活が生んだ「新しい音楽スタイル」について布袋さんに話を伺った。
(取材・文:ニュースダイジェスト編集部 / 写真:富岡秀次)

Tomoyasu Hotei 1962年2月1日生まれ。群馬県出身。81年にロック・バンド「BOØWY」のギタリストとしてデビュー。88年の同バンド解散後はソロ活動を本格化。クエンティン・タランティーノ監督の映画「キル・ビル」のメイン・テーマとなった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」は、英国のiTunes Store の音楽部門で1位を獲得した。2012年8月に家族とともにロンドンに移住。今年の10月7日より欧州ツアーを開始し、最終日の同月20日に3年ぶりのロンドン公演を行う。 http://www.hotei.com

自分自身に退屈したら
アーティストとしておしまい

ロンドンに住んで今年で6年目となりますね。

移住当時、僕が50歳で、娘は10歳。周りからは、もう成功しているのだから日本にいれば何の問題もなく過ごせるのにと言われたけど、ミュージシャンとして、世界という新たなステージに挑戦してみたかった。自分自身に退屈したらアーティストとしておしまいだなと思っていますから。

また、娘に様々な人種や異なる価値観のなかで育ってほしいという、父親としての願いもありました。今では流暢なブリティッシュ・イングリッシュを話すようになり、そんな姿を見て頼もしいと感じています。

ロンドンという街は、世界のなかでも群を抜いて多国籍社会ですよね。来たばかりのときは「自分は日本人だ」なんて特別な意識を持っていたけれど、外見も言葉も違う人がたくさんいるロンドンのバスに乗っていると、自分もそんな多国籍の要素を構成する一つのパーツなんだなって思えてくる。不思議な話ですが、赤の他人と親密な繋がりを感じることができるんです。最近はその事実にむしろ安心感さえ覚えているんですよ。

移住には不安もあったし、今でももちろん大変なことはあるけど、この5年間で家族全員がタフになったかな。あのときの選択は間違っていなかったと、6年目を迎え実感しています。英国での暮らしで日々感じる喜びや苛立ちは、きっと読者の皆さんと同じなのではないでしょうか。

音楽に対する気持ちに変化はありましたか。

過去の曲を振り返ってみると、音を詰め込み過ぎていたなと思う。装飾過多になるのは、勤勉で繊細な日本人気質ゆえなのか。英国人の音作りはディテールより骨格を大切にし、ダイナミックで芯がある。会話でも、それぞれが自分の核となる部分を大切にしていると感じますね。その中にいることで、自分の考え方や曲作りに対する姿勢は自然と変わっていった。ポジティブな変化だと思いたいです。

Hotei Tomoyasu

この3年間で生まれ変わった
「最新の布袋寅泰」を聴いてほしい

前回のロンドン公演から3年経ちますね。

できれば毎年ライブをやりたいけれど、長いキャリアもあってか、作品作りのハードルが年々上がり、より時間をかけたくなってきている。僕の最愛のアーティスト、デービッド・ボウイの最後のアルバム「ブラック・スター」を聴いたとき、作品はアーティストがこの世に生きた証として残るものだから、ライブとは違った意味で大切なものだ、ということに改めて気付かされた。

また制作に加え、日本での音楽活動も忙しく、ライブ活動とスタジオ・ワークだけであっという間に時間が過ぎ去ってしまった。振り返ってみれば中身のある濃い3年だったので、この年月で成長した新たな姿を皆さんに見てほしい。  

今回選んだ会場シェパーズ・ブッシュ・エンパイアはオペラ・ハウスの作りになっていて、音の響きがとてもいい。大きな会場だけど、ステージとお客さんとの距離感も良く、2階の観客もはっきり見えます。今回は、軽快なロックだけではなく、スローなバラード、幻想的なインストゥルメンタルなど、様々なスタイルのギターをじっくり楽しんでもらえるように、すべてシート席にしました。

てっきりロック感満載のライブかと思っていました。

海外という舞台で自分の音楽をアプローチしていくうちに、ロック特有のアグレッシブな演奏だけではなく、僕の可能性をギターに託すような、今までにないスタイルを発見することができた。この重要な過程で、イタリアの国民的アーティスト、ズッケロが僕の奏でる音楽に目を留めてくれたことは大きかったと思う。僕は彼のコンサートにゲストとして招かれたことがあるんだけど、その当時ヨーロッパでの活動歴はまだ浅かったので、僕のことをよく知らない人たち、つまり何の先入観も持っていない2万人の観客の前で演奏することになったんです。僕は踊りながらギターを演奏したんだけど、みんなすごく反応してくれてね。そのとき、自分のスタイルは海を越えて伝わるんだって確信できた。海外で演奏するときは、歌よりギター・プレイの比重が大きいかな。日本にいたころとは別のベクトルで、今は音楽そのものを自由に楽しめていると思う。 

今回は、僕のキャリアを飾ってきたBOØWY やCOMPLEX時代の懐かしい曲や代表曲に加え、ある種、成熟したと言えるような大人も楽しめる深みのある新しいサウンドを、ホーン・セクションも加えた10人編成の華やかなバンドでお届けします。たぶん皆さんの持つイメージと違う音楽を披露できるのが、このロンドン公演だと思ってます。

日本へのライブ配信も行うそうですね。

音楽業界におけるテクノロジーの進歩は目覚しいものがあります。ここ数年で、アジア諸国の優れたアーティストたちが、世界を席巻してますよね。K-Popというジャンルも今や皆知っていますし、この現象はテクノロジーありきのことだと思うんです。

それから先日、ローリング・ストーンズのライブに行き、ロックを創生した人たちがあの年齢を迎えても生々しく、また技術と共に進化し続けている姿を見て、常に前向きに変化していくことの大切さを強く感じた。今この瞬間を楽しみつつ、新しいものにも敏感でありたいですね。今回は、最先端のテクノロジーを使って、ロンドンの熱気を日本の皆さんにもお伝えします。

この公演にかける意気込みを教えてください。

「やってやるぜ ! 」と気合満々ですよ(笑)。僕は常に「最新の布袋が最高の布袋」を信念に活動してきました。本公演は紛れもなく「最新の布袋」であり、僕の集大成、そして同時に新しいスタートでもある。ファンだけでなく、初めて聴きに来てくれる方にも僕の「今」を伝えたい。ロンドンに移住して6年、プロとしての36年というキャリアで培った様々な経験を通し、自分のパフォーマンスに今、誇りと自信を持っている。力まず、ナチュラルに演奏すれば必ず観客に届くと信じています。

英国へ単身赴任中の人、英国に留学している若い人、たまたま旅行に来ている人。英国やロンドンを愛し、また日本の良さを忘れず、今この瞬間を夢に向かって頑張っている人たちと、一人でも多く音楽を分かち合いたい。それぞれの楽しみ方で、音楽を聴いてほしいですね。

Hotei

可能性に対してオープンでありたい

今後の新たな挑戦についてお聞かせください。

これまで自分で道を切り開いてきたけれど、タランティーノやストーンズ、デービッド・ボウイ、ズッケロなどのビッグ・ネームとの出会いが人生を変えてくれたことも事実。そんな豊かな経験を大切にしつつ、これからは無名でも実力のある若手アーティストと積極的にコラボしたいと思っています。あらゆる可能性に対してオープンでありたいし、それを受け入れ、自分を生かせる実力を常にキープしていたいです。隣の家に歌がうまい子がいたら、ぜひ情報をお寄せください(笑)。

僕はレコードをセールスするとか、大きな会場でライブを成功させるとか、そういう結果だけを求めて音楽をやってるわけでは決してないんです。なかなか思うようにことが広がっていかないこともあるけれど、一歩一歩の積み重ねが必ずチャンスを生むと信じています。

最後に、ロンドンに住むことについて率直なご意見を教えてください。

それは「むかついたこと」って意味かな(笑)。笑えるようなエピソードはたくさんありますよ。Wifiがとにかく遅いから、日本から送られた映像データが全然ダウンロードできなくて、どこが007の国だよ、って思うことはしょっちゅう(笑)。あとは宅配便の配達時間がいい加減ですね。日本なら時間通りに配達される荷物が、英国では届かないことがむしろ普通。  

音楽的な観点から言うと、ライブの開始直前になっても誰も「時間です」って言わない。日本では秒刻みなのに。初めはもっとちゃんとしようよ!と思っていたけど、やるべきことをやれば別にいいのかって最近は思うようになったかな。ロンドンの生活に慣れてきたというより、東京での生活テンポが抜けてきた、と言うほうが正しいかもしれません。  

僕はかれこれ30年くらいロンドンと縁があるんだけど、昔は今に比べもっと暗くて臭くてね。特に冬を迎えると、ここで一体何やってるんだろう?って思うくらい沈んだ気持ちになったものでした。でも、春に鳥がさえずり、街中に新緑が溢れ出すと、なぜか全部許せちゃって。どうしてこんな小さなことで帳消しにできるのかって思うけど、日本の四季とは違い、ロンドンには光と影、夏と冬というように、強いコントラストが存在している。影の時間は内なる自分と向き合い、光の時間は自分を解放する。その一見極端に思えるコントラストが人間を強くすると思っています。これからも、ロンドンでの生活を厳しさも含めて楽しんでいきたいです。

ロンドン公演

Euro Tour: London

2018年10月20日(土)19:00
£31.95~37.60

O2 Shepherd’s Bush Empire
Shepherd's Bush Green, London W12 8TT
Tel: 0844 477 2000
www.ticketmaster.co.uk

布袋さんからのメッセージ

 

オープン・ハウス・ロンドン 2018 - ロンドンの建築を楽しもう

Open House London 2018 オープン・ハウス・ロンドン 2018年9月22日(土)& 23日(日)

初秋を飾るイベントとして、毎年人気の「オープン・ハウス・ロンドン」。歴史的な建造物や優れたデザイン建築の内部が一般に公開されるこのイベントは、まだ見ぬロンドンを知る貴重な機会だ。800以上の建物が参加するなか、本誌では、王立英国建築家協会(RIBA)が主催する「RIBA ロンドン・アワーズ」の受賞作、2018年に完成し、革新的なデザインでロンドンの景観を変えた建築、そして、目覚ましい活躍をする女性建築家たちによるデザインの数々を紹介する。伝統と革新を共存させながら、刻々と移り変わるロンドンの景観を再発見してみよう。(英国ニュースダイジェスト編集部)

オープン・ハウス・ロンドンって?
オープン・ハウス事務局は、ロンドンという街の魅力を市民にもっと知ってほしい、という志の下にスタートしたチャリティー団体。公式サイトでは、今年公開されている建築の基本情報が確認できるほか、印刷されたガイドブックも販売中(8. 50ポンド)。移動中に便利な無料アプリも公開している。あらかじめ予約しないと入場できない建築なども、同サイトから予約ページに飛べるようになっている。人気のある建築は早い段階で予約がいっぱいになる場合もあり。
https://openhouselondon.org.uk

RIBA ロンドン・アワーズ受賞作

王立英国建築家協会(RIBA)の主催で、毎年ロンドンの優れた建築に与えられる賞、「RIBA ロンドン・アワーズ」の受賞作品の中から、特徴ある3つの建築物を紹介する。

秘密の森への入口
Woodland Classrooms,
Belvue School
ウッドランド・クラスルームズ ベルビュー・スクール

Woodland Classrooms, Belvue School

童話の世界を彷彿とさせるような、ユニークな形の屋根が目印の木造建築。小学校のプレイグラウンドと、その外に広がる森の境界に建てられた森林学習のための校舎で、設計には同校の生徒たちの意見も取り入れたそう。生徒たちの創作した、森と学校の関係を表すストーリーをもとに作られた校舎は、秘密の森の入口に建つ重要なシンボルのような存在なのだという。

  • オープン期間: 9月23日(日)11:00-14:00
    定員30人。30分ごとに10名ずつのツアーもあり
  • Rowdell Road, Northolt, Middlesex UB5 6AG
  • Northoltt

地域に根ざして84年
Hackney Town Hall
ハックニー市庁舎

Hackney Town Hall

1934年に完成した市庁舎は、現在もハックニーのコミュニティーに利用されているが、建物は優れたアールデコ式建築の例の一つといわれ、イングランドの指定建造物(Grade II指定)にもなっている重要建築。昨年、7年にわたる大規模な改装工事が終了し、外観はオリジナル建築のまま、現代のオフィスに似合う、機能的で明るいデザインに生まれ変わった。

  • 9月23日(日)11:00-17:00
    定員20人。1時間ごとにツアーもあり
  • Mare Street E8 1EA
  • Hackney Central

オリジナル・デザインへのリスペクト
No1 New Oxford Street
ナンバー1 ニュー・オックスフォード・ストリート

No1 New Oxford Street

建設当時の1930年代、超モダンな建築がロンドンのランドマーク的存在だったコモンウェルス・ハウス。その再開発を手がけた設計事務所オームズは、元のデザインに敬意を表し、オリジナルと新しい部分を区別するのが不可能なほどに、細部まで心を砕き増改築。芸術品の修復を彷彿とさせるその職人技は、RIBAの審査員から「商業再開発で通常期待されるものをはるかに超えた」と称賛された。

  • 9月22日(土)
    定員15人。10時、11時、12時のツアー形式。事前予約が必要
  • 1 New Oxford Street WC1A 1BA
  • Holborn / Tottenham Court Road

ロンドンの新しい顔

今年完成したばかりの建築の中から、建物の規模や用途は異なるものの、それぞれに印象深く、また話題となっている人気の高い4品を紹介する。

市民に開放されたエコ建築
U.S. Embassy London
米国大使館

Hackney Town Hall

米国大使館は、今年の1月にロンドン中心部のメイフェア地区から再開発の進むロンドン南西部バタシーに移転した。新館は、太陽光や地熱などの自然エネルギーを利用するなど、省エネルギー効果の高い、最先端のエコ建築。また、池やベンチを備えたパーク・エリアは市民に開放されており、緩やかな螺旋状の歩道を進めば、館内のフロアごとに造られた、趣向を凝らしたガーデンにたどり着く仕組みだ。

  • 9月22日(土)9:45-12:00
    定員75人。事前予約と写真付きIDが必要
  • 33 Nine Elms Lane SW11 7US
  • Vauxhall / Battersea Park

イスラム文化の理解促進のために
Aga Khan Centre
アガ・カーン・センター

Aga Khan Centre

幕張メッセや青山のスパイラルなどで知られる日本建築界の重鎮、槇文彦(まきふみひこ)氏設計によるイスラム研究施設。パキスタンのアガ・カーン4世による依頼で、イスラム文化の理解促進のために建設された。内部は6メートルに及ぶアトリウム(吹き抜け)構造で隅々まで日の光が届き、屋上にはイスラム圏の様々な地域にインスパイアされたという6つの庭園がある。

  • 9月22日(土)12:00-17:00 & 23日(日)12:00-16:00
    定員30人。30分ごとのツアー形式
  • 10 Handyside Street N1C 4DN
  • King's Cross/St. Pancras

ユーザー・フレンドリーな空間
London Animal Hospital (TLAH)
ロンドン・アニマル・ホスピタル(TLAH)

London Animal Hospital

裏通りに面した古い倉庫を改造して作られた動物病院は、患者であるペットとその飼い主が、入口から出口までほかのペットと遭遇せずに治療を済ませられる画期的なデザインを採用。ロンドンの建築デザイン事務所アルマ・ナックが、55万ポンド(約7850万円)という低予算で、可能な限りユーザー・フレンドリーなものにした。「資金がなければアイデアで勝負」、の良い見本と言える。

  • 9月22日(土)& 23日(日)10:00-18:00
    定員10人。2時間ごとのツアー形式
  • 7 Kenbury Street SE5 9BS
  • Denmark Hill / Loughborough Junction

シティに出現した大胆なデザイン
Bloomberg European Headquarters
ブルームバーグ・ヨーロピアン・ヘッドクオーターズ

Bloomberg European Headquarters

シティに完成した、米大手総合情報サービス会社ブルームバーグの欧州本社。外部はシティの歴史ある街並みにマッチした重厚な造りだが、内部は2つのオフィス・スペースを橋で繋げた斬新で大胆な空間が広がる。デザインだけではなく、環境への取り組みがどれだけなされているかを調べる、英国のビルディング評価システムBREEAMで最高スコアを獲得。ほかのオフィスと比較した節水率は、70%という結果が出た。

  • 9月22日(土)10:00-17:00 & 23日(日)10:00-13:00
    定員25人。15分ごとのツアー形式。事前予約が必要
  • 3 Queen Victoria Street EC4N 4TQ
  • Bank / Canon Street

女性建築家の作品

英国では、女性参政権獲得から100周年や、#MeToo 運動など、何かと女性に光が当たった2018年。ここでは、英国の建築デザイン界に新風を吹き込んだ女性建築家によるデザイン3点を紹介する。

患者の安らぎの場所として
Maggie's Centre
マギーズ・センター

Maggie's Centre

チャリング・クロス病院の敷地内でNHSからは独立して運営されている、がん相談支援施設「マギーズ・センター」。2008年に、利用者にとって使いやすく、心が安らぎ、気分が明るくなるような場所にとの思いから設立された。発案者は、造園デザイナーで、自らもがんを患っていたマギー・K・ジェンクス。マギーは1995年に死去したが、マギーの名を冠した施設が今も患者たちを癒している。

  • 9月22日(土)10:00-13:00
    定員60人
  • Charing Cross Hospital, Fulham Palace Road W6 8RF
  • Hammersmith / Baron's Court

手作り感に溢れた最初の一歩
Blue House Yard
ブルー・ハウス・ヤード

Blue House Yard

ハリンゲイ・カウンシルの委託により、ロンドン北部ウッド・グリーンの駐車場跡に誕生した、クリエイターや自営業者のためのカラフルなワーク・スペース。リテイルやイベント用のスペースも兼ね備え、停車しているダブルデッカー・バスの中はカフェになっている。デザインは弱冠23歳の建築デザイナー、アリス・ハーディー。ハーディーが手掛けた初の大きなプロジェクトとなり、設計から設置まで一貫して携わった。

  • 9月22日(土)& 23日(日) 10:00-17:00
    定員25人
  • 5 River Park Road N22 7TB
  • Wood Green

一足先に新ミュージアム見学
Geffrye Museum
ジェフリー・ミュージアム

Geffrye Museum

17世紀から現在に至るまでの、英国家庭の住まいをテーマにしたミュージアム。現在は2020年まで続く改装工事のため閉鎖しているが、このイベント期間中は特別オープン。改装を担う建築デザイン事務所、ライト・アンド・ライトのスタッフによるツアーが行われるので、未来のミュージアムの姿が一足早く分かる。デザイン事務所は1994年にクレア・ライトが設立した。

  • 9月22日(土) 11:00-16:00
  • 136 Kingsland Road E2 8EA
  • Hoxton
 

森尚子インタビュー - 英国で活躍する日本人俳優

森尚子

ロンドンを拠点に軽やかで
ボーダーレスな活躍を続ける
森 尚子

現在ロンドンで上演中の人気ミュージカル「王様と私」。そこに渡辺謙や大沢たかおと並び、舞台で大きな存在感を放っている日本人俳優がいる。それはシャム王の第一夫人・チャン王妃を演じる森尚子さん。父親の転勤で渡英したとき12歳だった森さんは、以来、ロンドンを自分の居場所と定め、英国の舞台やテレビで俳優活動を続けている。今回はそんな森さんに、英国で俳優として活動する際の心意気や、ミュージカル「王様と私」への出演について語って頂いた。
(取材・文:ニュースダイジェスト編集部 / 写真:富岡秀次)

NAOKO MORI 11月29日、愛知県名古屋市生まれ。父の転勤のため4歳で米ニューヨークへ移住。10歳で日本へ戻り、その後12歳でロンドンへ。以来、英国を拠点に活躍を続ける俳優。17歳のときにシアター・ロイヤル・ドゥルリー・レーンの「ミス・サイゴン」で主演キム役をつかみプロ・デビューした。英国のテレビ・ドラマ「カジュアリティー」や「秘密情報部トーチウッド」にレギュラー出演するほか、主な映画作品にはマイク・リー監督の「トプシー・ターヴィー」など。2018年、ミュージカル「王様と私」でチャン王妃役に抜擢された。

それは「ミス・サイゴン」から始まった

俳優になると決心し、15歳からロンドンで一人暮らしを始めたそうですね。

父の仕事の関係で米国暮らしの後、12歳で英国に来ましたが、15歳のときに家族が本帰国することになり、「どうする?」と聞かれたのです。私はGCSE(義務教育修了時に英国の中学生が受ける中等教育修了試験)を前にしていたし、お芝居の勉強もしたい。ですから、「ロンドンに残る」と言ったら、「それじゃあ」とポーンと小切手帳を渡され、「後は自分でやっていきなさい」と言われました(笑)。そこでまず、私は住む場所を探すところから始めました。今考えると、なんてラジカルな親だと思いますが、海外生活が長く、俳優を目指す子供が、日本でうまくやっていけるのだろうかと考えたのでしょうね。

そのころからもう俳優を目指していたのですか。

そうですね、お芝居や歌は中学生のころからレッスンを受けていました。歌手になりたいと思ったこともあったのですが、だんだんに演技への興味が目覚めて来たという感じです。

ドラマなどで森さんの姿を拝見しているせいか、歌を歌われるイメージがありませんでした。

俳優としての初めての仕事はテレビではなく、17歳のときに出演したウエスト・エンド・ミュージカルの「ミス・サイゴン」(キム役)でした。このような大作でデビューを飾れたのは本当にラッキーだったと思います。その後はドラマなどテレビの仕事が増えましたが、歌のレッスンは続けて来ました。ただ、今回のように本格的に歌うのはおそらくウエスト・エンド・ミュージカル「アベニューQ」以来、11年振りだと思います。ですから、「王様と私」のお話しが来たときは、もう、「わーどうしよう!」とすごく緊張しました(笑)。「王様と私」は「サウンド・オブ・ミュージカル」などと並ぶ、名曲ぞろいのミュージカルですからね。チャン王妃の歌う「サムシング・ワンダフル」も、皆さんによく知られた曲なので、本当にプレッシャーです(笑)。

森尚子ロンドン中心部のCourthouse Hotelにてインタビュー

英国を拠点に活動していると、日本人ばかりでなく、東洋人全般を演じるのだろうと思いますが。

今回のチャン王妃や「ミス・サイゴン」のキムなどは例外ですが、実は私は、東洋人の役を演じたことがあまりないのです。「国境などのあらゆるボーダーを無くしたい」「ラベルを貼られたくない」と思っていて、日本人や東洋人の定型ではなく、「人間」を演じたい、昔から常にそういう姿勢でやってきました。ですから、今まで演じたキャラクターの90%が、もともと、東洋人向けに作られた役ではありませんでした。逆に、西洋人から見た日本人のイメージに合わせた役などは苦手で、「もうちょっと日本人ぽくして」とプロデューサーに言われても無理ですし、「そんな日本人は実際にはいないのに」と思ってしまいます。

1990年代のBBC医療ドラマ「カジュアリティー」では、プロデューサーに「なぜここ(緊急治療室)で日本人が働いているのか、どんな設定で脚本を書けばいいか」と聞かれ、そんなことはわざわざ説明しなくてもいいのではないかと伝えたことがあります。現実の英国の医療施設では、様々な国籍の人が働いていますし、ロンドンは特に多国籍ですよね。ですから、ドラマに無理に登場人物が日本人である理由を盛り込む必要はないと思ったのです。そんなことがあった時代からすると、現在はテレビの世界もだいぶダイバーシティーが進んできていると思うので、嬉しいですね。

人生はすべて縁や出会い

これまで演じた中で、お好きなキャラクターは誰でしょうか。

それはずいぶん難しい質問ですね! 私は、仕事や役というのはすべてご縁や出会いだと思っていますが、やはり「ミス・サイゴン」のキム役は最高でした。プロとしての1本目ということもあるし、ミュージカルの中で若いアジア人が演じる役としてはナンバー1ですから。あとは、オノ・ヨーコさんの役(「Lennon Naked」2010年)や、登山家の難波康子さん役(「Everest」2015年)。実在の人物を演じるのは非常に責任を伴いますが、このお二人を演じることができたのは、私にとって特別な経験でした。

そして、BBCの「秘密情報部トーチウッド(2006〜2009年)」シリーズのサトウ・トシコ役。この役は、新たなキャラクターを一から作り上げる面白さを教えてくれました。特に脚本家でプロデューサーのラッセル・T・デービスさん、英国では脚本家の神様みたいな方ですが、彼と新しいキャラクターを創造するプロセスは、もう一生に一度あるかないかくらいの貴重な体験だったと思います。デービスさんは本当に頭がよく繊細で、人間のことを良く分かっている、まるで宇宙人のような方です(笑)。彼の書いた台本を読むと、目の前にそのキャラクターがフワーッと立ち上がってくるのです。そういう意味では、本当に素晴らしいお仕事でした。

森尚子

「王様と私」のチャン王妃役についてはいかがですか。

実は「王様と私」では面白い話があります。父が商社マンだったので小さいときに米ニューヨークに家族全員で移住したのですが、そのときに初めて観たブロードウェイの舞台がユル・ブリンナー主演の「王様と私」だったのです! 私は当時まだ5歳でしたが、どういうセットで、ユル・ブリンナーが舞台のどこに立ち、どんなセリフを言ったか、いまだに覚えているのですよ。そのときのプログラムとユル・ブリンナーのサインが入ったLP レコードもまだ持っていて……。ですから、この仕事が決まったとき、家族で「うわーっ」と驚きました。

仕事や役は出会い、ご縁だと先程も言いましたが、まさにこれは、フル・サークル、円環といいますか、40数年前に体験したことが再び巡ってきたような、不思議な感覚です。人生って、すべてそういう出会いの数々で出来上がっているのかもしれないと思います。そして(渡辺)謙さんや(大沢)たかおさんとお会いしたことにもご縁を感じます。このお二人と一緒のステージに立っているなんて、もう光栄すぎて(笑)。しかも、日本人同士だと舞台上でも何かこう、繋がっている感覚があるのです。暗黙の了解というか、安心感とでも言うのでしょうか。

チャン王妃についてですが、王妃は非常に女性らしい、しなやかな強さを持っています。夫であるキングに対する忠誠心と愛情、その一方で第一夫人という、ほかの者に対する政治的な立場。舞台は1860年代のシャム(現タイ王国)ですが、日本人にも通じる「内助の功」的な要素が強いですね。チャン王妃は、毎日自分の中で成長しています。昨日はこうだったけど、今日はこうしてみよう、と少しずつ演じ方を変える。お芝居のだいご味は、そんな風に役が成長していくところにあると思います。つまり、完璧バージョンというのが舞台の場合にはないのですよね。常に微妙に変わっていく面白さがあります。そして、私はあまり意識して「こう演じるべき」「こういう性格だ」とはっきりは決めない方です。セリフが1番。セリフがすべてのヒントだと思いますし、謙さんやたかおさん、ケリー・オハラさんとのやりとりから、その場で役が生きてくる、と思っています。

音楽のある芝居

では最後に、弊誌の読者に「王様と私」の見どころを教えて頂けますか。

ロジャース&ハマースタインが生み出した「王様と私」は、70年前に書かれたとは思えないほど新鮮な物語です。西洋と東洋の関係や、女性の強さを取り上げるなど、まさに今の政治や文化について描いたと言っても通用するほどです。更にもう一つ重要なのが、演出家のバートレット・シャーさんは、この作品を「ミュージカル」というよりも、「音楽のあるお芝居」という観点から制作していること。これは役者の立場からすると、とてもありがたいことです。奇麗な歌と音楽だけではなく、物語と登場人物が非常に重要な役割を占めているということだからです。ですから、映画を含め、今までの「王様と私」をご覧になった方も、そして、たとえミュージカルが嫌いという方も、ぜひ一度試しに観に来て頂きたいです。色々な観点から楽しめる、まさに「Something for Everyone!」な作品だと思います。

公演情報

The King and I 「王様と私」

2018年9月29日(土)まで
月~土 19:00(水・土、8月30日以降の木は14:00もあり)
£29.50~175

London Palladium
Argyll Street, London W1F 7TE
Tel: 020 7087 7755
最寄駅: Oxford Circus
https://kingandimusical.co.uk

 

英国の野外劇場 - オープン・エア・シアターでドラマティックな夏の夜を

英国の野外劇場オープン・エア・シアターで
ドラマティックな夏の夜を

ミナック・シアター

国内各地で野外イベントが開かれる英国の短い夏。なかでも、シェイクスピアの時代から人々に親しまれてきたというオープン・エア・シアター(野外劇場)は、気軽に芸術に触れられるイベントの一つとして人気が高い。日中の暑さが静まる宵のころ、夜風に吹かれながらの観劇もまた乙なもの。家族や友人と一緒に、夏の思い出作りに出掛けてみてはいかがだろうか。(文:宮田さち)

*夜は日中に比べ肌寒くなるので、防寒具の用意を忘れずに
*演目はウェブサイトを参照

London

生い茂る美しい木々に囲まれて Regent's Park Open Air Theatre
リージェンツ・パーク・オープン・エア・シアター

リージェンツ・パーク・オープン・エア・シアター

緑豊かなロイヤル・パーク内に、1932年にオープンしたロンドン最大級の野外劇場で、18週間の上演期間中、毎年14万人以上の人が訪れる。この夏上演されるのは、パペット劇が楽しい「101匹わんちゃん」とギリシア悲劇の「アンティゴネー」。歴史あるイベントにふさわしく、ピクニック・セットから本格的なレストランまで、プレ・シアターの食事サービスも充実している。

2022年9月24日(土)まで *雨天中止の場合あり
£25~65

Regent's Park Open Air Theatre
Inner Circle, Regent’s Park, London NW1 4NU
Tel: 0333 400 3562
Baker Street駅
https://openairtheatre.com

London

シェイクスピアに思いを馳せて Shakespeare's Globe
グローブ座

グローブ座

オリジナルのグローブ座はエリザベス朝の1599年に建てられた野外円形劇場で、1回の公演で3000人もの観客が芝居を楽しむことができたと言われている。そのグローブ座をほぼ忠実に再現した現在の劇場で、「空騒ぎ」「ジュリアス・シーザー」「ヘンリー八世」「テンペスト」などのシェイクスピアの舞台のほか、ジャンヌ・ダルクからインスピレーションを受けた新作「アイ・ジョアン」を上演する。また、今年も好評の「深夜マチネ」を開催。夜11時59分開演の演目は、「ジュリアス・シーザー」(8月13日(土))と「空騒ぎ」(8月19日(金))だ。

2023年10月31日(火)まで
£25〜62(立ち見 £5)

Shakespeare's Globe
21 New Globe Walk, Bankside, London SE1 9DT
Tel: 020 7401 9919
Blackfriars / Mansion House / London Bridge駅
www.shakespearesglobe.com

Cornwall

海に面したドラマティックな劇場 The Minack Theatre
ザ・ミナック・シアター

ザ・ミナック・シアター

英最南西端ランズ・エンド近郊の崖の上にある劇場で、そのユニークなロケーションと建築様式から、世界的に名が知られている。驚くべきは、地元の女性ロウェナ・ケイドと庭師が、花崗岩の断崖絶壁を切り出して造ったDIY劇場であること。ステージの背後には大西洋が広がり、石造りの観客席から見下ろす風景は圧巻の一言に尽きる。夜空の下でライトアップされた劇場もとてもロマンティック。8月の演目は「リトル・ウーマン」「スカーレット・ピンパーネル」「メルシー・ワイヴス・オブ・ウィンザー」ほか。映画上映や子ども向けのお話もある。

2023年10月8日(日)まで *雨天中止の場合あり
£10〜25

The Minack Theatre
Porthcurno, Penzance, Cornwall TR19 6JU
Tel: 01736 810 181
www.minack.com

Dorset

小さな島で観劇を楽しもう Brownsea Open Air Theatre
ブラウンシー・オープン・エア・シアター

ラウンシー・オープン・エア・シアター

英西部ボーンマスの西側、プール湾に浮かぶブラウンシー島は、自然保護地区に指定されている小島。1907年、ボーイスカウトの創始者ロバート・バーデン・パウウェル率いる20人の若者が、実験キャンプをした場所としても知られている。島内には、B.O.A.Tの愛称で親しまれる野外劇場があり、1964年の「テンペスト」以来、50年以上にわたりシェイクスピア作品を上演し続けている、知る人ぞ知る島の名所だ。今年は、シェイクスピアの代表的な喜劇「十二夜」を上演する。

2023年7月26日(水)〜2023年8月11日(金) *悪天候の場合翌日に延期あり
£29(プール港からの往復フェリー料金を含む)

Brownsea Open Air Theatre
Poole, Dorset BH13 7EE
Tel: 078 4578 2924
www.brownsea-theatre.co.uk

ロンドンからのアクセス
London Waterloo駅からPoole駅まで列車で約2時間、Poole駅からフェリーで20分

Chester

近年注目の「劇場ピクニック」とは? Grosvenor Park Open Air Theatre
グロブナー・パーク・オープン・エア・シアター

グロブナー・パーク・オープン・エア・シアター

英北西部チェスターのグロブナー・パークに設置される野外円形劇場で、ステージを四方から囲む、すり鉢状の座席が特徴的。2010年スタートの比較的新しい劇場だが、どの席に座ってもステージがよく見え、また家族連れに対応し、ピクニックが楽しめるようワイドな座席設定が好評で、年々ファンが増加中。アルコールを含む飲食物やクッションの持ち込みが可能だが、前もってピクニック・セットをオーダーすることもできる。「ロミオとジュリエット」と「リトル・ウーマン」の2作品と、子供向けの1作品が上演される。

2023年8月27日(日)まで
£28〜49

Grosvenor Park Open Air Theatre
Grosvenor Park Road, Chester CH1 1QQ Tel: 01244 409 113 www.grosvenorparkopenairtheatre.co.uk

ロンドンからのアクセス
London Euston駅からChester駅まで列車で約2時間10分。Chester駅から徒歩10分

London

一風変わったオープン・シネマ

ロンドンでは趣向を凝らした屋外シネマも人気がある。その中から、「お墓で」「プールで」「船上で」と特にユニークな会場をピックアップ。

幽霊と一緒に映画鑑賞!? ブロンプトン墓地

ブロンプトン墓地

1840年開設のロンドンで最も古い墓地の一つ。墓石の間に設置されたスクリーンで、ゴシック・ホラー「フランケンシュタインの花嫁」や、恋愛映画の「ジェーン・エア」などを上映する。不気味だが意外とデートにぴったりの場所かも。

2018年9月5日(水)〜7日(金) 開場18:30、開演20:00
£18

Brompton Cemetery(Nomad Cinema)
Old Brompton Road (North Gate), Kensington, London SW5 9JE 
West Brompton駅
www.whereisthenomad.com/brompton-cemetery
※2022年は開催なし

プールサイドで観る、恋の物語 ブロックウェル・リド

ブロックウェル・リド

ロンドン南部にある、1937年オープンの野外プール、ブロックウェル・リドで上映されるのは、アカデミー賞作品賞ほか4部門受賞作品の「シェイプ・オブ・ウォーター」。ゆらゆらと水面に映る幻想的な時間を楽しもう。※The Luna Cinemaは開催されるが、同会場では行われない

2018年9月27日(木)開場18:15、開演19:45
£15

Brockwell Lido(The Luna Cinema)
Brockwell Park, Dulwich Road, London SE24 0PA
Tel: 0844 858 6767 
Brixton駅
www.thelunacinema.com/brockwell-lido
※2022年、The Luna Cinemaは開催されるが、同会場では行われない

ロマンティックの極致 ムービーズ・オン・ザ・リバー

ムービーズ・オン・ザ・リバー

タワー・ブリッジ・ピアを出発し、サンセット・クルーズ後に映画を鑑賞するロンドン初の船上シネマ。「ジョーズ」「ティファニーで朝食を」などクラシック作品から、話題の新作「ブラック・パンサー」まで厳選された映画を週5日上映。

2018年8月18日(土)まで 
£29〜38(ボート乗船代を含む。18歳以上限定)

Movies on the River
Tower Millennium Pier, Lower Thames Street, London EC3N 4DT 
Tel: 020 7740 0400 
Tower Hill駅
https://checkout.timeout.com/london/time-out-movies-on-the-river
※2022年は開催なし

 

エミリー・ブロンテ 生誕200周年 - 「嵐が丘」を世に生み出した女流作家

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生誕 200周年

荒野を愛し、「嵐が丘」を
世に生み出した女流作家
エミリー・ブロンテ Emily Brontë 1818-1848

「最後のロマン主義作家」といわれ、英文学史上にその名を深く刻んだエミリー・ブロンテ。小説「嵐が丘」(原題「ワザリング・ハイツ(Wuthering Heights)」)を書き上げ、姉シャーロット、妹アンと共に「ブロンテ姉妹」の一人として文壇に名を成したエミリーが誕生して、今年で200年を迎える。たった1作、しかし、比類なき傑作を遺してわずか30歳の若さで世を去った、この女性作家の生涯に迫る。(文: 丸城魔亜矢)

家族以外、友達も恋人もいなかった
エミリー・ブロンテの生涯

エミリー・ブロンテ

英国の詩人で文芸評論家のエドマンド・ブランデンにより、「リア王」「白鯨」と並び英文学の三大悲劇の一つに挙げられる「嵐が丘」。作者であるエミリー・ジェーン・ブロンテは、1818年、ブロンテ家の第5子として、英北部ヨークシャーのソーントンで生まれた。1820年、父パトリックが助任司祭として転任した近隣の田舎町ハワースに一家で移り住んで後、エミリーは、その生涯のほとんどを父親の牧師館で過ごした。

エミリーがハワースを離れたのは、6歳と17歳のときに計9カ月暮らした寄宿学校時代、24歳から25歳にかけて生徒兼教師としてブリュッセルで過ごした9カ月、そして音楽教師として英北部ハリファックス近郊に勤めたわずかな期間だけ。滅多に他人と口をきかない内気な性格で、音楽教師の職も6カ月しか続かなかった。

1847年、エミリーは「嵐が丘」を当初エリス・ベルという男性名で発表した。姉のシャーロットは、作者が女性であることを公表することを勧め、ロンドンの出版社を訪れることを提案したが、エミリーはそれを拒んだという。そしてその翌年、1848年、結核のためこの世を去った。生涯、家族以外には友達も持たず、恋愛を経験することもなかったという。

1847年、エリス・ベルの名でトマス・コートリー・ニュービー社より出版された「Wuthering Heights」(「嵐が丘」)の初版本。当時は女性作家への偏見が根強かったため、男性名のペンネームを使用した。後にシャーロットが、作者の本名を公表した

姉妹そろって文才に恵まれた、ブロンテ姉妹

詩人のアルフレッド・テニスンや文豪チャールズ・ディケンズなどが活躍し、文学の世界において全盛期を迎えていたビクトリア朝の大英帝国。その時代に流星の如く登場したシャーロット(1816~1855)、エミリー(1818~1848)、アン(1820~1849)のブロンテ3姉妹は、父パトリック・ブロンテが牧師を務めるヨークシャーの田舎町、ハワースの牧師館で、兄のブランウェルも加え、幼いころから文章を書くことを遊びにして育った。

1846年、成人した姉妹は「カラー、エリス、アクトン・ベル詩集」を男性名で自費出版したが、当時はわずか2部しか売れず、19世紀末に英国の詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーンらが評価するまで顧みられることはなかった。

しかし、翌1847年10月、カラー・ベルという男性名を使って出版されたシャーロットの「ジェーン・エア」が大好評を博し、同年、エミリーの「嵐が丘」とアンの「アグネス・グレイ」も刊行された。

出版の喜びもつかの間、1848年にはブランウェル、エミリー、そして翌1849年にはアンと、兄弟姉妹は相次いでこの世を去る。残されたシャーロットは失意の中も執筆を続け、「シャーリー」「ヴィレット」を出版したが、「エマ」(1860年未完成原稿発表)を執筆中、38歳のときに妊娠中毒症でこの世を去った。

ブロンテ姉妹兄ブランウェルが描いたブロンテ姉妹の肖像。左からアン、エミリー、シャーロット。
最初はブランウェルも描かれていたが、彼自身の手によって消されている

エミリーの死後、評価された小説「嵐が丘」

ジプシーの孤児ヒースクリフが陰惨な復讐劇をくり広げる「嵐が丘」は、牧師館の内気な娘が書いたとは到底思えない愛憎の物語だ。英小説家サマセット・モームは、エッセイ集「世界の十大小説」(1954年)に「嵐が丘」を入れ、同作品を讃えている。とは言え、出版当初の「嵐が丘」は評価が分かれ、2つの家族の3代にわたる愛憎劇を、2人の語り部が交互に語る複雑な構成は、特に不評を買う原因となった。「嵐が丘」が文学的に高く評価され始めたのは、エミリーの死後であった。

「嵐が丘」あらすじ
舞台は、ヨークシャーのヒースの生い茂る荒地にある館「嵐が丘」。館の主人に拾われた孤児ヒースクリフは、同館の娘キャサリン・アーンショーと共に育てられる。2人は強く惹かれ合いながら成長するが、キャサリンの兄ヒンドリーは、父親のヒースクリフに対する愛情に嫉妬し、ヒースクリフを虐待する。やがて、キャサリンと近隣の富豪リントン家のエドガーとの結婚話を知ったヒースクリフは突然姿を消し、3年後、エドガーと結婚したキャサリンの前に再び姿を現す。キャサリンは驚きのあまり錯乱死し、ヒースクリフは自分とキャサリンを引き離したアーンショー家とリントン家に復讐を開始。ヒースクリフは両家の財産を手に入れ、ヒンドリーの息子ヘアトンを使用人のように育てる。しかし1802年のある晩、ヒースクリフは自宅で不可解な死を遂げ……。

ヒースの荒野紫に生い茂るヒースもハワースの荒野の見どころの一つ

エミリー・ブロンテってどんな人?

ほとんど家庭教育のみで育ち、生涯結婚もしなかったエミリーは、「嵐が丘」をその類まれなる想像力一つで書き上げたといっても過言ではない。軍隊のような秩序を好むと同時に、空想を愛したとされる内気なエミリーの素顔が分かる、5つのエピソードを紹介する。

幼いころから空想好き

シャーロットとアン、兄ブランウェルと共に、エミリーも幼いころから物語を書き始めた。とりわけ、アンとの合作「ゴンダル」は、架空の島を舞台にした詩と散文による壮大な作品で、本作の執筆に没頭したエミリーは、成人してからもその筆を置かず、1840年代の初期まで書き続けたという。

エミリー自筆の詩エミリー自筆の詩

作品を他人に見られることを嫌う

偶然、机に置き忘れられていたエミリーの詩を読んで感銘を受けたシャーロットは、3姉妹で詩集を発表することを強く推したが、エミリーは作品を他人に見せることを嫌い、自分の原稿を盗み読みしたシャーロットに激怒したという。詩集の出版にも乗り気ではなかったが、家計を助けるという理由で、エミリーは仕方なく出版に応じた。男性名で自費出版された「カラー、エリス、アクトン・ベル詩集」には、エミリーの詩が21編、アンの詩が21編、そしてシャーロットの詩が20編収められた。

ブロンテ博物館姉妹が暮らした当時が再現された、ブロンテ博物館の内部

獰猛(どうもう)な犬を手なずけた

エミリーの生きた19世紀前半のイングランドは、 馬が移動の手段だった時代であり、動物は人々にとって身近な存在だった。ブロンテ家も、鷹のネロや、ガチョウのビクトリアとアデレードなど、様々なペットと暮らしていた。エミリーはアイリッシュ・テリアのグラスパーを始め、何頭かの犬を熱愛すると同時に、厳しくしつけた。なかでも獰猛な性格で知られたマスティフ犬の「キーパー」がお気に入りで、キーパーが村の犬とケンカをした際、果敢にもエミリーが止めに入ったという逸話がある。

エミリーの愛犬エミリーの愛犬、アイリッシュ・テリアのグラスパー

風の吹きすさぶ荒野を愛する

ほとんど学校に通わず、家族以外に友達を持たなかったエミリーの遊び場は、生涯、自宅の裏に広がる荒野だった。外では内気なエミリーだが、家族と過ごすときと荒野を歩くときだけは生き生きとしていたという。エミリーに教育を施したのは、姉のシャーロットと、1821年の母マリアの死以降、ブロンテ家の一員として共に暮らしていた伯母エリザベスだった。また、牧師である父親からは、幅広い読書と、公共政策や文学評論などについて手ほどきを受けた。

ハワースの荒野ハワースの荒野

医者を拒否する頑固者

エミリーは、内向的な性格とは裏腹に、ストイックで頑固だったと言われている。画家だった兄ブランウェルの葬儀に出席してひいた風邪がもとで結核を患った際、2階の寝室に行く力もないほど衰弱していたにもかかわらず、医者にかかることを頑なに拒み、1848年12月19日、後に自分が英文学史上に名を残すことも知らないまま、ダイニング・ルームのソファで息を引き取った。享年30歳。早すぎる死だった。

これを知れば、「嵐が丘」がもっと楽しめる

「嵐が丘」の世界をもっと探求したい方には映画がお勧め。また、姉妹を育んだ、当時と変わらぬ風が吹き抜けるハワースを訪れて「嵐が丘」の世界を体感するのも良いだろう。ブロンテ・カントリーとして知られるハワース一帯にはブロンテ一家にまつわる数々の名所がある。

何度も映画化されている「嵐が丘」

「嵐が丘」は、過去に何度も映画化されている。原作は読んだことがないが、映画は観た、という人も多いのではないだろうか。初めて映画化されたのは1939年の米ハリウッド作品。ローレンス・オリビエとマール・オベロン主演で、原作のような復讐劇ではなく、キャサリンとヒースクリフの情熱的なラブ・ストーリーとして描かれている。1992年に、ジュリエット・ビノシュ、レイフ・ファインズ主演で製作された英作品は、坂本龍一が音楽を担当した。1998年に英民放局ITVによりテレビ向けに製作されたロバート・カバナー、オーラ・ブラディ主演の作品は、原作に忠実で人気が高い。

いずれのバージョンにも、同じ場面が登場し、名セリフがあるので、見比べてみるのも面白い。例えば、キャサリンが家政婦エレンにエドガーとの結婚の話をしていて、それをヒースクリフに立ち聞きされる場面のキャサリンの決めゼリフ。俳優たちがここぞと演技を競い合う名場面だ。日本でも1988年に松田優作と田中裕子主演で、舞台を鎌倉時代の日本に設定して製作されている。ヒースクリフは「鬼丸」という名で登場。音楽は現代作曲家の武満徹が担当した。

ブロンテ姉妹の生家ヨークシャーの小さな町ソーントンにあるブロンテ姉妹の生家。
ハワースに移り住む前に一家が暮らしていた場所

「嵐が丘」の舞台、 ブロンテ・カントリー、ハワース

ブロンテ姉妹の故郷ハワースには、ブロンテ一家が暮らした牧師館が残っている。牧師館は、現在はブロンテ博物館となっており、当時の家具やブロンテ姉妹に関する展示物を見ることができる。この博物館では、2016年から、ブロンテ姉妹兄弟の生誕200年を記念する5年越しのイベント「ブロンテ200」が開催中。3年目の今年は、エミリー・ブロンテの生誕を祝い、「エミリー2018」と題して、エミリーや「嵐が丘」 にちなんだ講演や展示が行われている。

また、ハワースの町には、エミリーの兄ブランウェルが酒浸りとなって通ったというパブ「ブラック・ブル」や、アンを除くブロンテ一家が眠る教会などが点在する。

そして、ハワースに足を延ばしたら、ぜひ挑戦してみたいのが荒野のハイキング。「嵐が丘」の原題「Wuthering Heights」の「Wuther」とは、ハワース地方の言葉で「風が轟々と吹き荒れる様」を示す言葉だが、荒野を歩きエミリーの人生に思いを馳せたり、姉妹が遊んだ橋や、「嵐が丘」の舞台になったとされる廃墟「トップ・ウィズンズ」などを探索するのも良いだろう。

ブロンテ博物館ブロンテ博物館

The Brontë Parsonage Museum
4月〜10月: 10:00-17:30 / 11月〜3月: 10:00-17:00
入場料: £8.50(発行日より12カ月間有効)
Church Street, Haworth, West Yorkshire BD22 8DR
Tel: 0153 564 2323
アクセス: Kings Cross駅からKeighley駅まで約3時間。同駅からバスまたは蒸気機関車(夏季、週末、祝日のみ運行)でハワースへ。街の中心部に博物館がある。
http://www.bronte.org.uk

 

渡辺謙主演、ミュージカル「王様と私」プレビュー公演をリポート

ミュージカル「王様と私」
プレビュー公演をリポート 2018年6月26日(火)
The King and I at London Palladium

王様と私「王様と私」の冒頭シーン。アンナは息子とシンガポールから船でバンコクの港に着く

インタビューでは、舞台に立つ役者としてのプレッシャーや心構え、作品の背景やそこに含まれたメッセージなどについて語ってくれた渡辺謙さん。その最後を、「理屈ではなく、実際に舞台を観て楽しんで、何かを感じてほしい」と締めくくった。

その言葉を心に留めつつ、ロンドン・パラディアムの古風な赤いシートに腰を掛けたら、あとはそのまま19世紀のタイへタイムトリップ。渡辺さんの言葉通り、「王様と私」を楽しむのに難しい理屈は全く必要なかった。ブロードウェイで一番の美声の持ち主と言われるアンナ役のベテラン女優、ケリー・オハラさんのまろやかな歌声、立ち姿だけでも既に王様らしいオーラを放つ渡辺さんの、意外にもコミカルな演技。そのほかの出演者たちの軽妙な動きやセリフもユーモアたっぷりで、客席からは常に笑い声が上がっていた。

だが、私たち観客は笑いながらも、国王、英国人女性、国王の妻、奴隷、などそれぞれ全く異なる立場の登場人物、その全員に感情を移入し、いつの間にか彼ら全員の視点で、多角的に物語の世界を見ている自分に気付かされる。主人公は1人ではないのだ。そしてそのときの印象は、見終えてから数日経っても消えることなく、むしろ次第に強まるばかり。

演劇においては「厳しい現実をつかの間忘れて楽しもうというのがブロードウェイの信念ならば、事実から目をそらさず、苦しみながらも必死に生きる人々の真摯な姿をそのまま描き出すのが、ウエスト・エンドの心意気」というのが通説だそうだが、バートレット・シャー版の「王様と私」は、ブロードウェイの楽しさとウエスト・エンドの実直さ、その2つが見事に溶け合った極上のミュージカルだ。(徒)

王様と私互いに反発し合っていたシャム王とアンナの関係が変わり始める

王様と私「Shall We Dance」の曲で2人が踊るシーンでは、客席から手拍子が

王様と私シャム王を演じる渡辺謙さん

王様と私ベテラン女優ケリー・オハラさん

公演情報

The King and I 「王様と私」

作曲家リチャード・ロジャースと、劇作家オスカー・ハマースタイン2世が手掛けたブロードウェイ・ミュージカル「王様と私」は、1860年代初頭のシャム(現タイ王国)を舞台に、国王と、子供たちのために家庭教師として雇われた英国人女性アンナの交流を描いたミュージカル。王とアンナは互いの文化の違いに戸惑いながらも、理解を深め惹かれあっていく。1951年のブロードウェイ初演以来、世界中で繰り返し上演されている人気ミュージカルの一つで、「Shall We Dance?」「Something Wonderful」などおなじみの曲が並ぶ。初演から1985年までシャム王を演じ続けたユル・ブリンナーのスキンヘッド姿は、見るものに鮮烈な印象を与え、56年にはウォルター・ラング監督により映画化もされた。

ブロードウェイで2015年に上演された、ベテラン演出家バートレット・シャーによる「王様と私」は、シャム王を演じた渡辺謙が同年のトニー賞ミュージカル部門主演男優賞にノミネート、英国人の家庭教師アンナ役を務めたケリー・オハラが同賞主演女優賞を獲得するなど大好評を博し、2015年の計9部門のトニー賞を受賞した。2018年6月から9月にかけてロンドンのウエスト・エンドで上演された後、アジア各国へもトランスファーされるという。

出演:ケリー・オハラ(家庭教師アンナ)、渡辺謙(シャム王)、森尚子(チャン王妃)、大沢たかお(クララホム首相)、ナヨン・チョン(奴隷のタプティム)ほか

2018年9月29日(土)まで
月~土 19:00(水・土、8月30日以降の木は14:00もあり)
£29.50~175

London Palladium
Argyll Street, London W1F 7TE
Tel: 020 7087 7755
最寄駅: Oxford Circus
https://kingandimusical.co.uk

 

渡辺謙インタビュー - ミュージカル「王様と私」ロンドン公演

渡辺 謙

ミュージカル「王様と私」ロンドン公演 王の孤独とジレンマを表現したい 渡辺 謙

世界中で繰り返し上演されている人気ミュージカル「王様と私」。2015年、米ブロードウェイで上演されたこの作品は、気は短いが進取の気性に富むシャム王を演じた渡辺謙と、英国人の家庭教師アンナ役を務めたケリー・オハラのコンビで大好評を博した。同年の米トニー賞では計9部門の演劇賞を受賞。そんな本作の公演が、いよいよロンドンのウエスト・エンドでスタートした。初日を控えリハーサル中の渡辺謙さんに、ロンドン公演にかける意気込みのほどを伺った。
(取材・文:ニュースダイジェスト編集部 / 写真:富岡秀次)

Ken Watanabe 1959年10月21日、新潟県生まれ。演劇集団「円」に入団。「独眼竜政宗」や「仕掛け人・藤枝梅安」などのTVシリーズを始め、映画「タンポポ」「明日の記憶」ほか、出演作は多数。2003年の「ラストサムライ」でハリウッド・デビュー。以降、「バットマン ビギンズ」や「インセプション」など多数のハリウッド作品に出演。2015年、ミュージカル「王様と私」で主演に抜擢され、初めてブロードウェイの舞台に立つ。

英国の観客はインテリジェント

英国の演劇については、どのようなイメージをお持ちですか。また、現在ロンドンでリハーサルをされていて、米ブロードウェイと違うと感じられたことはありますか。

まだ実際にお客さまを前にしていないので、確実に「こうなんだ」ということを、肌で感じているわけではないのです。ただここ数年、何度か英国に来て観劇をした経験からすると――、まあ、どういうところで比較しているのかと言われると困りますが、英国の方がちょっと(観客が)インテリジェントですね。ですから今回は、あまりウケを狙うということではなく、本質的なストーリー・テリングの部分でお客さまに楽しんでいただけるのではないかな、と思っています。ブロードウェイ版とは少し表現法を変えて、あまり大袈裟にせずに抑えめにしようなど、現在、部分的な話し合いもしています。

英国の観客はインテリジェントとのことですが、それは例えば、シェイクスピアなどの演劇の歴史が育んだものでしょうか。

そうですね。そういった歴史や伝統がお客さまの中に培われているのだと思います。

これまで映画やお芝居にしても、日本人、というよりアジア人が主役になることは、世界的に見てもあまりなかったと思いますが、本作に渡辺さんが選ばれたのはなぜだとお考えですか。

バート(本作の演出家、バートレット・シャー)が言うには、彼は「キングが欲しかった」のだと。自分で言うのもなんだか恥ずかしいのですが、彼には、「技術やテクニックは教えたりトレーニングを受けてもらったりできるけれども、役者としてのスケール感や、その人の持っているオーラやパワーは人が教えられるものではない」と言われました。そして、「だから、あなたにキングを演じて欲しい」と言われたのです。ありがたいお話ですし、うれしいことです。

国外で、外国語で演じるというのは、日本人だけでなく、どんな役者にとっても大変なことだと思います。最初に、「王様と私」を引き受けられたとき、どのように考えていましたか。

ここ十数年、映画においては、自分の母国語ではない言語で芝居をするという経験を重ねてきましたが、映像は失敗しても直すことができる。極端に言えば、最終的にアフレコでも直せるのです。しかし舞台の場合は、ステージに出たらもう全部その場で自分が責任を取らなきゃいけない。もちろん僕は舞台の出身なので、その怖さも知っていますが、それを知った上で、そういう状況にトライしたわけです。まあ、僕は無謀なのかもしれません(笑) あまり、怖いとか大変とかそういうことに尻込みをするタイプではないのかもしれない。ですが、本当に何にも縛られず自分の役を楽しむことや、色々な瞬間をうまくジャグリングできるようになるまでには、結構時間がかかりました。

今回、ケリー・オハラさんを含むブロードウェイのキャストは何人くらい参加しているのですか。

いや、ブロードウェイから来たのは僕とケリーの2人だけ。あとは皆ロンドン・キャストですよ。面白いのは、ブロードウェイで演じていたアジア人たちは、皆アジア系米国人でしたが、今回は、本当に国際色豊かなんです。例えば、アジア系のベルギー人やオランダ人、アイルランド人だったりと、ヨーロッパの色々なところから、生まれも育ちも異なるバックグラウンドを持った役者たちが来ている。それでも彼らは、皆アジアの血を引くという共通部分を持っているのです。そういう意味では、ブロードウェイよりも今回の方がむしろ、「王様と私」の背景となっている、「19世紀に西洋列強の影響や圧迫を受けながらも、自分たちのアイデンティティーや習慣、文化を守ろうとしているアジア」と言う歴史的感覚を表現するのに、面白いキャストなのではないかと思います。ある意味、原作のテイストを感じることができるキャストだ、と言った方が良いかもしれません。

作品の中にアジアらしさを持ち込みたい、ということでしたが。

例えば、椅子よりも床に座ろうとか、お香をたく場面があったらそのセレモニーにふさわしい動きをしようなど、アジア人にとっては、ある程度自然な動作をどんどん劇中に取り入れています。それは決して、この時代はこうだったああだったという歴史的な分析ではなく、ロンドン・パラディアムのステージを観ているお客さまたちに感覚的に分かってもらえるような、アジアの空気を演出したいということです。結局、何かを表現するということは、そういうことなのではないでしょうか。お客さまが、プログラムを見ながらロジカルに考える以前に、幕が上がったらそこにあるもので全部表現したいじゃないですか。そういう意味で、体の使い方や動き、キングの衣装の着こなしや、そのさばき方など、そういう一つひとつの小さな積み重ねを、お客さまの網膜の中に重ねていくことで、「王様と私」の世界観が生み出されるのだと思います。これは皆とも話し合っていますし、自分の中でも、いかにエレガントに、西洋化していないアジアの雰囲気が出せるかを考えています。

渡辺謙「自分で言うのも恥ずかしいのですが」と前置きし、主役を引き受けた経緯を語る渡辺さん

王の孤独とジレンマを表現したい

3月にロンドンで行われた記者会見で、「王の孤独とジレンマ」を表現したいとおっしゃっていました。また、「俳優の孤独」という言葉も口にされました。この孤独は王様の孤独と同じようなものなのでしょうか。

どんなに稽古を積んで、カンパニーの中で皆で頑張ろうと思っていても、最終的に舞台の袖から舞台上へ結界を切っていくためには、自分の力で進まなくてはいけないですよね。もちろん仲間もいるけれど、舞台に上がると、全責任を自分で背負わなければならない。そういう意味では孤独というか、自分の責任に押しつぶされそうなプレッシャーが、舞台に立っていないときに、あるものなのですよ。それはどの芝居でもあるし、あればある程、いい舞台に臨んでいるということだと僕は思っています。

プレッシャーが嫌だとかダメだとかいうのではなく、責任を負わざるを得ない環境に常に身を置きたい、ということです。

では、役者はいつもそういうプレッシャーを感じているし、求めているということですか。

求めているし、それに負けないように稽古を積んだりしているわけです。それが最終的には、自分ですべてを背負って、決断して乗り越えていかないといけない、そしてすべて受け入れて次の世代に渡していかなければならない、と言う王様の抱えている責任ある立場に似ているのではないかと思います。

もちろん僕らが背負うのは、王様とは違い、国とか社会とかそんな大きいものではありませんが、しかし、その孤独感やプレッシャーは、ある種リンクするものかなと思います。

渡辺謙常にプレッシャーを感じる環境に身を置きたい

互いの違いを認め合う思いやりと、
違いを乗り越えて理解し合う努力

また、記者会見で、異なる文化圏の人々が分かり会うには、「compassionとunderstanding」(思いやりと理解)が必要だとおっしゃいました。今回の「王様と私」のテーマに繋がると思われますか。

はい、まさにこの作品の肝ですね。単に異なる文化間だけではなく、世代、社会的な環境、学歴、男女など、色々なものに違いがあるということから始まって、お互いをきちんと認め合う。今、違いを排除して全部をイコールにしてしまおうという、世界的な風潮がとてもあると僕は思うのですが、そうではなくて、こういった違いをどうやって乗り越えて、最終的には理解しあって、認め合うことができるのか。ただ単に妥協したり同意したりすれば良いということではなく、あるときは闘うことも、意見をぶつけ合うことも必要でしょう。自分を表現することも含めて、努力も必要だと思います。そして、認め合い、人として尊敬し合うということが、この芝居の肝だと思います。これは、まさに「今」の話ですよね。今、現代に生きている我々が最も必要としていることだと思うので、このテーマは全く古くならない、という気がしますね。

一方では、タイという国の描き方が実際と違うなどと言ってくる人もいるのではないですか。

そういうことを言う人は、いつもいる。でも、じゃあどうすれば満足するの、描かなきゃいいの? という話ですよね。日本を題材にした作品でも色々言う人がいますが、要は、その作品に(描かれる国に対する)リスペクトがあるかどうか。僕らは、タイを貶おとしめたくてこの芝居をやっているんじゃない。僕は自分でキングをやっていて、タイの王様が馬鹿で間抜けで変な奴だということを見せているわけでは全くない。文句を言う人たちというのは、何でも否定から入ってしまう。彼らこそ、compassionとunderstandingをしてくれよ、と思います。この作品をちゃんと見たら、そんな風には絶対見えないはずだから。

それで思い出しましたが、ユル(ユル・ブリンナー)の演じたバージョンには入っていなかったけれど、本作には元々、「Western People Funny」という曲があります。ウェストをぎゅっと絞ったドレスや、キツキツの靴なんか履いちゃって、西洋人は変だよね、というような、白人の人が聴いたら馬鹿にするなと怒るようなナンバーです。(森尚子の演じる第一夫人・チャン王妃が、To prove we're not barbarians, They dress us up like savages! To prove we're not barbarians, We wear a funny skirt! と歌う)実は、この曲は今までずっとカットされ歌われていませんでした。今回のプロダクションで久々に挿入されたのですが、ブロードウェイ公演では、お客さんたちは失笑していましたよ。つまり、そんな曲がある今回の「王様と私」は、単なる「西洋から見たアジア」とは、全く違う観点から描かれているということです。

渡辺謙

内包されていた本来の物語が引き出される

英国に住む人たちに、どのように作品を観てほしいですか。

はっきり言っちゃっていいのかな。今までの「王様と私」とは全く別の作品だと思ってほしいです。例えば1956年の映画版などは、ある意味、表層的というか、あの時代の持っていた「イースト・ミーツ・ウエスト」のイメージに、ちょっとしたロマンスをまぶしたもの、ですよね。しかし、この作品はそんなレベルの話じゃない。もっと激しいし、人としての痛みとか苦しみ、悩みをどうやって乗り越えていくか、そういう非常に深いものになっていると思います。更に言うと、元々、本来はそういう物語だったのですよ、ロジャース&ハマースタインの原作は。だから、そこに内包されていたものが、今、引き出されたということだと思うのです。

公演情報

The King and I 「王様と私」

作曲家リチャード・ロジャースと、劇作家オスカー・ハマースタイン2世が手掛けたブロードウェイ・ミュージカル「王様と私」は、1860年代初頭のシャム(現タイ王国)を舞台に、国王と、子供たちのために家庭教師として雇われた英国人女性アンナの交流を描いたミュージカル。王とアンナは互いの文化の違いに戸惑いながらも、理解を深め惹かれあっていく。1951年のブロードウェイ初演以来、世界中で繰り返し上演されている人気ミュージカルの一つで、「Shall We Dance?」「Something Wonderful」などおなじみの曲が並ぶ。初演から1985年までシャム王を演じ続けたユル・ブリンナーのスキンヘッド姿は、見るものに鮮烈な印象を与え、56年にはウォルター・ラング監督により映画化もされた。

ブロードウェイで2015年に上演された、ベテラン演出家バートレット・シャーによる「王様と私」は、シャム王を演じた渡辺謙が同年のトニー賞ミュージカル部門主演男優賞にノミネート、英国人の家庭教師アンナ役を務めたケリー・オハラが同賞主演女優賞を獲得するなど大好評を博し、2015年の計9部門のトニー賞を受賞した。2018年6月から9月にかけてロンドンのウエスト・エンドで上演された後、アジア各国へもトランスファーされるという。

出演:ケリー・オハラ(家庭教師アンナ)、渡辺謙(シャム王)、森尚子(チャン王妃)、大沢たかお(クララホム首相)、ナヨン・チョン(奴隷のタプティム)ほか

2018年9月29日(土)まで
月~土 19:00(水・土、8月30日以降の木は14:00もあり)
£29.50~175

London Palladium
Argyll Street, London W1F 7TE
Tel: 020 7087 7755
最寄駅: Oxford Circus
https://kingandimusical.co.uk

 

木梨憲武インタビュー - ロンドンで個展「moment」開催

個展のテーマは、人と人との結びつき 木梨憲武 Noritake Kinashi London Exhibition -moment

「とんねるず」の一員として活躍する一方、東京にアトリエを持ち画家としても活動する木梨憲武さん。木梨さんのアーティストとしての才能は日本でも高い評価を得ており、2014年から16年にかけ国内各地で8回にわたり開催された展覧会では、延べ43万人の来場者を動員した。6月21日から4日間にわたり、ロンドン東部で行われる欧州初の個展、「moment」では、木梨さんの最新作の中から15作品を展示。個展を目前にした木梨さんに話を聞いた。

木梨憲武

Noritake Kinashi 1962年3月9日 東京生まれ。お笑いタレント、歌手、アーティスト、声優。1994年に「木梨憲太郎」名義で名古屋で開催した初個展「太陽ニコニカ展」を皮切りに、日本国内で9回の個展を開催。2015年には米ニューヨークでも個展を開き、話題になった。今回ロンドンで紹介される作品は、今年の9月から2020年にかけて日本を巡回する、大規模な展覧会にも展示される予定。

木梨さんはご自身のウェブサイトの中で、「英国好き(anglophile)」と書かれていましたが、英国のどのようなところがお好きですか。

日本で子供がブリティッシュ・スクールに通っていますし、現在、1人がセントラル・セント・マーチンズ(ロンドン芸術大学の中のカレッジの一つ)でグラフィック・デザインを勉強しています。そんなこともあって、日本にもイギリス人の友達がいますし、英国とは何かいつもご縁を感じています。

今回の個展は、アーティストやデザイナーに人気のロンドン東部、ショーディッチのギャラリーで開催されますね。この地域での開催は、ご自身で選ばれたのでしょうか。

今回の開催場所は、この展覧会のプロジェクト・ディレクターである、井村優三氏から提案してもらいました。

そもそも、なぜロンドンだったのでしょう。2017年には、「ロンドン」というドローイングも描いていらっしゃいますね。

ロンドンが放つ純粋なエネルギーや創造性には刺激を受けることが多いです。そんなロンドンを皮切りに巡回展を始めることは、特別な意味があります。また、コメディアンとして笑いの力を信じているし、笑いは人々に平和な気持ちをもたらすものだと思います。この気持ちをキャンバスに表現する、それが僕のメッセージです。

この個展のテーマは「人と人との結びつき」とのこと。ロンドンは人種のるつぼで、実に様々な文化的背景を持つ人々が住んでいます。現地の人々に、どのように作品を観て欲しい、また、こんな人に見てもらいたいという希望はありますか。

僕は人との繋がりを一番大切に思っています。作品を通して、国や人種を越えた愛と平和を、たくさんの人に感じていただきたいです。

木梨憲武

好きなアーティスト、影響を受けたアーティストは誰ですか。

米国ポップ・アートの画家ロバート・ラウシェンバーグと、グラフィティ・アーティストのジャン=ミシェル・バスキアです。彼らの表現の自由奔放なところが好きです。

お好きな英国のコメディアンはいらっしゃいますか。

Mr. ビーンです。

今回のロンドン滞在で、行ってみたい場所や、やってみたいことはありますか。

今回は展覧会のために滞在するので、特に予定はありません。

作品を観に行こうと考えている弊誌読者に、何かメッセージをいただけますか。

今回、ストリート・カルチャーの発信地であるロンドン東部で個展を開催することになりました。ストリートは僕の作品制作のスタイルのひとつなので、ジャパニーズ・ストリート・スタイルをイギリスで楽しんでもらいたいと思います。その後、日本に戻って日本の皆さんにも作品を観ていただけることになりました。よろしくお願いします!

展覧会情報

Noritake Kinashi London Exhibition -moment-

2018年6月21日(木)~24日(日)
11:00-19:00(最終日は17:00まで)
入場無料

(期間中、アーティストの在廊はなし)

Protein
31 New Inn Yard, London EC2A 3EY
最寄駅: Liverpool Street / Old Street / Shoreditch High Street www.kinashiten.com/london.html

木梨憲武展示作品:「 REACH OUT」(一部)2018年

 

BBC プロムス 2018 - ロンドンの夏を飾る音楽フェスティバル

ロンドンの夏を飾る音楽フェスティバル
BBC Proms 2018
7月13日(金)~9月8日(土)

Royal Albert Hall1895年から続く世界最大級の音楽の祭典、プロムス。約8週間の開催期間中、ほぼ連日にわたり、著名な演奏家によるコンサートが楽しめるイベントだ。クラシック音楽を始めとする往年の名曲はもちろん、音楽界の未来を担若き作曲家やミュージシャンによる楽曲や演奏、子供も楽しめるコンサートなど、バラエティーに富んだプログラム構成で毎年多くのファンを生み出している。ジーンズなどカジュアルな服装でも鑑賞できるリラックスした雰囲気、手頃な価格のチケットもあるので、普段あまり音楽を聴く機会のない人にこそ足を運んでみてほい。

見逃せない楽曲が目白押し
2018年注目のプログラム

プロムスでは定番のクラシック音楽に加え、歴史上の出来事にフィーチャーしたアニバーサリー・プログラムが毎年用意される。今年は第一次大戦終結、また英国で女性参政権が認められて2018年注目のプログラム 100年と、様々な分野での記念の年を迎え、多彩なプログラムがラインアップされている。

バーンスタイン生誕100周年

米国を代表する指揮者、作曲家のレナード・バーンスタインは、表現者にとどまらず、教育者としても優れた才能を発揮し、現代の音楽界に大きく貢献した。代表作「ウエスト・サイド・ストーリー」を始め名曲の数々を堪能したい。

Prom 37
Orchestra of the Academy of Santa Cecilia
& Sir Antonio Pappano

Sir Antonio Pappano

バーンスタインの初の交響曲「エレミア」を、ローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団が奏でる。1944年、自身の指揮でピッツバーグ交響楽団によって初演、後に米ニューヨーク音楽批評家サークル賞の最優秀賞を受賞した同作品を、世界的に活躍するアントニオ・パッパーノが指揮をする注目のプログラム。

8月10日(金)19:30
バーンスタイン 「交響曲第1番 『エレミア』」ほか
メゾソプラノ: エリザベス・デション、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団
指揮: アントニオ・パッパーノ

Prom 38&39
West Side Story

ジョン・ウィルソン

1950年代後半の米ニューヨークを舞台に、不良少年グループの抗争に翻弄されるトニーとマリアの悲恋を描いたミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」は、バーンスタインの代表作。トニーに愛された喜びをマリアが歌い上げた「素敵な気持ち」などを、米ミュージカル俳優、ロス・リカイツをトニー役に迎え、プロムス特別版で同日昼夜に2回公演する。

8月11日(土)15:30、20:00
バーンスタイン「ウエスト・サイド・ストーリー」(プロムス特別版)
トニー役: ロス・リカイツ、ジョン・ウィルソン・オーケストラ
指揮: ジョン・ウィルソン

Prom 58
The Sound of an Orchestra

ジョシュア・ワイラースタイン

音楽教育に熱心だったバーンスタインは、米TV番組「オムニバス」で、ベートーベンの「交響曲第5番」の魅力を言葉や歌で視聴者に語りかけた。このときバーンスタインは拡大印刷したスコアの上に立つなど、視覚的にも人々にインパクトを与えた。今回は、そんなユニークなアプローチにインスピレーションを得て、タペストリーや映像を使った演出で曲を演奏する。

8月26日(日)19:30
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: ジョシュア・ワイラースタイン
クリエーティブ・ディレクター: ジェラルド・マクバーニー

Prom 60
Marin Alsop & Baltimore Symphony Orchestra

マリン・オールソップ

バーンスタインに師事し、2013年にプロムス最終夜を指揮した初の女性指揮者、マリン・オールソップが、ボルティモア交響楽団を率いて登場するファン必見のプロム。オールソップの恩師であるバーンスタインが、アゼルバイジャン出身の友人、チェリストのロストロポービチのために作った「スラバ!」が披露される。

8月27日(月)20:00
バーンスタイン 「スラバ!」、ショスタコービチ 「交響曲第5番 ニ短調」 ほか
ピアノ: ジャン=イブ・ティボーデ
ボルティモア交響楽団
指揮: マリン・オールソップ

第一次大戦 終戦100周年記念

サラエボ事件をきっかけに1914年から4年続いた第一次大戦は、将来を期待された音楽家の命を奪い、クラシック界にも多大なダメージを与えた。終戦から100年の節目の今年、当時活躍した作曲家たちの名曲に耳を傾けてみよう。

Prom 1
First Night of the Proms

アンナ・メレディス

100周年にふさわしく、英国の合唱団やオーケストラのみで演奏される、大戦時期に活躍した英作曲家ボーン・ウィリアムズとホルストの名曲で幕を開ける。インターバルの後は、大戦からインスピレーションを受けた芸術家を支援する団体「14-18ナウ」のプロジェクトに参画する、作曲家アンナ・メレディスの「ファイブ・テレグラムス」。音楽を通して世界大戦を掘り下げる、意欲的な構成が光る。

7月13日(金)20:15
ボーン・ウィリアムズ「未知の国へ」、ホルスト「組曲 『惑星』」
アンナ・メレディス「ファイブ・テレグラムス」
英国立ユース合唱団、BBC交響楽団 ほか
指揮: サカリ・オラモ

Prom 17
Parry, Vaughan Williams & Holst

ヒューバート・パリー

プロムス最終夜の曲としておなじみの「エルサレム」の作曲家ヒューバート・パリーは、英国クラシック界の発展に貢献した重鎮であり、ボーン・ウィリアムズとホルストの指導者としても知られる。このプロムでは、ホルストの「死への頌歌」などを始め、英作曲家の名作を深く味わえる。「揚げひばり」の演奏は、習熟した技巧で名を馳せる米バイオリニスト、タイ・マレー。

7月27日(金)19:00
ヒューバート・パリー「交響曲第5番 ロ短調」
ボーン・ウィリアムズ「揚げひばり」 ほか
バイオリン:タイ・マレー
BBC ウェールズ交響楽団 ほか
指揮:マーティン・ブラビンズ

Prom 41
Edward Gardner conducts Elgar & Vaughan Williams

ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、エドワード・ガードナーの指揮で、平和を願ったボーン・ウィリアムズの「われらに平和を与えたまえ」、1918年作曲のエルガーの「チェロ協奏曲」が披露される。また、負傷兵の看護に身を捧げ24歳で夭逝した仏作曲家リリー・ブーランジェの作品など、戦争の影響と平和への思いが色濃く感じられる構成だ。

8月12日(日)20:00
リリー・ブーランジェ「ある兵士の葬儀のために」、エルガー「チェロ協奏曲 ホ短調」 ほか
ソプラノ: ソフィー・べバン
チェロ: ジャン= ギアン・ケラス
BBC交響楽団 ほか
指揮: エドワード・ガードナー

Proms at ...
Cadogan Hall 6:
The Sense of An Ending

プロムス開期中の月曜日のランチ・タイムにカドガン・ホールにて行われる人気のプロムス・アット・シリーズ。ヒューバート・パリーが戦時中に自身の死を意識して作った「告別の歌」や、英詩人、シェリーやロセッティなどの作品にメロディーをつけた英作曲家フランク・ブリッジなどの声楽作品を、英国内で活躍するBBCシンガーズたちが清らかな声で歌い上げる。

8月20日(月)13: 00
フランク・ブリッジ「優しい声がやむとき、楽の音は」、ボーン・ウィリアムズ「休息」 ほか
BBC シンガーズ
指揮: サカリ・オラモ

女性参政権100周年関連

今年は英国で女性が参政権を得て100周年。これを記念して今回のプロムスでは女性音楽家に焦点を当てる。BBCから依頼された8人の作曲家が新曲を披露するほか、音楽界に貢献した女性作曲家の作品を積極的に取り上げる。

Proms at ...
Cadogan Hall 1:
Calidore String Quartet & Javier Perianes

キャロライン・ショー

2013年に史上最年少で、ピューリッツァー賞の音楽部門を受賞した米作曲家、バイオリニストのキャロライン・ショーの代表曲が演奏される。ショーは米シンガーのカニエ・ウエストとのコラボレーションや、映画のサウンドトラック制作など、幅広いジャンルで活躍する話題の人物。演奏は、米ニューヨークを拠点に国際的に活躍するカリドール・ストリング・カルテットが、プロムス・デビューを果たす。

7月16日(月)13:00
キャロライン・ショー「セカンド・エッセイ: エコー」
「サード・エッセイ: ルビー」 シューマン「ピアノ五重奏曲 変ホ長調作品44」
アンサンブル:カリドール・ストリング・カルテット
ピアノ:ハビエル・ぺリアネス

Proms at ...
Cadogan Hall 7:
Bernstein on Broadway and Beyond

ブシュラ・エル=トゥルク

BBCが選ぶ「世界で影響力のある女性100人」に選ばれたブシュラ・エル=トゥルクは、オペラなど正統派の音楽を手掛ける一方で、自身のルーツであるレバノン音楽も取り入れることで知られる英作曲家。料理のレシピのテキストにメロディーをつけた、バーンスタインのユニークな歌曲集「おいしい料理法」とともに、エル=トゥルクの新曲「クリーム・ブリュレ・オン・ア・ツリー」が披露される。

8月27日(月)13:00
ブシュラ・エル=トゥルク「クリーム・ブリュレ・オン・ア・ツリー」
メゾソプラノ:ワリス・ジウンタ
ピアノ:イアイン・ファーリントン ほか

王道のクラシックも忘れずに
おさえておきたい大御所作曲家

ユニークで多彩なプログラムがラインアップされているとはいえ、世界最大級の音楽祭であるプロムスにおいて、バッハやベートーベンなど王道のプロムはやはり外せない。世界有数おさえておきたい大御所作曲家の音楽家たちが演奏する不朽の名曲を堪能したい。

バッハ

「ブランデンブルク・プロジェクト」と銘打ち、6曲から構成されるバッハの代表的な合奏協奏曲「ブランデンブルク協奏曲」を、2つのプログラムにわたって一挙に演奏。また、それぞれの曲をモチーフに、新進気鋭の現代作曲家が書き下ろした新曲もともに披露される。プロムス63ではバッハ演奏の名手、ピアニストのアンドラーシュ・シフの円熟した技が見もの。

アンドラーシュ・シフ

Prom 29
Brandenburg Concertos Project – 1

8月5日(日)15:00
バッハ「ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調」
「ブランデンブルク協奏曲第3番 ト長調」ほか
バイオリン: ペッカ・クーシスト
スウェーデン室内管弦楽団 ほか
指揮: トーマス・ダウスゴー

Prom 30
Brandenburg Concertos Project – 2

8月5日(日)19:30
バッハ「ブランデンブルク協奏曲第4番 ト長調」
「ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調」ほか
バイオリン: アンティエ・バイトハース
スウェーデン室内管弦楽団 ほか
指揮: トーマス・ダウスゴー

Prom 63
Sir András Schiff plays 'The Well
- Tempered Clavier' (Book 2)

8月29日(水)21:00
バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第2巻」
ピアノ:アンドラーシュ・シフ

ベートーベン

来年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任予定のキリル・ペトレンコが指揮者を務め、同楽団とともにベートーベンの「交響曲第7番 イ長調」 を演奏するプロムス68は、ファン垂涎のプログラムだ。今をときめくペトレンコによる極上の音色を堪能したい。また、「運命」でおなじみの「交響曲第5番」が披露される、プロムス18も見逃せない。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

Prom 18
Currentzis conducts Beethoven

7月28日(土)19:30
ベートーベン「交響曲第2番 ニ長調」、「交響曲第5番 ハ短調」
ムジカエテルナ
指揮:テオドール・クルレンツィス

Prom 68
Berlin Philharmonic & Kirill Petrenko (II)

9月2日(日)20:00
シュトラウス「交響詩『ドン・ファン』」、「交響詩『死と変容』」
ベートーベン「交響曲第7番 イ長調」
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮: キリル・ペトレンコ

マーラー

プロムス54では、数あるマーラーの作品の中でも軽快なリズムと伸びやかな旋律で愛される「交響曲第4番 ト長調」をブダペスト祝祭管弦楽団が演奏。指揮は同楽団の創立当時から音楽監督を務め、近年は作曲家としても注目を浴びているイバン・フィッシャー。プロムス11では、その規模の大きさから「千人の交響曲」と呼ばれる「交響曲第8番」が披露される。

モリス・ロビンソン

Prom 11
Mahler Symphony of a Thousand

7月22日(日)19:00
マーラー「交響曲第8番 変ホ長調『千人の交響曲』」
バス:モリス・ロビンソン、BBC ウェールズ交響楽団 ほか
指揮:トーマス・ソンダーゴード

Prom 54
Iván Fischer & Budapest Festival Orchestra (I)

8月22日(水)19:30
ベーラ・バルトーク「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」
マーラー「交響曲第4番 ト長調」 ほか
ソプラノ:アンナ・ルシア・リヒター
ブダペスト祝祭管弦楽団
指揮:イバン・フィッシャー

ブラームス

今年の目玉はプロム33の、オーケストラと合唱、ソプラノとバリトンの独唱からなる「ドイツ・レクイエム」。ソプラノを務める南アフリカ出身のオペラ歌手、ゴルダ・シュルツの美しい歌声に注目したい。プロム55では、ブラームスがハンガリーの民族舞曲を基に編曲した「ハンガリー舞曲第1番 ト短調」を、ブダペスト出身の鬼才イバン・フィッシャーが指揮する。

イバン・フィッシャー

Prom 33
Brahms's A German Requiem

8月7日(火)19:30
シア・マスグレイブ「フェニックス・ライジング」
ブラームス「ドイツ・レクイエム」
ソプラノ:ゴルダ・シュルツ
BBC交響楽団 ほか
指揮:リチャード・ファーンズ

Prom 55
Iván Fischer & Budapest Festival Orchestra (II)

8月23日(木)19:30
リスト「ハンガリー狂詩曲第1番 嬰ハ短調」
ブラームス「ハンガリー舞曲第1番 ト短調」
バイオリン:ヨージェフ・レンドバイ(シニア)、ヨージェフ・ レンドバイ(ジュニア)
ブダペスト祝祭管弦楽団
指揮:イバン・フィッシャー

自分に合う方法で音楽を堪能しよう
シチュエーション別 楽しみ方3選

お子さんがいる家族連れや、夏の宵を美しい音楽と過ごしたい人、また将来を期待される若手音楽家の演奏を聴いてみたい人に、普通のクラシック鑑賞とはひと味違うプロムスの楽しみ方をご紹介しよう。

ファミリー向け

Prom 59
Relaxed Prom

リラックス・プロム

小さなお子さんがいるクラシック・ファンもストレス・フリーで楽しめる「リラックス・プロム」。静かに音楽鑑賞するのが難しい子供たちや身体に障害のある人も、会場のスクリーンや音声、手話により、音楽を楽しめる演出になっている。バーンスタインやホルストが演奏されるほか、障害を持つ音楽家で構成されるアンサンブル、BSOリサウンドも出演する。

8月27日(月)16:15
プレゼンター: ジェームズ・レッドウッド
BSOリサウンド、ボーンマス交響楽団
指揮: シャーン・エドワーズ、ジェームズ・ローズ

レイト・ナイト

Prom 65a
Youssou Ndour & Le Super Étoile de Dakar

ユッスー・ンドゥール

ディナーの後に贅沢な時間楽しみたいーー、そんな人にぴったりのプログラムが21時30分以降の「レイト・ナイト・プロムス」。注目はグラミー賞受賞経験のあるワールド・ミュージックの大御所、ユッスー・ンドゥール。故郷セネガルの伝統音楽に多様なジャンルを融合させた軽やかなスタイルが特徴で、かつて坂本龍一とのコラボや自動車のCMへの起用などがあり、意外にも日本と縁の深い人物でもある。

8月31日(金)22:15
ユッスー・ンドゥール & シュペール・エトワール・ドゥ・ダカール

ヤング・ジェネレーション

Prom 3
BBC Young Musician 40th Anniversary

シェク・カネー=メイソン

BBCが主催する、才能ある若手音楽家を選ぶコンペティション「BBC ヤング・ミュージシャン」が40周年を迎えるに当たり、今年の覇者、ピアニストのローレン・チャンを始め歴代の優勝者やファイナリストなど、今をときめく若手が集結。5月にハリー王子とメーガン妃の結婚式で演奏者の一人に抜擢された、19歳のチェリストのシェク・カネー=メイソンも出演する。

7月15日(日)19:00
カミーユ・サン=サーンス「動物の謝肉祭」、ラベル「ツィガーヌ」 ほか
チェロ:シェク・カネー= メイソン
バイオリン:ニコラ・ベネデッティ
ピアニスト:ローレン・チャン ほか

心を一つに大合唱!
プロムス最終夜

プロムスのフィナーレを飾るのは、ロイヤル・アルバート・ホールとハイド・パークで開催される屋内外コンサート。特にホール内では、「ルール・ブリタニア」「エルサレム」「威風堂々」など、英国人におなじみの曲が演奏され、多くの国旗がはためくなか、観客は隣の人と手を取り合い大合唱。興奮と熱気に満ちたエネルギッシュな時間は、一生忘れられない体験となるだろう。一方ハイド・パークでは、メイン会場で行われているラスト・ナイトの様子を、野外の巨大スクリーンで楽しむことができる。

Prom 75
Last Night of the Proms 2018

プロムスのラスト・ナイト

9月8日(土)19:15
ロクサンナ・パヌフニク「ソングス・オブ・ダークネス、ドリームズ・オブ・ライト」
ヘンリー・ウッド「イギリスの海の歌による幻想曲」
エルガー「威風堂々第1番 ニ長調」
ヒューバート・パリー「エルサレム」 ほか
サックス:ジェス・ジラン
BBC交響楽団 ほか
指揮:アンドルー・デービス

Proms in the Park, Hyde Park

9月8日(土)17:00
プレゼンター: マイケル・ボール
BBCコンサート・オーケストラ
指揮:リチャード・バルコム

チケット購入方法

当日立ち見席は6ポンド、通常のチケットも7.50ポンドから(最高100ポンド)と比較的安価に一流の音楽を聴くチャンスとあって、人気プロムのチケット争奪戦は熾烈を極めることも。購入方法を事前に確認した上で、効率的にチケットをゲットしよう。

前売券の買い方

  • ボックス・オフィスで
    直接予約

    Box Office(ドア12)
    The Royal Albert Hall
    Kensington Gore, London SW7 2AP
    受付時間: 9:00-21:00
  • 電話で予約
    Tel: 0845 401 5040
    受付時間: 9:00-21:00
  • ウェブサイトで予約
    ロイヤル・アルバート・ホールのウェブサイト より購入可能。
    www.royalalberthall.com

当日券の買い方

通常、500席以上のアリーナ席(ステージ前の立見席)とギャラリー席(天井桟敷の立見席)が当日、6ポンドで販売される(現金またはコンタクトレス・ペイメント・カード)。開演1時間前(レイト・ナイト・プロムスは30分前)に販売開始となるが、通常、一部アリーナ席は午後の早い段階で売り出される。また、少数のアリーナ席及びギャラリー席はネット上でも購入可能。夜のプロム及びレイト・ナイト・プロムスのチケットは一部を除き、当日の朝9時から午後12時までの間、一人1枚購入できる。なお、チケット料金の2%の手数料プラス1ポンドが加算されるので要注意。

ラスト・ナイトのチケットの買い方

抽選オープン・バロット

「オープン・バロット」ではセンター・ストールズ席(90ポンド)が100席、フロント・サークル席(62ポンド)が100席、売り出される。公式ウェブサイトのリンクからダウンロード、または電話(0207765 2044)して郵送にて取り寄せた上、必要事項を記入して右記住所へ郵送する。6月28日(木)必着。
BBC Proms Open Ballot 
Box Office Royal Albert Hall, London SW7 2AP

当日券当日券を購入する

そのほかのプロム同様、ラスト・ナイトの当日券も基本的にすべて立見席となる。例年、長蛇の列ができることで知られており、購入場所は通常の当日券とは異なる可能性もあるので、当日は早めに到着し、スタッフの誘導に従って並ぼう。

一般販売

もしチケットが残っていた場合には、7月6日(金)朝9時に発売する。なお、電話またはオンラインによる購入のみ。

会場情報

Royal Albert Hall
Kensington Gore, London SW7 2AP

Hyde Park
London W2 2UH

このほか、Cadogan HallやImperial College Unionなどでも開催される。チケット購入方法や 会場情報の詳細については、プロムスの公式ウェブサイトを参照のこと。

 
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