ニュースダイジェストの制作業務
Mon, 15 December 2025

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英国各地を襲った暴風雨

The Times
「タイムズ」紙 1月8日

洪水対策強化で修復費は節約

気象庁によると、英国は先月に1969年以来の強風、93年以来の降水量、53年以来の高波に見舞われた。さらに過去2日間では、4階建ての高さに相当する高波が見物客たちを襲い、一部の海岸線の姿さえ変えてしまった。気候変動に関する政治的な議論へと脱線する必要はない。2015~21年における護岸や氾濫(はんらん)原の管理予算は実質ベースで凍結となっているが、こうした予算に資金を投入すればするほど、洪水被害の復旧工事にかかる費用は節約できるのである。


The Daily Telegraph
「デーリー・テレグラフ」紙 1月5日

地域の民間機関も貢献すべき

氾濫原に多くの家が建てられているようになった現代では、浸水に関して我々はかつてないほど高い危険にさらされている。新規住宅の需要を鑑みれば、氾濫原への住宅建設の全面的禁止は非現実的だとする識者の声もある。だからこそ、洪水に対する対策が必要とされるのだ。経済が回復するに伴い、インフラ整備費を増額する意向を政府は示しているが、この費用は国民の税金のみで負担すべきものではない。地方政府や地域の民間機関も貢献を果たすべきである。


The Guardian
「ガーディアン」紙 1月8日

洪水対策は絶対不可欠な支出

過去数週間に英国を襲った暴風雨は、真新しいものでもなければ、予期できないような代物であったわけでもない。今や異常気象は一般的な事象となりつつある。仮にこうした異常気象と気候変動との関係性がないとしても、舗装された路面や集約農業、氾濫原への建物の建設といったものが洪水の危険性を高めている。私たちは、そんな世界に生きているのだ。政府は洪水対策を任意の支出として見なすのではなく、絶対不可欠なものとして肝に銘ずるべきである。


 

南アフリカのネルソン・ マンデラ元大統領死去

The Times
「タイムズ」紙 12月6日

ガンジーに匹敵する影響力

マンデラ氏は4000万人ものアフリカの人々を恐るべき抑圧から解放した。また彼は、世界中のあらゆる世代の人々を、アフリカの苦闘を自身の問題として受け止めようという気にさせた。言わば、彼はこの世界をより身近な場所へと変えたと同時に、可能性を広げてみせたのである。彼の政治的リーダーシップがアフリカに与えた影響は、ガンジーがインド亜大陸に与えたものと匹敵する。そして道徳面における世界への影響力は、ガンジーよりも大きいかもしれない。


The Guardian
「ガーディアン」紙 12月6日

珍しく汚点のない人物

非植民地化運動を率いる指導者たちには、勇敢かつ先見の明がありながら、虚栄心が強く、腐敗し、無能または公約を守ることのできない者が多くいた。しかし、生来の性格と一連の出来事によって、マンデラ氏は珍しく汚点のない人物となった。彼のリーダーシップの下で生きた南アフリカの黒人住民などは幸運だが、白人住民は幸運の一言で片付けることはできないだろう。彼らはマンデラ氏をきちんと評価できなかった。そんな彼らでさえマンデラ氏は許したのである。


The Independent
「インディペンデント」紙 12月6日

ビスマルクの鉄血演説は誤り

人間は巨悪をつくり出す一方で、克服できない悪はないことを証明するような人々を輩出する。血塗られた20世紀において、マンデラ氏ほど卓越しており、記憶に残る人物はいない。これまで様々な人種間の分裂が惨事を引き起こしてきたが、マンデラ氏はそうした状況を平和的に解決できることを示した。そして統一ドイツ首相のビスマルクが残した「大きな問題の解決は鉄と血によってのみなされる」という言説が誤りであることを証明したのである。


 

中国による尖閣上空への防空識別圏設定

The Times
「タイムズ」紙 11月29日

中国への対応には巧妙さが必要

中国が筋肉をほぐしただけで、世界全体がうごめきを感じてしまう。中国政府が東シナ海上の空域に防空識別圏を設定したことで、国際紛争の危険性が高まり、アジア地域の軍拡競争が引き起こされる可能性がある。日本は既に自衛隊としての制限を超えて戦艦や戦闘機の配備に予算を割いているが、中国と対峙できるほどの規模ではなく、日中間に冷戦時のような有事用の連絡網があるわけでもない。だから中国の行動を抑止するためには巧妙さが求められるのだ。


The Guardian
「ガーディアン」紙 11月27日

日中は実際的な対話をすべき

中国は、日本が尖閣諸島を国有化すると決意したことで事態が変化したと主張している。だが日本の国粋主義者たちの示威行為に利用されるのを防止するために同措置が取られたことまでは中国は認めたがらない。昨年には台湾と日本が双方に利益をもたらすことを目的とした漁業に関する取り決めを結んだ。これは北海の権益をめぐって取られた仕組みであり、この種の紛争を解決する唯一の合理的な方法だ。日中は実際的な対話を始めるべきである。


The Independent
「インディペンデント」紙 11月27日

オバマ米大統領にとっても試練

中国による防空識別圏設定を受けて重要となるのが米国の対応である。まず米国が日本の領土を防衛する義務が戦後に定められている。これに加えてアジアに軸足を置こうとする米国の外交政策上の意味合いにおいても、オバマ大統領にとっては試練となり得るのだ。安倍首相は時折、不快感を催させるほどに国粋主義的な傾向を見せる。米国は地域の安定を維持することに努めると同時に、こうした国粋主義的な姿勢を支援しないよう留意しなければならない。


 

チャールズ皇太子が65歳に

The Daily Telegraph
プレイボーイよりずっと良い

チャールズ皇太子のいくつかの行為が不当な政治的干渉だと批判されている。だがそうした行為は、彼が非公式に表現することが許されている個人的な感情の深さを示しているのだ。怠惰で無関心なプレイボーイのような生活を送るよりも、ずっと良いではないか。現代の英国において、65歳はもはや年寄りとは見なされない。そのことを十分に承知した上で、皇太子は誕生日を祝うことができる。我々国民だって、彼がもうじき隠居すると思ってなどいやしない。(11月14日)


The Guardian
皇太子は王室運動家になった

エリザベス女王は慣習にこだわり、論争から距離を置くことで、変わりゆく英国を生き抜いてきた。後継者も同様に振る舞うべきだ。だがチャールズ皇太子は「王室運動家」とでも呼ぶべき存在となった。チャールズ皇太子が王位に就くことで選挙手続きを経ない政治運動を組み込んだ君主制が実現すれば変革が起きることになるのだから、「王室運動家」の是非をめぐっては大きな選択が必要となる。その選択を行うのは皇太子ではなく、我々であり、議会であり、政府なのだ。(11月14日)


The Daily Mail
皇太子の健康と幸福を祈る

過去数十年間で、チャールズ皇太子は英国の国民たちとの関係において大きな浮き沈みを経験した。だが熟年期における彼に対して尊敬の念を覚えるのは本紙だけではないだろう。最初の結婚で経験したトラブルは、もう既に過去のものである。英国民はカミラ夫人を受け入れた。「偏屈」と形容されてきた環境、英語、伝統などに関する彼の政治的見解は今や現実化してきており、また彼の慈善事業は称賛されるべきである。65回目の誕生日を祝して、皇太子の健康と幸福を祈る。(11月14日)

 

原子力発電所の新設

The Financial times
費用と環境どちらを選ぶか

新規原発を建設しなければ停電に陥るというが、それは英国が二酸化炭素排出量を削減しようとそのほかの発電方法を選択肢から除外したためである。新規原発建設にかかる費用が明らかになった今、政策立案者たちは改めて二酸化炭素排出量の削減目標を維持する意味を説明しなければならない。もしそれができないのであれば、方針を変更すべきだ。今さら方針を変換するのがみっともないというだけで、英国は支払い不可能な借金を背負ってはならない。(10月22日)


The Times
原発は圧倒的に安全な技術

原発は、二酸化炭素の排出規制に適応する発電技術としては最も安価なものである。福島第1原子力発電所での事故直後にドイツが原発撤退を決定した例が象徴するように、原発に対して世論は移り気な一方で、参加企業は長期的に資本を投下することになるのだから、政府による保証は必要だ。しかも原発とは厳しく規制された、圧倒的な安全性を誇る技術である。新規原発建設は良きニュースであり、むしろもっと早いタイミングで進めるべき計画だった。(10月22日)


The Guardian
税金の無駄遣いの意義とは

デイビー・エネルギー気候変動相は、新規原発が発電する電力を価格保証することで結果的に総費用は安くなると主張する。しかし実際には政府がお金を調達し、ヒンクリー・ポイント発電所自体を再建した方が安い。また「民間企業の方が優秀」というのが売り文句のようだが、価格や安全規制などで世界中のすべての原発建設には政府が関わっている。フランスと中国が保有する民間企業への委託を通じて発生する税金の無駄遣いの意義が判明するのは数十年後だろう。(10月22日)

 

ヒッグス教授のノーベル物理学賞受賞

The Times
今はまだ実用性がないとしても

ヒッグス氏の研究が実生活に応用される日がいつか来るとしても、それは遠い未来であろう。だが相対性理論を唱えたとき、アイ ンシュタインはGPS技術へ応用されるなど思いもしなかった。さらにはマクスウェルが電磁気学の方程式を導き出したとき、ラジオ・通信技術に応用できるとは夢にも思わなかっただろう。1964年に提唱した自身の理論を通じて、ヒッグス氏は科学本来の目的は宇宙についての理解を高めることにあると示してみせたのだ。(10月9日)


The Daily Telegraph
姿をくらますのが上手い

ノーベル賞の受賞が決定した際に、メディアの過熱取材から逃れようと携帯電話も持たずに旅行へ出掛けてしまうのがいかにもヒッグス氏らしい。そしてメディア対応の機会は、カメラに向かって穏やかなポーズを取ってみせた共同受賞者のフランソワ・アングレール氏に譲ったのである。ヒッグス粒子は、欧州合同原子核研究所の加速器で陽子同士を衝突させることで2012年にやっと発見できた。そんなヒッグス粒子と同じくらい、ヒッグス氏は姿をくらますのが上手い。(10月8日)


The Independent
ノーベル賞受賞に相応しい

初心者にとっては、ヒッグス粒子やヒッグス機構という単語が意味するところを理解するのは容易ではない。しかし、ヒッグス粒子 がなければ宇宙が存在し得ないという点は理解できるのではないか。ヒッグス粒子が発見されるまでは、現代素粒子物理学の根幹を成す標準理論に空白が存在していたのである。ヒッグス教授と共同研究者たちのお陰でその空白は埋まった。この宇宙の混乱に秩序をもたらしたヒッグス教授は、やはりノーベル賞受賞に相応しい。(10月8日)

 

労働党のガス・電気料金 凍結政策

The Times
願いごとをするだけでは不十分

世界をより良いものとするためには、願いごとをするだけでは不十分だ。ミリバンド党首は、市場がいかに機能しているかを理解できていないようである。彼はガス・電気会社が不当利益を得ていると考えているようだが、これらの会社の利ざやは微々たるもので、しかも彼らが料金を決めているわけではない。また英国におけるエネルギー料金は欧州では最も安く、光熱費が高いのは我が国が主にセントラル・ヒーティング方式を採用するなどしているからだ。(9月26日)


The Guardian
選挙の争点となればなお良い

ミリバンド党首は与え得る実質的な影響力と、票を稼ぐための象徴という意味において、政治的に意義深い声明を出した。2015年から17年までガス・電気料金を凍結するというその内容は、生活費の上昇と企業による不当利益という、同党首が国家的な危機と判断した問題のまさに根幹をえぐるものであった。エネルギー市場の歪みと対峙するための正しい政治的取り組みであり、今回の彼の発言によって公共料金のあり方が選挙の争点となればさらに良い。(9月24日)


The Independent
どうやって実現するというのか

生活費と既得権益という2つの問題への解決策を組み合わせた「ガス・電気料金の凍結」という提言は見事というほかない。この公約は人気を集めるであろう。また電気料金については厳しい対応を取ろうとしている連立政権からお株を奪うという意味で、政治的にも賢明な行動である。だが、電力会社に対して料金の値下げを強いると同時に投資を継続するようどうやって求めていくというのか。言うは易しだが、いかに実現しようとしているのかが分からない。(9月24日)

 

BBC役員の高額退職金問題

The Times
ライセンス料を減額すれば良い

BBCは出色の才能をそろえ、一流の番組を生む優れた公共企業だが、巨額な資金を蓄えているのが問題だ。しかもそれが国民から搾取した公金であるにも関わらず、正しく使われていない。改革案は山ほどあるが、最も簡単で効果的なのはライセンス料を半額程度に下げることだ。贅肉を落としたBBCが、番組制作という本来の仕事に集中し、良質な番組の提供という形で公金を国民に還元するようになれば、上層部の過度な行いはめでたく終焉を迎えるだろう。(9月11日)


The Guardian
保身に走る醜い争いでしかない

下院の公共会計委員会でのBBC元上層部や監督機関であるBBCトラストのトップらによる口論は、各々が必死で保身に走る醜い争いでしかなかった。トラストが何を知っていたか、そして今回の問題においてトラスト側が果たすべきだった公的な役割が果たして何だったのかが分かりにくい。議員の関与によってトラストはより強大になるだろう。だが度を越してはならない。BBCの大多数の社員は高い倫理基準を順守し、素晴らしい番組をつくり続けているのだから。(9月10日)


The Daily Telegraph
高額退職金問題は氷山の一角

BBCのヒエラルキーは、才能ではなくエゴに相応した報酬を与え合う特権的なクラブに属する役員たちと、特有のルールによって形成されているようだ。これは堕落した個人のみならず、経営文化全体の問題だ。BBCは国民からのライセンス料で年間37億ポンドを得ている。これが巨大な上部構造を支え、しかもそこに属する役員たちは番組制作事業からひどく離れた場所にいるのだ。この問題は根深く、変革には内部だけでなく外部からの圧力が必要となろう。(9月10日)

 

シリアへの軍事介入

The Times
化学兵器使用は不問にできない

今の英国には軍国主義的な雰囲気などかけらもない。多くの人々は、中東での紛争にはもう巻き込まれたくないと思っている。だから好戦的であるとして政府閣僚を非難するのは間違いだ。むしろ本紙は、シリアで起きている絶望的な現実に直面することを世界が避けてきたと考える。10万人以上が殺され、何百万人もの難民を生み出し、近隣諸国が不安定化するのをただ見守ることを国際社会は選んだのだ。だが、化学兵器の使用を不問に付すことはできない。(8月28日)


The Guardian
英国の政治への評価にも危険が

イラク戦争から10年が経過した今、英国によるシリア問題への介入に国民が懐疑的になるのは当然だ。ブレア元首相はイラクへの介入で議会を説得できたかもしれないが、やがて議会の信用を失った。イラク戦争を通じて英国の政治は著しく傷付いたのだ。政治家や議会関連機関が軽蔑の対象となったのはイラク戦争以後と言っていいだろう。キャメロン首相はシリア問題に介入することで、自身だけではなく、英国の政治への評価をも危険にさらしているのだ。(8月27日)


The Independent
以前にも似た経験をした

以前にも似た経験をしたことがあったではないか。西洋諸国の首脳は、国際連合による調査を待たず、ロシアと中国を話し合いの場に本気で参画させようともしないままで新たな冒険に出たいとの誘惑に屈してしまうのか。キャメロン首相がイラク戦争から教訓を得て、そして生かすと信じたい。その教訓とは、国連による調査の結果を待ち、国際社会の合意を得るように努め、中東地域への影響を考慮し、軍の幹部の意見や世論に耳を傾けよ、というものである。(8月27日)

 

ゼロ・アワー契約

The Financial Times
景気回復時の状況を注視せよ

ケーブル・ビジネス・改革・技術相は、雇用者と被雇用者の双方に利便性を提供し得るゼロ・アワー契約を禁止すべきではない。そして政府閣僚は、経済が活性化した際にゼロ・アワー契約がどうなるか注視すべきだ。景気が上向けば、柔軟性のある雇用形態は減少するはずだからである。逆に景気が回復しても増加するのであれば、英国の労働力は柔軟性を増すということを意味する。その際の労働力分配と生産性の変化が生み出す結果は無視できないはずだ。(8月1日)


The Independent
症状ではあるが原因ではない

書類上では、ゼロ・アワー契約をめぐって様々な形で議論することができる。だが問題点はこの雇用形態そのものにあるのではなく、そうした契約がなぜ、そしてどのように利用されているかだ。代表的な例を挙げれば、社会医療の分野がゼロ・アワー契約に依存している。政府の財政的支援があまりに乏しいことが理由であり、社会が高齢化するにつれて状況は悪化する一方だ。つまり極端に柔軟性のある雇用契約は言わば症状として現れたものであって、原因ではない。(8月5日)


The Daily Telegraph
教育の改善の方が効果はある

必然的とも言えるのだが、ゼロ・アワー契約をめぐって左翼陣営がいきり立っている。しかし、ゼロ・アワー契約自体に罪はない。多くの人々にとって、雇用形態としては不安定となりがちな非熟練労働を選ぶ理由の一つが、技能労働者となるための訓練が欠けているということだ。そしてこの問題を解決するに当たっては、融通が利かなくなることで結局は労働者たちから仕事を奪ってしまう雇用保護規制よりも、教育を改善することの方がずっと効果がある。(8月6日)

 
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