ワイルド・ガーリック
Wild Garlic
ロックダウン中の英国での楽しみの一つが、散歩やジョギング、サイクリングという人は少なくないでしょう。私もその一人。普段は家の周囲をジョギングするだけでしたが、週末は、家族そろって、歩いて25分ほどのところにある林に出掛けてきました。
そこに咲いていたのはブルーベル。辺り一面にまるで青い霧がかかったような幻想的な光景です。去年の春は、この場所にこんなにもたくさんのブルーベルがあるとは気付きませんでした。排気ガスの減少や人々が踏み荒すことが減ったせいで開花が増えたのでしょうか。
そして、その同じ場所には、やはり以前は気付かなかった、白い星のような花をつけたワイルド・ガーリックがうっそうと茂っています。そういえば、英国では、なぜかブルーベルの咲くところにはこのワイルド・ガーリックがセットのようにして育っているのです。
ワイルド・ガーリックを初めて知ったのは、料理上手の隣人、アリソンのところでいただいたスパゲティでした。ニンニクのおいしい匂いが充満するキッチンで見せてくれたのが、瓶詰めになった緑色のペスト。バジルの葉に松の実、オリーブ・オイルなどを加えてペースト状にしたジェノベーゼ・ソースを英国ではペストと呼びます。それをバジルの代わりにワイルド・ガーリックを使って作ったのが、この日、アリソンがごちそうしてくれたものでした。
「この時期にブルーベルを見に行くと、たいていこれが育っているから、少しもらってきて、いつもこれを作っておくのよ。匂いは強いけれど、二人で一緒に食べれば大丈夫よね」
大丈夫どころか、あまりのおいしさに、最初はちょっと多すぎると思った量のスパゲティをあっという間に食べてしまいました。
さて、ワイルド・ガーリックなど、野にある食用植物などを採集することは「フォラジング」(Foraging)といいます。最近では、野生植物への関心の高まりもあってか、テレビ番組や雑誌などでも、フォラジングの紹介を見かけることが増えてきました。今の季節ならワイルド・ガーリック以外にネトルやエルダーフラワーなども採集できますね。
「クマのリーク」または「クマのニンニク」といった別名で呼ばれることもあるワイルド・ガーリック。いつ頃から英国で育成し、食用にされてきたのか、明確な時代は分かっていないようです。もしかして、英国の古代林にヒグマが住んでいたと言われる時代からこの植物が育っていたのだとすると、歴史はかなり長そうです。
ワイルド・ガーリック・ペストの作り方
(2〜3人分)
材料
- ワイルド・ガーリック...100g
- パルメザン・チーズ...50g
- 松の実...50g
- オリーブ・オイル...大さじ2~3
- レモン果汁...適量
- 塩・コショウ...適量
作り方
- ワイルド・ガーリック、パルメザン・チーズ、松の実、オリーブ・オイルをフード・プロセッサーに入れて混ぜる。
- ❶にレモン汁、塩・コショウを加え、よく混ぜて味見をし、味を調整する。好みでオリーブ・オイルをさらに加えても。
- ❷を茹でたパスタに加えて召し上がれ。
memo
ワイルド・ガーリックをフォラジングする場合には、球根ごと抜かずに、必要な分だけを採集し、周囲の野生植物や生態系に破損を与えないように気を付けてください。また、ペストにする以外にも、餃子に入れたり、野菜炒めやオムレツに入れたりと、日本のニラの代わりとしても使えます。白い花も食べることができます。