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Thu, 21 November 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 109

クイーン・オブ・プディングス
Queen of Puddings

Queen of Puddings

「プディングの女王」という、聞くだけでスペシャル感のあるクイーン・オブ・プディングスをいただいたのは、ランチに招かれた友人Cの家でした。メイン・コースのお皿を下げ終えたCが、キッチンからこのデザートを運んで来たときには、私だけでなく、テーブルについていた他の2人からも「ワォ!」という声が上がりました。

一見すると、ほんのりベージュ色に焼き上がって、つんつんとツノの立ったメレンゲが、確かにティアラか王冠のようにも見えます。Cが大きなサービング・スプーンで一人ずつ取り分けながら教えてくれた中身は、メレンゲの下にたっぷりのラズベリー・ジャム、そして、そのさらに下にあるスポンジ状の生地はパン粉とミルクと卵を混ぜたもの。材料だけを聞くといたってシンプルですが、見た目は名前に負けず豪華です。そのためか、英国では、同じく表面がメレンゲで覆われたレモン・メレンゲ・パイと同様に、お客さまを招いたときのデザートとして選ばれることが多いのだとか。

取り分けてもらったクイーン・オブ・プディングスは形が崩れてしまって、イートン・メスに負けないほど(?)ぐちゃぐちゃになっています。でも、なんだかそれも英国らしい気がします。ところで肝心の味はどんなでしょう。早速スプーンですくって口に入れてみました。ジャムのフルーティーな甘さが程よく絡んだカスタード味のスポンジと、それを覆うメレンゲ。全部が一緒にふわりとのどを通っていき、女王の名にふさわしいおいしさです。

個人的な好みですが、このデザートにはコーヒーか、ミルクを入れない紅茶が合うような気がしました。

さて、名前から、王室に関係するメニューかと思いがちですが、特にロイヤル・ファミリーに由来しているという文献は見つかっていません。

「ザ・ダイナーズ・ディクショナリー」という書物によれば、クイーン・オブ・プディングスという名前のレシピが文献に見つかるのは、1903年発行、ヘレン・キャンベルによる「イージエスト・ウエイ・イン・ハウスキーピング・アンド・クッキング」が最初だと言います。そうなると、それほど長い伝統があるデザートではないような気もしますが、1865年出版のプディングを集めた料理書には「クイーンズ・プディング」の名前で、そっくりのレシピが登場しています(ただし、使われているのはラズベリーではなく、杏のジャム)。そうなると、少なくとも150年の歴史はありそうです。

ちなみに、英国の「キング・オブ・プディングス」はないのか探してみたのですが、残念ながら見当たりませんでした。

クイーン・オブ・プディングスの作り方
(1.5リットル容量の楕円型耐熱皿1個分)

材料

  • パン粉(日本のパン粉ではなく、普通のパンをフード・プロセッサーなどで細かくしたもの) ... 115g
  • カスター・シュガー ... 115g
  • バター ... 大さじ2
  • 牛乳 ... 600ml
  • レモン ... 1個
  • 卵 ... 3個
  • ラズベリー・ジャム ... 適量

作り方

  1. バターと牛乳を鍋に入れ、弱火で温める。
  2. ❶にパン粉と大さじ1杯分のカスター・シュガー、レモンの皮のすりおろしを入れてよく混ぜる。
  3. ❷を15分ほど冷ましてから、卵黄を入れてよく混ぜる。
  4. ベーキング皿に❸を流し入れて、表面を平らにし、180℃に予熱したオーブンで30分ほど焼く。
  5. ❹の上からラズベリー・ジャムを全体に塗る。
  6. ボウルに卵白を入れてハンド・ミキサーでよく混ぜ、徐々に残りのカスター・シュガーを加えて、ツノが立つまで泡立てる。
  7. ❻を❺の上全体を覆うようにのせる。表面にツノが立つようにすると、出来上がりがきれいに。
  8. オーブンで10~15分焼き、表面が薄いベージュになれば出来上がり。
memo

ココット皿に1人分ずつ分けて作るレシピもありますが、一つの大きな耐熱皿で作ると、テーブルに登場したときのインパクトがあります。ただし、本文中でも触れたように、取り分けたときのビジュアルはインスタ映えしないので、写真を撮るのはその前に!

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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