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Thu, 21 November 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 30

バンガーズ・アンド・マッシュ
Bangers and Mash

Bangers and Mash

「バンガーズ・アンド・マッシュ」って何? と思った方も、「ソーセージ・アンド・マッシュ」といえば、すぐに何のことかお分かりでしょう。英国パブ料理の定番としてもよく知られるこのメニューは、マッシュ・ポテトにこんがり焼いたソーセージを載せて、上からグレービーをかけたもの。安価でお腹がいっぱいになるという理由で、庶民的な食事の代表のようにも言われる一品です。

「バンガーズ」と呼ぶのは、ソーセージを焼いたときに出る音が爆竹(bangers)に似ているから、と言われています。最初にソーセージをこう呼んだのはオーストラリアの人々という説があったり、第一次大戦時の英国という説もあるそうですが、正確な出自は明らかではないよう。

ところで、ソーセージは歴史上最も古い加工食品ともされており、古代から既に食されていました。英国にもローマ帝国支配時にその作り方が伝えられたと言われています。

その後、ソーセージが大量生産されるようになったのが19世紀。それに応じて、コストを抑えるためにと、肉だけでなく、かなりの分量の穀物が加えられるようになりました。実際にはどんな原料が使われているか疑わしい、というので、ビクトリア時代の人々はこの食べ物のことを「bags of mystery」などと呼んだりもしていたそうです。現代でも、2013年に「バーガーに馬肉使用」という食品スキャンダルがあったぐらいですから、食品製造に関する規制も少なかったであろう19世紀のソーセージに何が使われていたかは、まさにミステリーだったに違いありません。

ともあれ、私自身はパン粉などが入りぶにょぶにょとした英国独特のソーセージを初めて食べたときにはびっくり。でも、慣れるとけっこうおいしく感じて、我が家でも月に1、2度は食卓に上っています。特に最初はもの珍しさも手伝って、リークやブラムリー・アップル、ハーブ入りなど、様々な種類を試してみました。

その買ってきたソーセージを料理するときにも、英国流のやり方に驚いたことがありました。というのも、英国人はソーセージをグリルする際、茶色を通り越して黒くなるまでしっかりと焼くのです。夫の焼き方だけが特別なのかと思っていましたが、友人の家でも、やはりかなり黒く焦げたソーセージが登場。思い切って「英国ではソーセージは焦げるまで焼かないといけないの?」と聞いてみました。友人は笑いながら「焦げには発ガン性があると言われているのは知っているんだけど。しっかり中まで焼けるようにと思うと、ついつい焦げてしまうのかも。でも、本当は皆、焦げたところが好きだからわざとしっかり焼いているのかもね」と答えてくれました。

今では「ソーセージは黒く焦げたくらいがちょうどいい」と思ってしまう私は、英国人の味覚に近付いてしまったのかもしれません(!)。

バンガーズ・アンド・マッシュ(4人分)

材料

  • ソーセージ ... 8〜12本
  • 【マッシュ・ポテト用】

  • ジャガイモ ... 900g
  • バター ... 55g
  • 牛乳 ... 大さじ3杯
  • 塩・胡椒 ... 適量

    【オニオン・グレービー用】

  • 玉ねぎ ... 2個
  • 小麦粉 ... 大さじ1杯
  • バター ... 70g
  • 赤ワイン ... 100ml
  • 野菜ストック ... 125ml
  • 塩・胡椒 ... 適量

作り方

  1. ジャガイモをゆでて、柔らかくなったらゆで汁を捨て、バターと牛乳を加えてマッシュする。塩・胡椒で味を調える。
  2. 表面によく焼き色が付き、中まで火が完全に通るようにソーセージを調理する。フライパンで焼いても、グリルしても好みで。
  3. なべにバターを入れ、薄くスライスした玉ねぎを入れて焦げないように透き通るまでよく炒める。
  4. ❸に小麦粉を振りかけ、更に炒めたところに赤ワインを入れる。
  5. ❹のアルコール分が飛ぶように強火にし、野菜ストックを加えて煮る。塩・胡椒で味を調える。
  6. お皿にマッシュ・ポテトを盛りつけ、その上にソーセージを載せて、上からたっぷり❺をかけて召し上がれ。
memo

パブなどではたいていこれにグリーン・ピースが添えられています。グレービーを作るのが面倒な場合には市販のものを利用しても。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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