第21回 鼻炎ダンサーの苦しみ
19 January 2012 vol.1335
2歳のころの写真
コラムを読んで下さっている皆様、新年明けましておめでとうございます。
毎年のことだが、ロイヤル・バレエ団には正月休みというものが全くない。今年は元旦が日曜日だったので、久々に正月気分を少し味わうことができた。
大みそかの舞台後には、友人とカウントダウン。元旦名物の花火をシティまで観に行こうと話してはいたものの、あまりの人だかりに途中で挫折。結局テレビで観てしまった(笑)。年越し蕎麦を食べ、お雑煮を作り、日本酒を飲み、国際電話で日本の実家へ正月の挨拶をして、あっという間の一日だった。
やはり自分は日本人、年越しを日本式に過ごしてこそ、新たな年へと気持ちを切り替えることができる。在英し17年が経つが、いまだに「Happy new year!」より「明けましておめでとう」の一言の方が、意味こそ同じだが心に響くような気がする。
短い正月を楽しんだ翌日はすぐに「くるみ割り人形」の公演。舞台上ではまだクリスマスな2012年が始まった。
冬の寒さが増すこの季節は、どうしても病欠者が出やすい。空調や暖房施設は整っているものの、リハーサル、舞台ではかなりの汗をかくので、運動した後は常に体を冷やさないように気をつけなければならない。最近の風邪は一度ひくとなかなか抜けないらしく、連日のように代役出演を求められている。
自分はこの数年で病欠はほとんどないが、実は今年もある持病に悩まされている。その病名は「鼻炎」。「ただの鼻炎か」という人もいるが、鼻炎を軽く見ちゃいけない。鼻炎の中にも、鼻水がひどい、鼻の中が痛い、などいくつか種類があるとは思うが、自分の場合は「鼻づまり」。朝目覚め、鼻から呼吸ができないときは、「今日もだめか……」と泣きそうになる。
ダンサーは鼻から空気を取り入れ、鼻と口から息を吐く呼吸法が必要となる。これはスポーツ医学に基づくもので、バレエの場合、見た目にも大事だと考えられる。舞台で踊っているダンサーが大きく口を開け、「ぜーぜー」と呼吸をしている姿は、決して美しくはないからだ。
慢性鼻炎持ちの自分は、この呼吸法によく悩まされる。苦手というか、できないことすらある。ひどいときには呼吸をする際、自分でも聞こえるくらい鼻から「ぴーぴー」っと音が聞こえるため、周りのダンサーにも迷惑をかけているのでは、と気が気じゃない(泣)。
いびきも相当なもので、北海道のひぐまの雄叫びのような音を発するときもあるらしく、楽屋で昼寝をしている際、同僚のダンサーにつっつかれることがある。生まれたころ(多分2歳くらい)から鼻炎だったらしく、当時の写真を見ると、どれもぽかーんと口を開け、口呼吸をしているのが分かる。昔から母と一緒にたくさんの耳鼻科に通い、今でも病院に行っているのだが、どうにも治らない。
だから今でも、点鼻薬、のど飴などは欠かせない。踊る際には常に持ち運び、呼吸が少しでも楽になるように努めなければならず、常備品のうち何か一つでも足りないと、少し落ち着かなくもなる(笑)。
どんな人でも、大小の差はあるが、色々な悩みやハンディキャップを背負っていると思う。何かを達成したいときには、どうしても悩みはついてくる。まずは健康でいることが一番。皆さんにとって、幸せ溢れる一年になりますよう、祈っています。
今年こそ鼻炎が一発で治る新薬も発売されますように……(祈)。