第12回 コラム一周年
21 April 2011 vol.1297
© Bill Cooper
この連載を始めてこれで12回目。この一年も山あり谷あり色々なことがあった。今までのコラムを読み返すと、今まで頑張ってきた一年間の出来事が思い出され、これがずっと人に読まれていると思うと自分の日記を読まれているような気もして、少し恥ずかしくもなっている。
自分は根っからのおしゃべりだし、普段から自分が思っていることを口に出すのは苦ではなかったので、この仕事を頼まれたときはすぐに引き受けた。初めての書く仕事だったし、ステージが続く毎日の中で時間を見つけながらの作業ともなり、当初は締め切りなどを気にすることもあったが、バレエと一緒で、少しずつ慣れるとともに楽しくなってきた。
文章を書くのは小さい頃から好きだったが、得意だと思ったことはない。実際、過去の文章を読み直すと、もっと上手い言い回しや上手な文章が書けないものかと我ながら情けなくもなる。ただ、毎回、一生懸命書かせてもらってはいる。踊りを踊るのも文章を書くのも、作業こそ違うが、観客、読み手を喜ばせようとする気持ちは同じだ。バレエをその日一回だけ観て、もう二度とステージを訪れない方もいるかもしれないし、このコラムも同じように、一回こっきりしか読まれないかもしれない。ただ、一度でも観客、読み手とコミュニケーションを取ることができるチャンスを頂いたので、少しでも自分の気持ちを知って欲しいし、楽しんでいってもらいたい。
例えば自分は、船乗りさんとかプロ・ボクサーとか弁護士さんといった、なんとなくイメージは湧くが、自分とはかけ離れた世界で生きている人々が普段どんなことを考え、どんな悩みを抱えているのか、すごく興味がある。だから自分自身も、バレエ・ダンサーという職業を選んだ男が(たまにバレエ教師をしたりコラムも書くが)、普段どんな暮らしをして、どんなことを考えてトレーニングをし、どんな思いで舞台に立っているのかを、この連載では包み隠さず皆さんにお伝えできればと思っている。だから随分正直に書いているつもりだ。
ブログのコメントやファン・レターなどで、書いて欲しいことなどを伝えてもらうこともあり、なるべくその気持ちにも応えたいと思っている。中には役作りについて、あまり自己流にとらわれすぎないように考えてもいいのではないかとお叱りをもらうこともある。しかし今更格好つけてもしょうがないし、開き直っているわけではないが、今までも自分らしさと感性を信じてきたし、これからも舞台でしか出せない自分に挑戦していきたいと考えている。
とはいえ、自分の頭の中や普段の過ごし方が、この業界の一般的な姿だと思われても少し困る。知人ダンサーたちが普段どう過ごしているかは何となく知ってはいるが、それぞれ生活スタイルは千差万別だし、自分と同じようなスタンスで役作りする人も、ひょっとしたらいないかもしれない。
連載を始めてからの一番の楽しみは、担当編集者Mさんの「タイトル作り」。実は初回から自分ではどうしても納得のゆくタイトルが見つからなかった。そんな気持ちを汲んでくれた彼女が、今では毎月、タイトルを付けてくれている。いつも感じるが、タイトルだけで自分のへたくそな文章がかなり救われている。この場を借りて、Mさん、いつもありがとうございます。そして今後とも、どうぞよろしくお願いします。