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Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第25回 バレリーナのアイコン

14 June 2012 vol.1356

女性のバレエの衣装と言えば、一番に皆さんが想像するのはきっと、チュチュと呼ばれる、チュールを重ねて作った円盤状のスカートだと思います。チュチュはまさしくバレリーナのアイコンですが、同じチュチュでも色々と種類があります。

「ロマンティック・チュチュ」というのは、膝から足首の間ぐらいまでの丈のスカートで、主に軽やかさを出す妖精や村娘役の役柄に使われます。「クラシカル・チュチュ」は、ベル型、パンケーキ型と2種類あり、それぞれその名の通りの形で、主に姫役の役柄で用いられます。また、「バランシン・チュチュ」というのは、ロシア人の振付家バランシンの作品に使われる 、「おしろいはたき」とも呼ばれる短い丈のチュチュで、彼の作品の特徴であるスピードの速さや足さばきを強調できるように、カリンスカというデザイナーが発明したチュチュになります。「プラター・チュチュ」は、大部分がクラシカル・チュチュと同じですが、少したるみを持つクラシカル・チュチュより張りがあり、お皿のように真っ直ぐなシルエットで、主に姫役用です。

バレエ・ダンサー 小林ひかる
ただいま、サイズの調整中

このように何種類かあるチュチュですが、今回ご紹介するのは、7月に上演される「バースデー・オファリング(Birthday Offering)」という作品で使われる、ベル型のクラシカル・チュチュです。

この作品の初演は1956年。同年にデザインされたこの衣装は、今日までそのオリジナルのデザインを保っています。バレエの衣装は、新作や新たに作り直す作品でない限り、時代を超えて受け継がれていくものなのです。さすがに今回着用する衣装は、当時のものではありませんが、1996年に少々手を加えて新たに作り直されたもので、今回出演するキャスト用にサイズが調整されることになります。

一般的にチュチュが作られる際には、ボディー部分を作る人、チュチュ部分を作る人、デコレーションを作る人と、約3名のコスチューム・メーカーが加わるそうです。

また、今回のもそうなのですが、現在ロイヤル・バレエで使われているチュチュのほとんどは、日本人のチュチュ職人さんが作っていらっしゃいます。彼の作ったチュチュを着けたら、ほかの職人さんのチュチュが身に着けられなくなるといって良いほど、素晴らしく体にフィットし、軽いので、ダンサーの間では人気です。

左の写真で私の体に合わせてサイズを調整してくださっている女性は、この道40年のベテランさんで、ロイヤルの歴代バレリーナーのコスチュームを数々作っていらっしゃいます。彼女に言わせると、昔の方が良い生地を使っていたとのこと。確かに彼女に見せていただいたオリジナルの衣装のボディー部分には、裏地にシルクが貼ってあるのです。肌触りも良いし、軽いし、こちらの方がダンサーにとって良いのにとおっしゃいます。不景気の現在、コスト・カットの影響はどこにでも現れるのですね。

チュチュは女性のダンサーの中ではやはり人気のあるクラシック作品で使われる衣装ですが、創作作品では、レオタードとタイツに巻きスカートのようなものや、総タイツなど、体の線が明らかに現れてしまうものが多く、女性は特に自分のシルエットによく気を遣います。中には気を遣いすぎてしまい、悪い方向に行ってしまうことも。その話はまた次回に……。

 

小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
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