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Mon, 11 November 2019

知って楽しい建築ウンチク
藍谷鋼一郎

ロマネスク建築

ロマネスク建築とは、12世紀ごろの欧州において、最も発達したキリスト教建築のことである。当時、欧州各地で教会堂の建設ラッシュが起きた。これは、西暦1000年に世界が滅びて最後の審判を迎えると信じられていたにも関わらず存続したため、人々が神への感謝の気持ちを表して建てたからだと言われている。

石の殿堂

ピサの斜塔
「ピサの斜塔」で知られる
ピサのドゥオモ(イタリア)

キリスト教の教会建築が目ざましい発達を遂げた、中世ヨーロッパ。当時は大聖堂の建設こそが最も崇高な建築行為とされ、各地で競うように建てられたのだ。このころから、より神に近付くようにと高い鐘塔が建設されるようになる。高さを追求するためにあらゆる建築技術が結集され、またその高さゆえに大聖堂が街のシンボルとなり、今日に至るヨーロッパ特有の風景が形成されることとなった。

産業革命により鉄の精製が可能になる以前は、ほとんどが木造や石造建築であった。とりわけ大空間を要し、高さの追求が求められた大聖堂の建築には、石が好んで用いられた。この石の積み方、そして切石づくりには人々の英知が込められている。中世建築の偉大な功績に、石積みと石切の正確さを復興させたことが挙げられるだろう。古代ローマ以降、石造建築が普及し、それとともに安易な積み方も一般化していく。自然石などを積む時は、形もバラバラなので、目地を大きく取りごまかしたとしても仕方ない。しかし、平な石積みの時ですら大きな目地が使われ始め、技術後退が著しくなっていたのだ。

ダラム大聖堂(左)ヴォルムス大聖堂(右)左) ロマネスク建築の代表的な建物である、ダラム大聖堂(英国)© www.britainonview.com
右) 円柱塔が特徴的なヴォルムス大聖堂(ドイツ)

ゴシック建築への助走

マインツ大聖堂
リブ天井が際立つマインツ大聖堂(ドイツ)

一般にロマネスク建築と言えば、半円アーチを使った開口部(窓やドア部分)が特徴とされている。しかしそれは、次の時代に起こるゴシック建築の特徴である尖頭アーチと区別するためで、必ずしもロマネスクだけに限ったものではない。ロマネスク建築固有の特色としては、それ以前とは違い、建物内部の構成が外部から分かりやすくなった点や、1つのアーチを何層にも重ねたように見せる、装飾的な重層アーチが出現したことが挙げられる。ピサの斜塔のように、建物の低層部では大きなアーチを使い、上部に行くに従って小さなアーチを多く用いて上昇感を出し、建物を軽快に見せる工夫もされるようになる。

内部では、カマボコ型のヴォールト天井を直角に交差させる交差ヴォールトを多用するなど、キリスト教建築における「極限の美」に到達するゴシック建築への下準備が進められた。また、ヴォールトの交差部にリブが出現するのもこのころだ。リブとは文字通り肋骨のようなもので、接合部の補強に使われた。これは、ゴシック建築にも引き継がれる。

しかし、いくらアーチを積み上げるといっても、構造的には限界がある。日本の木造構造のような柱と梁による架構に比べ、壁が主体である石造建築の開口部(窓や出入口)は小さい。よって、内部は薄暗く、洞窟の中のようだ。その石造りによる重厚な外観の重々しさを払拭するためか、外壁を派手な装飾が覆い、奇妙な違和感があるのも確かだ。ロマネスク建築はこのような葛藤を抱えたが、次のゴシック建築ではこれを乗り越え、一気に宗教建築の最高美に到達することになる。

 
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藍谷鋼一郎:九州大学大学院特任准教授、建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学卒、バージニア工科大学大学院修了。ボストンのTDG, Skidmore, Owings & Merrill, LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録し、新聞・雑誌に寄稿している。
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