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Fri, 13 December 2019

知って楽しい建築ウンチク
藍谷鋼一郎

バービカン ~ロンドンの戦後復興計画~

金融街シティの一角に、ひときわ異彩を放つ一帯がある。戦後復興計画によって建てられた約40エーカーに及ぶ巨大建築群「バービカン」だ。第二次世界大戦中にドイツ軍の空爆によって焼け野原となった一帯は、荒々しいコンクリートによる立体都市として蘇った。

砦という名の立体都市

「バービカン」は金融街シティの北側に位置している。バービカン=砦というラテン語の名称が示すように、この建築群には人々の進入を拒んでいるかのような趣がある。それは当時、理想的な街区整備手法とされた巨大街区により、歩行者と車の分離を徹底化させたためだ。また1950~70年代にかけて流行した「ブルータリズム」という、コンクリートを多用した近代建築の象徴する威圧的な外観も、その拒絶感を助長していると言えよう。

集合住宅
地下鉄バービカン駅前から続く集合住宅

複合型再開発のモデル・ケース

復興計画を進めるにあたっては、オフィス街開発や文化施設の建設など、さまざまな議論があったそうだ。そうした中で、設計者に選ばれたチェインベリン・パウエル・ボン社は、「地中海でのホリデーやフランス料理、スカンジナビアの洗練されたデザインを好む若い専門的職業人たちのための都市型住居を作る」というコンセプトを打ち立てた。これは、当時主流だった「庭付きの郊外型住居に暮らし、都心に通勤する」という風潮に反旗を翻すものだったという。結果として、彼らの設計思想が、複合型再開発の世界的なモデル・ケースを生むことになった。

ちなみに、このエステート内にある90%以上の集合住宅は民間に分譲されているが、土地の所有権は先述のコーポレーション・オブ・ロンドンに帰属し、125年間のリース・ホールドという形をとっている。つまり、購入者は125年間だけプロパティを所有する権利を取得した訳だ。また、敷地内には倒壊したローマ時代の城壁の遺跡が保存され、往時の面影を伝えている。

超高層タワー
バービカンを見下ろす3本の超高層タワー

敷地内に広がる豊かな空間

エステート内に入ると一転、豊かな空間が広がっている。人工池や心地良い広場の周りに大小さまざまな集合住宅棟があり、しかも、その中心には複合文化施設「バービカン・センター」が配置されている。建物から建物へは、低層部に張り巡らされた歩行橋を使うことにより、車の通行を気にせず安全に移動することができる。各住戸のベランダには花壇が設けられ、色とりどりの花が咲く光景は愛らしい。40階建ての超高層タワー3本を含む20棟の住宅棟には全2014室、約4000人が暮らしている。また中世からの教会や音楽学校、女学校なども併設している。

バービカン
集合住宅棟の間には人工池が設置されている

昨年、開業25周年を迎えたヨーロッパ最大級の複合文化施設「バービカン・センター」には、ロンドン交響楽団の本拠地バービカン・ホールやシアター、映画館3つ、アート・ギャラリー、図書館、そしてバーやカフェ・レストランまでもが立体的に配置されている。各種企画展やコンサートなどの催しも充実しているため、住民だけでなくシティで働く人々にも広く愛用されているようだ。そして今では、シティにある都市型住居や超高層住宅の付加価値から不動産としての価格も急上昇しているという。

バービカン・センターの館内
バービカン・センターの館内

 

 
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藍谷鋼一郎:九州大学大学院特任准教授、建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学卒、バージニア工科大学大学院修了。ボストンのTDG, Skidmore, Owings & Merrill, LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録し、新聞・雑誌に寄稿している。
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