国際品質マネジメント基準(ISQM)
監査の品質について、ニュースで取り上げられることが最近増えています。有名企業の破綻が相次ぎ、こうした企業の財務諸表を承認した監査法人に多くの疑問が投げかけられています。そこで、監査の品質と監査事務所の品質マネジメントのシステムを対象とした新たな三つの基準が公表されています。
新しい基準とは何ですか。
新しい監査基準は、ISQM1、ISQM2、ISA220で、いずれも国際監査・保証基準審議会(IAASB)が発行したものです。
なぜこうした基準が重要なのですか。監査事務所にとって監査の質は常に重要事項であり、監査事務所がリスク環境を明確にするプロセスや、明確にしたリスクへの対応を定める基準が設けられてきました。こうした基準は、IAASBが品質マネジメント基準の向上を推進する一環であり、2013年から始めた活動の集大成といえます。
この三つの新基準は更新により現代化され、監査事務所が直面する環境の変化に対応するとともに、品質マネジメント基準と監査事務所による基準の実施の有効性と頑強性を向上させるものです。
こうした基準はいつ発行されるのですか。
三つの新基準は全てIAASBがまとめたもので、監査事務所は2022年12月15日から始まる全ての監査業務と品質評価について、これを実施する必要があります。英国では、英国財務報告評議会(FRC)が早期の採用を強く推奨しています。ほとんどの監査事務所では、2022年12月15日の期限に先駆けて、こうした基準に対する取り組みを確立しつつあると思われます。
従来の基準からは、主にどのような点が変更されていますか。ISQM1は、ISQC1に代わる基準で、監査事務所における品質マネジメントに焦点を当てています。この品質マネジメントは、監査チームが品質を強化するために必要です。ISQM1は、監査事務所の品質マネジメント・システムがどのようなものかを規定していませんが、その代わりに監査事務所が適切なシステムをどのように構築すべきかを定めています。
ISQM2は全く新しい基準です。 従来のISQC1とISA220の基準からいくつかの点を抽出しています。対象となるのは、品質マネジメントの評価実施者の適格性と選任、および評価の実施と文書化に関する評価実施者の責任です。目的を明瞭にし、評価の性質やタイミング、範囲を明確にすることを目指しています。
改訂されたISA220は、財務諸表の監査の品質マネジメントに関わる監査責任者と監査チームの責任に関する監査基準を改訂したものです。この基準の現代化は、財務諸表の監査における品質マネジメントの取り組みを改善するもので、監査責任者と監査チームの両方に対して、監査業務の品質を管理し達成するため積極的に行動するよう求めています。
ほかに主な変更点はありますか。
こうした基準から生じるほかの大きな変更点の一つは、監査事務所の品質是正プロセスの一環として、根本原因の分析(RCA)を用いるよう求めていることです。これは、数年前から監査の専門職の間では推奨されている点であり、監査事務所にとってはすでに馴染みがあるものでしょう。
ジェフ・ジョンソン
監査・会計 パートナー
BDOに9年勤務。英国会計基準(UK GAAP)や国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US GAAP)の豊富な知識を基に、監査と財務会計を専門とする。勅許会計士(ACA)の資格を持つ。