英国の法人税率引き上げについて
法人税の税率が上がると聞きましたが。
はい、英政府の決定により、2023年4月1日に法人税の標準税率が現行の19パーセントから25パーセントに引き上げられます。
全ての企業に影響が出ますか。
いいえ、新しい税率は利益が25万ポンド(約3985万円)を超える企業だけに適用されます。利益が5万ポンド以下の場合は、非公開投資持株会社(CIHC)や事業が銀行と石油に関する特別制度の対象でない限り19パーセントのままです。CIHCとは、取引や不動産賃貸業を行っていない企業、またはそうした事業を行う1社以上の会社を支配する企業のことで、不動産賃貸業以外の投資事業を行う企業や清算中の企業なども含まれます。
グループ内の会社では課税の基準額はどうなりますか。
5万ポンドと25万ポンドの課税の基準額が全世界で稼働中の関連会社の数に応じて引き下げられます。また2023年4月1日以降は、同じ企業グループ内ではなくても単に共通の支配下にあるというだけで関連会社となります。
申告の期間が1年に満たない場合はどうなりますか。
その場合には、期間に応じて利益を減らします。決算日が3月31日ではない場合はどうなりますか。
会計期間の利益を2023年3月31日に終了する課税年度と、法人税率が引き上げられる課税年度で配分します。
どのように利益を配分するのですか。
通常、利益の配分は期間に基づいて行いますが、証明できる場合には実績に基づいて配分することも可能です。
実績に基づくのは、どのような場合に有利ですか。
2023年3月31日までの期間に、4月1日以降の期間と比べて高い利益を上げる場合は、実績に基づけば25パーセントで課税される利益が減ることになります。
会計期間の延長はどのような節税になりますか。
決算日が2022年12月31日の会社が、2023年3月31日に終了する四半期に非常に高い利益を見込んでいる場合、3月31日に終了する15カ月間に会計期間を延長すると、2023年12月31日に終了する会計期間の混合税率(約23.5パーセント)ではなく、19パーセントで課税されます。このため、3月末までの四半期の利益に対する課税額が減額されます。では、会計期間の短縮はどのような節税になりますか。
決算日が3月31日の会社が2023年6月に大きなキャピタルゲインを見込んでいる場合、会計期間を2022年6月30日までの3カ月間に短縮し、2023年6月30日までの12カ月間で申告を行うことで税額を最適化できます。2023年6月のキャピタルゲインは6月末の会計期間で配分され、25パーセントの税率の対象となるキャピタルゲインが4分の1になるため、税率は20.5パーセントに軽減されます。
ほかに税率の変更に伴って課税額を改善する方法はありますか。
年金支払い、慈善団体への寄付、資本的支出などのタイミングは、どの会計期間になるかに影響します。つまり税務上で利益を認識する課税期間に影響を与えるため、企業はこうしたタイミングを検討する必要があります。
アンディー・トール
税務パートナー
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R & D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M & Aの税務など幅広い経験を持つ。