英国の2021年秋季予算案
課税基準期間の変更について教えてください。
個人事業主やパートナーシップは現在、課税年度中に終了する会計期間に発生した利益に対して課税されています。政府は、この基準を会計期間ではなく課税年度中に発生した利益への変更を提案しています。2023年4月5日に終了する会計年度が移行年度となり、それ以降に新基準が適用されます。これにより2023年4月までの年度では、課税年度中に終了する会計期間の利益に加え、会計期間の終了後から4月5日までの数カ月間の利益も課税対象となります。制度の導入時に重複した利益があれば救済措置が適用され、課税対象となる利益の増加分は2023年とその後の4年間に分散されます。
国民保険料、配当金税率に変更はありますか。
2022年4月から従業員と雇用主の両方が負担する国民保険料率がそれぞれ1.25パーセント引き上げられ、配当金に課せられる税率も1.25パーセント引き上げられます。
法人税の増税は決まりましたか。
はい、法人税は2023年4月1日に19パーセントから25パーセントに引き上げられます。
キャピタル・アローワンス(税制上の減価償却)はどうなりますか。
年間投資償却(AIA)の基準額である100万ポンドは、2023年3月31日まで継続されます。また、「メインプール」の対象となる大半の設備や機械に対する130パーセントの特別控除、および「特別率プール」の対象となる設備や機械に対する50パーセントの特別控除も、同じように2021年3月31日まで引き続き適用されます。
予算案では研究開発に関してどのような変更がありますか。
2023年4月以降、対象となる研究開発業務は全て英国内で実施しなければなりません。また、対象となるコストのリストには、クラウドコンピューティングやデータのコストも含まれるようになります。
VAT(付加価値税)の税のデジタル化(Making Tax Digital: MTD)プログラムの進捗状況はどうですか。
VAT課税対象の売上高が8万5000ポンド超のVAT登録企業は、全ての記録を完全にデジタルリンクの形式で保存し、適切なソフトウェアを用いてVAT申告書を提出することがすでに義務付けられています。2022年4月1日以降、こうした要件は、売上高が8万5000ポンド以下のVAT登録事業者にも拡大されます。
MTD は所得税の手続きにも適用されますか。
2024年4月からは、課税所得が1万ポンドを超える英国の法人格を持たない事業者は、デジタル記録を保持し、四半期ごとに収支計算書を提出する必要があります。パートナーシップについては2025年4月から対象となりますが、企業やLLPについては時期が未定です。また、信託やデジタル化から排除されている人には免除措置があります。
課税年度末の日付に変更はありますか。
政府は、課税年度末を4月5日から3月31日または12月31日に変更することを検討しています。ただ、この変更は政府がITシステムを更新するまでは行われないため、少なくとも2~3年先となります。
アンディー・トール
税務パートナー
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R & D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M & Aの税務など幅広い経験を持つ。