クロスボーダーM&A英国税務デューデリジェンス
弊社は英国のソフトウェア開発会社の買収を計画しています。対象が小規模スタートアップなので、税務デューデリジェンスは最小限にしようと考えていますがどうでしょう。
クロスボーダーM&Aでは税務が大きな障壁となることもあります。財務や会計は比較的共通ルールであるのに対して、税法は国によって大きく異なるため、税務デューデリジェンスを実行しない限り、日本からでは現地税務リスクの認識や測定は困難であるといえますし、そもそも買収ストラクチャーが税法上適していないと判明することもあります。また、大企業と中小企業では対象となる税法やコンプライアンスの範囲が大きく異なる場合があります。日本の大企業が英国の中小企業を買収した場合、買収後は大規模グループになることで、買収前とは異なる税務への対応が求められる可能性があることを把握しておいたほうがよいでしょう。
大企業はどんなエリアに注目すべきでしょうか。
大きく分けて次の2つの点に注意してみてください。
● 研究開発税金控除スキーム
英国では企業の研究開発への投資を促進するため、条件を満たす研究開発費に対して減税措置を設けています。これが中小企業(従業員500名以下、売上1億ユーロ(約128億円)以下もしくは総資産8600万ユーロ以下)であれば、適格研究開発費用に対して130%の追加、つまり合計230%を損金算入として認めています。しかしこれが大企業の場合は、適格研究開発費用に対して13%の追加控除にとどまります。しかも、この13%の控除分については課税対象となることから、法人税19%を減額しますと、実質10.53%の追加控除となります。中小または大企業の判断はグループ全体の規模を基準とするので、このように買収前後で享受できる税金控除が大きく変わってしまいます。
● IR35
IR35とは、実態は雇用関係でありながら被雇用者が個人会社を設立、同社を通して雇用者と契約して対価を得るという手法を制限することで、本来雇用関係であれば発生していた税金を課すという税法です。もともとIR35は公共団体向けのルールでしたが、2021年4月より一般企業で小規模(売上1020万ポンド以下、総資産510万ポンド以下、従業員50名以下の条件のうち二つ以上を満たす)以外の企業にも適用を広げました。買収ターゲットが小規模である場合はIR35は適用されないため、請負業者との契約に対して注意を払ってこなかった可能性が高いでしょう。しかし買収後に大規模グループとなった場合、IR35が適用されることから、こういった請負業者との契約がある場合、雇用と判断されるリスクが発生します。雇用となれば雇用者NIC(給与の13.8%、ただし控除枠あり)が課されることになります。
なるほど、確かに日本からは思いつかない税法ですね。弊社が買収後に注意する一方、買収前の税金が正しく計算されていたことが確認できればよいわけですね。
ほかにもあります。研究開発費が多額の場合やIR35対象となる請負業者が多数と判断された場合、ターゲットが用意してある将来キャッシュフローの前提条件が変わり、予測数値に乖離(かいり)が生じます。買収価格算定にDCFを採用している場合、価格にも影響が出ますので、財務デューデリジェンスやバリュエーションのチームと連携を取った方がよいでしょう。
 高西祐介
 高西祐介 
監査・会計パートナー
 英国大手会計事務所にて多くの英系大企業監査を担当。日系企業をサポートしたいという強い思いからGBAへ。監査、ファイナンスデューデリ、組織再編アドバイスを専門とする。



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