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Thu, 05 December 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 66

ブラック・プディング
Black Pudding

Black Pudding

「見た目がビックリな英国フード」コンテストがあったとしたら、優勝か、少なくとも上位に食い込むのは間違いない、と断言できるのが「ブラック・プディング」。「ブラック・マンデー」や「ブラック企業」など、あまり良いイメージを連想させない「ブラック」という言葉がついていますが、見ての通り、この食べ物の色が名前の由来でしょう。

また、「プディング」という言葉から「デザートかお菓子の類かな?」と思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。その正体は、豚の血にオーツ麦やハーブ、スパイス類と豚の脂肪分を混ぜ合わせたソーセージ。そのため「血のソーセージ」などと呼ばれることもあるようです。

英国でこれを食べたことのある方は、フル・イングリッシュ・ブレックファストでの初体験が多いのではないでしょうか。私もその一人。一人旅で泊まったB & Bで食べた朝食のお皿に、何の前触れもなく登場したのが、この「英国珍味」でした。

1センチほどの厚さにスライスされた真っ黒の物体。バーベキューで最後まで網の上に取り残され、木炭化してしまったチョリソーかと思いました。とりあえずナイフで小さく切ったひとかけを口に入れると、意外にも焦げた味は全くしないのに驚きました。例えて言えば、日本で食べていた鳥レバーを濃縮させ、それにスパイスを混ぜたといった感じ。外側がかりっと香ばしく、お皿に載っていた半熟気味の目玉焼きとトーストを一緒にフォークで突き刺して食べると、絶妙のコンビネーションです。

歴史的にはかなり昔までさかのぼることのできる食べ物で、古代ギリシアの詩人ホメロスの「オデュッセイア」にも登場すると言われています。貴重な家畜を食料とする際、あますことなく使うというのは万国共通ゆえか、血入りのソーセージは、フランスやドイツを始め、ヨーロッパ各地で同様のものが存在します。

英国でも古くから国内各地で食されていたと言われますが、有名なのはランカシャー産。特にベリーという町(現在はマンチェスターに含まれる)のものが有名で、スーパーでは、この地を拠点とする「ザ・ベリー・ブラック・プディング・カンパニー」という会社の商品が多く流通しています。

ブラック・プディング自体はこれまで何度も食べたことがありましたが、実は自分でわざわざ買ってまで食べたいとは思っていませんでした。なので、今回初めて調理してみて気付いたのですが、ブラック・プディングの中身は、濃い煉瓦(れんが)色。それが真っ黒になるのは、フライパンで加熱した後なのですね。

伝統的な食べ方は、蹄鉄型のブラック・プディングをお湯の中に入れ、沸騰させない程度に煮て温めるというものだそうですが、私は外側をかりっと焼いた調理法が好みでした。皆さんはいかがでしょう?

ブラック・プディング入りサラダの作り方(4人分)

材料

  • ブラック・プディング ... 200g(量は好みで増減を)
  • ロメイン・レタス ... 1個
  • チェリー・トマト ... 200g
  • 半熟ゆで卵 ... 3個分
  • イタリアン・パセリ ... 適量
  • クルトン ... 適量
  • 【ドレッシングの材料】
  • レモン果汁 ... 1/2個分
  • オリーブ・オイル ... 50ml
  • ディジョン・マスタード ... 小さじ1
  • ハチミツ ... 大さじ1
  • 塩・胡椒 ... 適量

作り方

  1. スライスしたブラック・プディングの両面をフライパンで焼く(時間は大きさ、厚さによって調整)。大きいサイズのものであれば、食べやすい大きさに切る。
  2. サラダ・ボウルに、❶と一口大にちぎったロメイン・レタス、半分に切ったチェリー・トマト、くし切りにしたゆで卵、クルトン、みじん切りにしたイタリアン・パセリを入れる。
  3. ドレッシングの材料をすべてよく混ぜ、❷の上から好みの量をかけて出来上がり。
memo

最近では有名シェフたちがブラック・プディングを取り入れたメニューを考案したりして、イングリッシュ・ブレックファスト以外での食べ方が知られるようになってきました。本文でご紹介したザ・ベリー・ブラック・プディング・カンパニーのサイトにも、たくさんのレシピが紹介されています。wwww.buryblackpuddings.co.uk/recipes

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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