トゥエルフス・ナイト・ケーキ
Twelfth Night Cake
英国で初めて年末年始を過ごされた方は、この国では、お正月が来てもまだクリスマス飾りをしまわないのを不思議に思ったのではないでしょうか。日本でなら、12月26日には既にツリーやデコレーションはすっかり姿を消し、代わりにお正月飾りがお目見えするのが一般的。でも、英国ではクリスマス・シーズンが終わるのは1月6日。クリスマスから数えて12日目に当たる日まで続いているのです。
この日は、ベツレヘムにやって来た東方の三賢者が、生まれたばかりのイエス・キリストに謁見し、贈り物を捧げた日。英国では「エピファニー(公現祭)」と呼ばれています。また、この夜(あるいはその前夜)を「トゥエルフス・ナイト」と言います。トゥエルフス・ナイトをクリスマス当日の夜から数えるか、翌日から数えるかによって、1月5日か6日のどちらに祝うかは意見が分かれるようですが、英国家庭では5日夜を十二夜と考えて、このときまでにクリスマス・デコレーションを片付ける人が多いよう。と言うのも、そうしないと不幸が訪れるという言い伝えがあるからです。
最近は日本でも、このエピファニーに食べるお菓子が人気になっていますね。「ガレット・デ・ロワ」と呼ばれるフランスのパイ菓子がそれ。英国でも、ちょっとポッシュなケーキ店などでは、このお菓子を見掛けることが増えました。
一方ほとんど知られていませんが、実は英国にも、この日に食べる伝統的な「トゥエルフス・ナイト・ケーキ」というものが存在します。
かつてこの国では、クリスマスと同様かそれ以上に、この十二夜を祝っていたとも言われ、そのときにケーキも供されました。中世からチューダー期のそれは、イーストを使って膨らませた、ドライ・フルーツ入りのブリオッシュといったイメージのものだったそうです。その後は、現在の英国流クリスマス・ケーキの原型とも言われるような、ドライ・フルーツがぎっしりと詰まったどっしりタイプのケーキになりました。
フード・ライター、ナイジェル・スレーターの著書「ザ・クリスマス・クロニクルズ」によれば、ケーキの中に乾燥させた白インゲン豆とエンドウ豆を入れて焼き、その夜、白インゲン豆が当たった人は王様、エンドウ豆が当たった人は王妃として振る舞ったそうです。19世紀ごろには、豆から銀製の指ぬきや護符に変わったようですが、フランスのガレット・デ・ロワに入っている、フェーブと呼ばれる陶製の人形と同様のものと言えます。
英国では、ビクトリア時代にクリスマス・ツリーやクリスマス・カードの習慣が広まり、クリスマスのお祝いが盛大になっていくに従って、トゥエルフス・ナイト・ケーキがクリスマス・ケーキにとって代わられていきました。とは言え、豆や銀製品などを入れる習慣については、その後クリスマス・プディングに受け継がれています。
トゥエルフス・ナイト・ケーキの作り方
(直径約20㎝の丸型1個分)
材料
- 小麦粉 ... 225g
- バター ... 225g
- マスゴバド・シュガー ... 225g
- ブラック・トリークル ... 大さじ1
- ミックス・スパイス(製菓用) ... 小さじ1
- 塩 ... ひとつまみ
- 卵 ... 4個
- レーズン ... 100g
- カランツ ... 100g
- サルタナ ... 100g
- ミックス・ピール ... 50g
- ドレイン・チェリー ... 50g
- グラウンド・アーモンド ... 50g
- ブランデー ... 大さじ1
- 白インゲン豆、エンドウ豆(乾燥) ...各1個
作り方
- 室温に戻したバターと砂糖をハンド・ミキサーでクリーム状になるまで混ぜ、ブラック・トリークルを加える。
- 卵をかき混ぜて❶に加え、混ぜる。
- ボウルに小麦粉、ミックス・スパイス、塩を入れ、❷に加えて混ぜる。
- 残りの材料すべてを➌に入れ、混ぜる。
- ➍をケーキ型に入れ、160℃に余熱したオーブンで約1 時間半焼く。
- オーブンを120℃に下げ、更に約1時間焼く。ケーキがよく膨らんで、竹串を刺して生地がついてこないようなら出来上がり。
memo
レシピはジュリー・ダフ著「ケークス:リージョナル & トラディショナル」を参考に分量をやや変更しています。それでも日本人にとっては、ちょっと重過ぎると感じるかもしれないケーキなので、お好みでドライ・フルーツと砂糖の量を調整(減量)してください。