ロンドンに戻ってくる ──
昨年12月、ロンドンで海外デビューを果たした
スガ シカオが、11月、再びロンドンの地を踏む。
日本と英国の間をファンクの精神で疾走し続ける
スガ シカオは、前回のライブで何を感じ、
次のライブで何を感じようとしているのか。
「スガ シカオ JAPAN★UKサーキット2009」から、
「スガ シカオJAPAN★UKサーキット2010」へ。
敢えて同じタイトルで臨む今回のライブへの期待感を
込めて、まずは昨年、スガがロンドンで
何を感じ取ったのか、聞いた。
スガ シカオ プロフィール
7月28日生まれ。東京出身。大学卒業後はイベント制作会社で勤務。退社後、1997年に「ヒットチャートをかけぬけろ」でメジャー・デビューを飾る。翌98年には、SMAP のシングル「夜空ノムコウ」の作詞を担当。同楽曲の大ヒットとともに、スガ シカオの名と楽曲の認知度が一気に高まった。2001年発売の5thアルバム「Sugarless」はオリコンのアルバム・チャート初登場 1位を獲得。これまでにリリースしたアルバム13作品のすべてがアルバム・チャートのTOP10入りを果たし、男性ソロ・シンガー歴代1位の記録を樹立。09年12月、ロンドンの現代アート・ギャラリーICAで海外デビュー公演を行ない、大成功を収めた。
2009年12月、ロンドン中心部の現代アート・ ギャラリー、ICAで行われたスガ シカオの海外デビュー・ライブ。ライブ直前には日系誌のみ ならず、ロンドンの無料新聞「METRO」など、地元メディアにも大々的に取り上げられ、チケットはすぐにソールド・アウト。とはいえ、日本では誰もがその名を知る有名人も、ここロンドンでは異国の一介のミュージシャン。当日は、熱狂的な日本人ファンから、何となく興味を持って訪れた英国人まで、温度差を持つ多種多様な聴衆を前にしてのデビュー公演となった。
─ ロンドン公演が始まる直前、通常のライブ以上に緊張するといったことはありましたか。
とにかく時差ボケと、電圧の違いで思うように動かない機材もあったりといったトラブルに苦しめられたので、緊張と相まって、ステージ直前は気を失いそうなくらいの精神状態でした。
─ 聴衆の方たちの中には、日本から渡英したファンの方もいらっしゃったと伺いましたが、全体的には日本人、日本人以外の方の割合はどのような感じだったのでしょうか。
日本から来た方は20人程度。あとは現地のチケットです。人種もかなりバラバラだったし、ノリもバラバラでしたが、それがとても自然で良かった。
─ ロンドン公演ということで、曲目を日本でのツアーのものと意図的に変えたということはありましたか。英語の曲は演奏されたのでしょうか。
英語の曲は全くやりませんでした。日本でのセット・リストと全く変えていません。
ぼくらがUKのアーティストを見るときも、言葉が分からなくても楽しめるし、中途半端な英語の曲をやるより、自分の言語で勝負したかった。
─ バラード調の曲からファンク全開のものまで、様々なテイストの曲を演奏されたそうですが、聴衆の皆さんのノリの良かった曲、悪かった曲はありますか。そうしたノリの違いは、日本でライブをする際とは異なっていたのでしょうか。
分かりやすい感情の曲 ──「悲しい」とか「楽しい」── とか、そういう曲の方が伝わりやすかったという印象です。複雑な感情を歌った曲 やミドル・テンポの曲は、あまり伝わらなかったかな??
逆に日本でやるときには、お客さんは皆、歌詞との距離感を楽しんだりするので、ミドル・テンポの曲をやると雰囲気が良くなるときが多いです。
─ 会場内の日本人と日本人以外のお客さんの間で、何か反応に違いは感じられましたか。
日本人以外のお客さんは、大人のノリでしたね。
─ MCは英語でされたのですか。MCに対する聴衆の方々の反応はいかがでしたか。
英語で半分くらいやってみましたが、たぶん、英語をしゃべっていると認識されていなかったと思います(笑)。もう少し、英語がんばります。
─ すべての曲目が終わった直後、まずは何を感じられましたか。
アンコールのやり方が日本と違い、床を足で蹴るというのを知らなくて、ライブが終わった瞬間から地響きのようにその音が押し寄せてきて、あぁ英語じゃなくても音楽は通じるんだ、と実感しました。
─ ライブの後、現地の聴衆から感想を聞く機会はありましたか。
ジョン・レノンに似ていると言われた……。
似てないと思うんだけど(笑)。
─ ロンドン公演の後、アルバム「FUNKASTiC」 を発売されました。このタイトルは、公演直後に英国人の聴衆の方から「Fantastic!」と声 を掛けられたことがきっかけで付けられたものだそうですが、ロンドンでの公演が、この新作をつくる上で大きな影響を及ぼすことはあったのでしょうか。
すごく影響があると思います。「分かりやすく感情を表現すると伝わるんだ」という気持ちが、この新作に大きく影響していると思います。
2005年の初渡英時には1カ月、ロンドンに滞在。 レコーディングを行ったほか、ライブやミュージカル鑑賞などを満喫、ロンドンの日常生活を垣間見ることが出来た。一方、昨年の滞在日数はたったの4日間。自由時間はゼロで、ライブ以外、作詞作曲などの音楽活動も全くできなかったという。そうした多忙な中、スガには一つの印象的な出来事があった。
─ 昨年のロンドン滞在時には、郊外にある現地校に行かれたそうですが、その訪問の目的は何だったのでしょうか。
コベントリーにある女子高だったのですが、その学校の日本語学科のダン先生が、北海道に語学留学していた時分、ぼくのラジオ番組を聴いていたらしく、その番組を通してスガ シカオの音楽にはまったそうです。
そして英国に帰国してから、ぜひ、生徒にスガ シカオの音楽を通して日本語を勉強して欲しいと思い、教材に使い始めたということで、ライブをやることが決まった後、そのダン先生からメールが来たんです。それがきっかけで訪問することになりました。
─ 学校を訪問されて、具体的にはどのようなことをされたのですか。
かるく臨時先生をやったり、体育館でライブをやったりしました。日本語学科の生徒さんは250名ほどでしたが、皆さん、スガ シカオの曲をよく知っていてびっくりしました。
─ 英国の学生さんたちと触れ合って、どのような印象をもたれましたか。
みんな日本の独特の文化に憧れて、一生懸命日本語を勉強されていて、感心しました。と同時に、自分たちの文化にもっと誇りを持たねば ……と感じましたね。
ロンドン公演後、「分かりやすく伝える」という音楽作りのヒントを得て、アルバム「FUNKASTiC」 を制作。そして今年 11月、日本と世界をファンクでつなぐ、海外進出第 2弾となるライブの地を、再びロンドンと定めた。別の国、別の場所ではなく、敢えて同じ場所を周る決意を下したその理由とは、一体何だったのだろう。
─ 昨年に引き続き、今年もロンドンという場所を選ばれた理由は何ですか。
ロンドンという場所には、影響力もあるし、刺激もある。色々な場所でやるよりも、まずロンドンで地盤を固めたいという思いがありました。
─ 今回の公演では、選曲やバンドの構成など、前回とは異なる方向性を考えていらっしゃるのでしょうか。
色々、前回の経験を生かしたセット・リストや演出を考えているところです。
─ 今回の公演のテーマは決まっているのでしょうか。
テーマは、「スガ シカオ入門編」です。やりたいことがたくさんあって現在、様々なアイデアを練っているところなので、ご期待ください。
日本のライブでは、すべての曲を熟知したコアなファンが会場を占め、1曲目から皆が一体となって熱狂的な盛り上がりを見せる。スガの名前も知らず、「外国人のファンク・ミュージシャン」のうわさを聞いてふらりと立ち寄った、日本語も解せない客も多かったというロンドンで の海外デビュー・ライブで、スガが得たものは 多かったはずだ。何を感じ、何を得たのか。その答えは、それから一年後、同じ地で行う「スガ シカオ JAPAN ★ UK サーキット 2010」にこそ、あるのかもしれない。
14 November 2010
London O2 Academy Islington:
Doors: 7pm / Start: 8pm
Ticket Price: £18
www.ticketweb.co.uk
www.o2academyislington.co.uk/event/19244/suga-shikao-tickets