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Fri, 18 October 2019

豪華客船で往く旅の愉しみ

時間の使い方は千差万別

驚くほどに何の束縛もなく流れる船内の一日は、部屋の入口に置かれた「Daily Programme」をチェックすることから始まる。全船放送などほぼないこの旅での貴重な情報源となるリーフレットには、その日一日の航路や天候、各エリアのオープン時間、エンターテインメントの詳細までが事細かにまとめられている。逃せないイベントをざっとチェックしたら、朝食へ。食事は3食、客室カテゴリー別に用意された専用ダイニングへ赴くことになるが、ほぼ24時間オープンのビュッフェ「Lido」や、予約客のみ受け付けるフレンチ・レストラン「The Verandah」などを利用することも可能だ。ちなみに今回利用したのは最高峰の「Queens Grill」。次のカテゴリーに相当する「Princess Grill」とともにデッキ10に位置し、利用客以外はフロアへの立ち入りが禁じられている。豪華客船の最高峰と聞くと怖気づいてしまいそうだが、スタッフの、スマートさの中に親しみを含ませたサービスには堅苦しさの欠片もない。一方のゲストたちも、さすがに慣れた風情のカップルや家族が多いが、朝ともなればポロシャツやチノパン、ニットにスカートなど、かなりカジュアルな服装で一日の始まりを気楽に過ごしている。メニューはコンチネンタル風からフル・イングリッシュ・ブレックファスト、ときにはフィレ・ミニョンや和朝食まで用意されるという幅広さ。一日中船上という日には、ゆっくり時間をかけて味わいたい逸品ばかりだ。

食事が終わったら、図書室で本を読むも良し、カード・ルームでブリッジに興じるも良し。行動派は朝からジムで汗を流しているし、美を追求する女性たちはジャグジーで身も心も開放させている。午前中から夕方にかけてはパター・ゴルフのコンペ、ピラティスやハーブ療法のセミナーにボールルーム・ダンス(社交ダンス)のレッスンなど、参加型イベントが盛りだくさん。つい夢中になって、専用ダイニングの昼食時間に間に合わない、などということも。そんなときにはビュッフェでサンドイッチをつまんだり、ラウンジやホールで供されるアフタヌーン・ティーを楽しむこともできる。

夜の帳が下りると

緩やかに濃密な時間が過ぎ、やがて夕方6時を迎えるころになると、周りの様子が変わり出す。この時間を過ぎたらカジュアル過ぎる服装(デニムや短パン、サンダルなど)は避けるよう伝えられているので、皆、カジュアル・スマートに着替えて夜の時間がスタート。同じ空間でもほんの少しかしこまった空気が流れるのがまた面白い。こちらも少々おめかしをしてまずは夕食。朝とは打って変わってスーツや膝丈ドレスに身を包んだゲストたちが、ディナーの一品一品に舌鼓を打っている。メニューは前菜、サラダ、メイン、デザートそれぞれ数種の中から選ぶか、アラカルトから注文。カロリー控えめの「スパ・セレクション」もある。どれも街の一流レストラン並みの味とデコレーションだが、特にお勧めなのがアラカルト。鴨肉や舌平目はワゴンで運ばれ、目の前でソースと絡めて切り分けてくれる。付け合わせの野菜やソースの変更などにも柔軟に対応してくれるサービスぶりに、お腹も心も満たされる。

舌平目のグリルとデザート
舌平目のグリルと繊細な盛り付けが光るデザート

ディナーを心ゆくまで味わったら、次はエンターテインメント。点在するバーやカフェの前ではピアノやハープの生演奏が繰り広げられ、静かに話をしながら親しみやすいメロディーに耳を傾けている人たちがいる。英国風のパブ「The Golden Lion」で軽快なジャズの旋律が鳴り響いているかと思えば、「The Yacht Club」では深夜までDJが選曲するアップテンポな曲に合わせ、人々が軽快に踊っている。そんな中、特に人気なのは、「Royal Court Theatre」での催し物と、「Queens Room」で行われるボールルーム・ダンスだ。一夜に2回、音楽やダンス、演劇などの演目が催される劇場は、ウェスト・エンドにも引けを取らない本格派。今回の旅ではビートルズの人気曲をバンドが演奏するライブや、オケの生演奏付きのダンス・ショーなどが行われたが、ボックス席以外は無料ということもあってか、毎回立見客も出る盛況ぶりだった。そして豪華客船ならではのメイン・イベントとも言えるのが、ボールルーム・ダンス。バンドの生演奏を背景に、ライトアップされたフロア上に、腕を組んだカップルたちが滑り出す。プロ顔負けにフロア中を軽やかに回るカップルがいるかと思えば、まだ覚えたてのステップを試すように踊るカップルもいる。フロア近くのテーブルでは、曲が始まるや、一人で座っている女性たちに白いスーツを着込んだ男性たちが優雅に手を差し出してダンスを申し込む。彼らはダンス専門クルーで、一人で参加していたり(船ではソロ・ゲストと呼ばれる)、女性同士で乗船した人たちのパートナーになるというわけだ。互いに体を寄せ合い、仲睦まじげにステップを踏む老夫婦、エネルギーいっぱいの母親をスマートにエスコートする息子、時折耳元で何かを囁きながら笑い合うクルーとソロ・ゲスト――彼らが踊る様を1デッキ上のソファから眺めていれば、あっという間に時間が流れてしまう。ずっと船上にいるなんて、退屈ではないだろうか、そんな風に思っていた一日は、瞬く間に過ぎ去っていく。

「フォーマル」な世界を楽しむ

今回の旅では中日に唯一の停泊地ハンブルクに到着し、朝から夕方までの間、ゲストたちは観光ツアーに参加したり、各自で街の散策を楽しんだが、このクルーズ最大の盛り上がりは、その前夜にこそあった。気軽にクルーズを楽しめる客船も増えてきた昨今だが、あくまで歴史と伝統にこだわるクイーン・エリザベス号の船旅で、これぞ真骨頂ともいえるのが「フォーマル・ナイト」。上流階級の紳士淑女が夜な夜なパーティーを繰り広げていた19~20世紀当時の船上の様子を今に再現する。船旅初心者としては、フルレングスのドレスでなければならないのか、手袋は必須なのか、などと事前に心配してしまったが、夕方になって部屋の中で、用意したドレス(ふくらはぎ丈のブラック・ドレス、手袋なし)に腕を通し、化粧直しをしているうちに、不思議と心が躍り始める。一歩部屋の外に出れば、タキシードに蝶ネクタイの男性がロング・ドレス姿の女性を優雅にエスコート。少し意識的に背筋をピンとさせながらダイニングまで行くと、燕尾服を着たマネージャーが挨拶してくれる。いつも決まったテーブルで食事を取るため既に見慣れているはずのほかのゲストたちも、服装だけでなく立ち居振る舞いまでがどこか違う。優雅な気分で食事を終え、船内をそぞろ歩けば、皆、思い思いに「フォーマル」な装いを楽しんでいる。ネクタイ姿の男性もいれば、ひざ下丈のワンピースを着た女性ももちろんいるが、共通しているのは「TPOをわきまえ、かつ楽しむ」ということ。フォーマル・ナイトは堅苦しさではなく、ほんの少しの心地良い緊張と、高揚感を与えてくれる特別な夜なのだ。

フォーマル・ナイトはクルーも正装で
フォーマル・ナイトはクルーも正装で



 
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