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スマホ一つで病院予約も処方管理もOK
英国では10月から何度か郵便局の一斉ストライキがあり、郵送物到着の遅配が起こっているようです。クリスマス・カードの季節でもあり郵便物の配送の遅れは心配になりますね。そんな英国ですが、NHSではデジタル化が急ピッチで進められています。
多くの病院で、患者さんへ郵送案内という従来の方法からアプリへ移行されており、カルテも記録も電子化されつつあります。メジャーなアプリとしては「NHS App」でしょうか。すでにコロナ・ワクチンの接種記録に使っている方も多いかと思います。日本では2022年12月1日現在入国の際にワクチン証明書の提示が求められており、私が先月一時帰国をして入院中の身内のお見舞いに行ったときも、病院側から証明書の提示が求められましたが、このアプリには助けられました。
GPや病院のアプリをすでにお持ちの方もいるかと思います。診察や検査、手術などの予約関係は病院側、患者さん双方にとってやりやすくなったと感じます。従来の郵送による予約のお知らせでは、配送の遅延や患者さんの引越しなどで、予約の手紙がうまく届かないこともありました。また、「連絡先に電話しても誰もスタッフが出ない」などのストレスがあった従来のやり方と比べ、予約の変更や確認をしたい患者さんにとってストレスは減ったかと思います。もちろん今でも予約などの手紙の郵送は行われていますが、ペーパーレスへ徐々に移行されています。
このアプリが適用される分野は多く、個人的に素晴らしいなと思ったのが妊婦さん向けのものです。検診の日程、検査内容やバース・プラン、出産方法の希望、妊娠、出産まで流れもスマホ一つです。今の妊婦さんの年代だとアプリになじみがあるでしょうし、ペーパーレス化はさらに進んでいく分野でしょう。また外来検診の一部として「ビデオ診察」も普及しています。もともとコロナ・ピークのころに対面診察の代替案として使われていた方法ですが、最近では診察の一つとして定着しつつあります。もちろん対面検診が必要とされる場合も多いのですが、条件によっては手術後の外来検診などでも使われます。通院や待ち時間もなく、仕事をしている人でも休憩時間を使って手軽に検診を受けることができます。
コロナ中から普及した一つに、デジタルの範囲とはいえませんが電話検診も挙げられます。私も何度か仕事の休憩中や外出先から電話検診を受けたことがありますが、本当に便利になったと感じました。ビデオ診察の難点は使い方の分からない、あるいはスマホを持っていない患者さんも少なくないことですが、家族の手伝いなどでビデオ検診に対応される方も増えています。服用薬の処方、管理もアプリ対応しているGPや薬局も増加しています。この処方薬のアプリは医療者側にとってもありがたいもので、例えば入院前や手術前の患者さんに服用薬の確認をするのですが、患者さんが処方薬のアプリを提示してくれると時間の節約にもなります。NHS医療は患者さんにも働く側にとっても不満を感じる点もあると思いますが、デジタル化はこの不満を軽減する「ゲーム・チェンジャー」だと感じます。まだまだ完全デジタル化とはいえないものの、さらに普及していくことを願っています。