instagram Facebook ツイッター
ロンドン生活便利サイト neconote
Fri, 13 December 2019
jojihirotaさんデザイナー・ブックバインダーズ
正会員 製本家
國方コックラムみどりさん

[ 前編 ] まだ糸で綴じられていない、印刷され、折られただけの紙の連なりを一冊の本にする。いくつもの時代を超えて慈しまれてきた本に新たな息吹を吹き込む。美術工芸製本の専門家として活動する國方コックラムみどりさん。ここ英国でも珍しい「製本」の世界に足を踏み入れるきっかけとは一体、何だったのだろう。全2回の前編。
プロフィール
くにかた・こっくらむ・みどり - 東京都生まれ。女子美術大学芸術学部芸術学科卒業。同大学勤務のかたわら、「製本工房リーブル」にて製本を始める。ロンドン郊外サリーのギルドフォード・カレッジ・オブ・テクノロジーで「美術工芸製本と修復」コースを履修。帰国後は同大学に復職するも、1996年に再び渡英。ロンドンに製本スタジオ 「JADE BOOKBINDING STUDIO」を開設する。主に英国、米国のブック・コレクター依頼による美術工芸製本の制作及び英国内、ヨーロッパ、米国、日本にて製本のワークショップを行う。デザイナー・ブックバインダーズ正会員。製本家協会(The Society of Bookbinders)会員。 東京製本倶楽部会員。
http://jadebookbindingstudio-jadestudio.blogspot.co.uk

 

表紙が訴えかける物語

かつて出版社や新聞社が軒を並べたロンドンのフリート・ストリート近くに、世界有数の印刷関連の蔵書を誇る図書館や展示室、小劇場などを備えた総合施設、セント・ブライド基金がある。こぢんまりとした展示室で出迎えてくれたのは、ガラス・ケースに陳列された本の数々。表紙の表裏が見えるように広げて並べられたそれらの本は、シェイクスピアに関連したものばかりだ。叫ぶ男の姿をシンプルな表紙に釘で傷つけたかのように刻み込んだ「オセロー」や、40冊のシェイクスピア全集の豆本を環状につなげて円形劇場グローブ座を模した箱に収めた「一冊」まで、100冊近くの本の表紙たちが、雄弁にシェイクスピアの物語を囁いている。静けさの中に濃密な空気が漂う、不思議な空間。英国の由緒ある製本家協会「デザイナー・ブックバインダーズ(DB)」による第2回国際製本コンペティションで選抜されたこれらの作品はこののち、ヨーロッパ各都市を巡回、2014年には日本での展示も予定されている。

「今回のコンペティションは、シェイクスピアに関連する本を参加者が自由に選んで装丁を施すというもの。私は『シェイクスピア物語』という、子供向けに簡潔にまとめられた本を使い、その中の物語の一つ『夏の夜の夢』から発想を得てデザインしました」。暁色に染まった森の中で妖精たちが光の粉を巻き散らしながら飛び回っているような本を前に語ってくれたのは、ロンドン在住の製本家、國方コックラムみどりさん。本の装丁というと、一般的な書籍のカバー・デザインを想像するかもしれない。しかし國方さんが手掛けるのは、主に英国や米国のブック・コレクターたちから持ち込まれる希少本や年代ものの本の装丁や修復だ。

シェイクスピア物語
「夏の夜の夢」から発想を得て制作した「シェイクスピア物語」

教育と創作の同時進行

國方さんが製本の世界に初めて触れたのは、母校である女子美術大学に勤務していたころだった。「グラフィック・デザイン科の工房授業で、活字印刷の授業を担当していました。名刺やカレンダーを制作していたのですが、印刷した紙を本にしたいという要望があって。でも当時は製本を教えられる人材がいなかったので、研究室からの派遣という形で製本工房に習いに行きました」。そこで製本の奥深さに魅せられた國方さんは、本場欧州でさらなる研鑽を積むために同大学の海外研修制度に応募。ロンドン郊外サリーにあるギルドフォード・カレッジ・オブ・テクノロジーの「美術工芸製本と修復」コースで2年間、学んだ。卒業後は大学に復職したが、4年経ったころ、留学時代の同級生である製本家のマーク・コックラム氏と結婚し、1996年に再び渡英。これまで身に付けた「人に教えるという経験」と「製本の知識」を結び付け、製本スタジオを開設した。滑り出しは上々で後にプロとして活躍することになる人材も育てたが、プロの製本家として独り立ちするため、同時進行でもう一つの道を歩み始める。それがDBへの入会だった。

製本スタジオ
ロンドン西部にあるスタジオに置かれたプレス機とボード・カッター

正会員、準正会員というヒエラルキーが存在する同協会の正会員になれば、英国内外で行われる展示会の展示メンバーとなり、展示会を訪れるコレクターたちとのつながりができる。しかしそれだけにその道のりは厳しかった。作品審査と面接を経てまずは準正会員に、そして定期的に行われるコンペティションに参加し、5年(現在は7年)以内に試験を受けて合格すれば正会員へ。「個人的には教えることの方が好き」という國方さんだったが、このときばかりは「日々精進、切磋琢磨」して数々の展示会で作品を発表し、見事正会員となった。

 
  • Facebook

2020年 カレンダー販売
キャリアコネクションズ ゲンダイ・ゲストハウス
バナー バナー

ロンドン・レストランガイド ブログ