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Tue, 20 August 2019
一川響ヤクルトUK 社長
松原弘泰さん

[ 後編 ] 英国人にとっては未知なる存在であるヤクルトを理解し、購入してもらうためにはどうしたらよいか。敢えて場所を限定した販売手段や潜在顧客にダイレクトにアピールするユニークな広告宣伝を通じて、少しずつ英国の人々の心をつかんでいく松原さんたちの奮闘を追う。全2回の後編。

前編はこちらから


プロフィール
まつばらひろやす - 1959年4月5日生まれ。長野県出身。青山学院大学経営学部卒業後、日系証券会社へ入社。国内支店勤務の後、89年から95年までロンドンの現地法人で勤務。95年にヤクルトUK入社。2001年に同社取締役、03年に同社社長就任。英国及びアイルランドでの販売活動とおなかの健康についての啓蒙活動を行う。ヤクルト社は現在、世界33カ国で販売を展開。欧州においてはオランダにあるヨーロッパヤクルト株式会社が有する工場で商品を製造、各販売株式会社へ輸送している。
www.yakult.co.uk
 

「販売網は広げないでほしい」

1996年に英国での販売が始まったヤクルト。英国人にはネガティブな印象を与えかねない「バクテリア」入りの飲料を浸透させるため、松原さんたちがまず取り掛かったのが、商品PR手段の確保だった。

ヤクルトと言えば、家やオフィスを訪問して商品を販売するヤクルトレディの存在が欠かせない。商品販売を行っている世界33カ国のうち、日本はもちろん、中南米やアジア諸国などでもヤクルトレディが活躍しているが、ここ英国では雇用形態やセキュリティ意識の違い、また共働き家庭が多いことなどが理由でこのシステムを採用していない。そこで潜在顧客と直接コミュニケーションをとるための新たな手段となったのが、スーパーのデモ・スタンドだった。所得層の観点から、初期の販売エリアはイングランド南東部のみ。スーパーの一角にデモ・スタンドを設け、「お客様に理解してもらえるよう会話する機会」を設けた。「説明商品」だから販売網は広げないでほしいとスーパー側に頼んだところ、「全国区にするといっているのに変わった会社だと思われた(笑)」。こうしたデモ・スタンドでの販売や、欧州諸国では珍しいミルクマン(牛乳配達人)を通じて、ヤクルトは徐々に英国における認知度を上げていった。

シンポジウムを通して予防医学を追求するのも仕事の一つ
シンポジウムを通して予防医学を追求するのも仕事の一つ

日常生活のあちらこちらに

英国の人たちにとにかくヤクルトの存在を知ってほしい――そのために松原さんたちが力を入れているのが、広告宣伝だ。多様な媒体を使って商品をアピール。「朝起きてテレビを観たら宣伝が流れていて、通勤時には駅でポスターを見かけて、そして昼時にスーパーに行けば棚にある」と潜在顧客が一日中何らかの形でヤクルトを目にするよう宣伝活動を展開。特にユニークなのがここ2年行っているというロンドン地下鉄での掲示広告だ。「通勤で地下鉄に乗られるときって皆さん、いつも同じ位置に立つじゃないですか。そのときに本も新聞も読まず音楽も聞かないとなると、目の前の人を観察するか車内の広告を見ることになる。後者になると座っている間じゅうその広告を見ているわけで、その間ずっとヤクルトのイメージが残るわけです(笑)」。広告をクイズ仕立てにしたところ、賞品すら用意していなかったにもかかわらず、答えを送ってきてくれた人が2000人を超えたという。

ヤクルトUK
地下鉄駅構内に掲示されている広告

余暇の時間には、ジムで汗を流し、「散歩という名のパブ通い」を楽しむ松原さん。とはいえ、やはり仕事のことは常に頭の片隅にあるようだ。「毎週スーパーに行って、食品売り場の通路を回って人のカゴをのぞくのが大好きです(笑)。プライベート・ブランドのみ買っている人がいたり、オーガニック商品で固めている人がいたり。パンや水だけを大量に買っている人はカフェでも経営しているんだろうな、などと考えて、モチベーションを膨らませています。いわば『定点観測』ですね」。

多種多様なブランドの乳酸菌飲料がスーパーの飲料品売り場にところ狭しと並んでいたブームの時期は過ぎた。数十種類あったこうした飲料も、今では数えるほどに減ったという。それでも新規参入が難しい今こそが、顧客獲得の好機なのかもしれないとも思う。「定点観測」を通じて、広告や独自の商品販売を通じて、「顧客との接点を密にする」ことでヤクルトの認知度向上に努める日々。「乳酸菌と言えば思い浮かべるのがヤクルトであってほしい」。私たちの日常生活のあちらこちらに顔をのぞかせるあの小さな飲み物には、松原さんたちのそんな思いが込められている。

 
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