第6回 ジャパニーズ・プロフェッショナリズム
21 October 2010 vol.1272
Tシャツを製作。今回は日本・スペイン・
ツアーでした
ロイヤル・バレエ団では毎年夏、定期的に4〜5週間の海外公演を行っている。入団してから早14年、ヨーロッパの国々はもちろん、アメリカ大陸、アジアなど、バレエ団と共に訪れた国は数十カ国になり、パスポートに押されたスタンプもバラエティーに富んでいる。たまに古くなったページを見ては、素敵な思い出を振り返っている。
自分は海外公演が大好きで、この時期になるといつもわくわくしてしまう。行く先々での出会いも好きだし、その土地の食べ物を食べ、異国を感じながら大好きなバレエを出来ることに、幸せを感じている。他の国の文化に触れ、ロンドンでは味わえない舞台を楽しむことが出来、舞台作りから本番終了まで雰囲気ががらっと変わる様を感じるのも、楽しみの一つである。
今年2010年は、日本で公演が行われた。
日本と言えば、舞台スタッフのプロフェッショナリズムの高さがとても有名。音響、照明、衣装、装置転換など、常に完璧を目指す彼らの気迫には、いつも圧倒される。ロンドンなどヨーロッパの国では、舞台作りに時間を取られスケジュールが押すことなども多々あるが、日本ではそんなことは一度も無い。一度舞台作りが始まれば必ずスケジュール通りに時間が進むし、衣装の用意も万全。一つの舞台にかける集中力がとても高く、舞台での転換もとてもスピーディーに行われ、今回の公演は毎日大成功だった。
日本人のプロフェッショナリズムに押されたか、自分を含めたロイヤル・ダンサーの集中力もすごく高かった。自分たちは唯一、お客さんから見える立場にあるからこそ、見えなくても戦っている人たちの気持ちを大切にしようと、皆の気持ちが一つになっていた。
今回の公演での演目は、前にも紹介したことのある「ロミオとジュリエット」。そしてそこで演じた役は、もちろんロミオの友人、「マキューシオ」だ。
日本へ帰るのは2年ぶりだったせいもあり、帰国前から楽しみにしていた。本番当日前は興奮しすぎて眠れなかったくらい、緊張もした。心のどこかで日本人としてのプライドを大事にしようと、役風も和をキーワードにしていた。
「ロミオ」のコラムのときに紹介した「草間」と「健」はもちろん、中学、高校時代の親友たちに家族も駆けつけ、ロンドンで遊んでいた悪友陣も一挙勢揃い。心も体も気合い十分だったし、駆けつけてくれた人たちに舞台上から感謝の気持ちを送ろうと、いつになくがむしゃらに踊ってきた。喧嘩のシーンの前にはおにぎりまで食べ、気持ちは「in Japan」。みんな以前書いたコラムを読んでくれていたので、とても楽しむことが出来たと感無量の様子だった。
北海道の田舎から異国の地に行き、人生の半分を過ごしたが、これからもまだまだ学ばなければならないことがたくさんある。今回の帰国では、仕事に誇りを持ち、文化を楽しみ、挑戦し続けるジャパニーズ・プロフェッショナリズムを肌で感じられたのも、大きな収穫だ。
今、自分はプロのダンサーだ。ジャパニーズであるという誇りを持ち、自分の気持ちを舞台から伝えられるよう、これからも挑戦し続けたい。