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Sat, 07 December 2019

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 小林ひかる

第17回 バレエの美、トウシューズ

6 October 2011 vol.1321

バレエの美、トウシューズ
バレエの美を体現するトウシューズ。
左が本番用に手を加えたもの、
右が新品です

トウシューズ、またはポアント・シューズとも呼ばれる、女性専用のバレエの靴。クラシック・バレリーナの象徴とされるこの靴の歴史はかなり古く、1832年頃から使われ始めたと言います。イタリア人バレリーナ、マリー・タリオーニが「ラ・シルフィード(妖精)」 と呼ばれる作品を、トウシューズを履いて最初から最後まで踊り切ったのが最初で、それ以降、このつま先立ちの技法が、現在に至るまでバレエで利用されています。

なぜ女性だけしかトウシューズを履かないのかという点に関しましては、妖精のような軽やかさを出すために作られた靴なので、男性のダンサーには必要ないということでしょう……(たまに、コミカルなバレエでは男性もトウシューズを履くことがありますが)。

私たちクラシック・ダンサーにとって、このトウシューズは必要不可欠な職業道具であり、この靴の良しあしでその日の舞台の出来が左右されてしまうこともたびたびあります。

簡単にトウシューズの構造を説明しますと、材料としては布、厚紙、革からできています。私が履いているトウシューズは、世界で最も多く使われているとも言われる、英国フリード社の製品です。手作りのため、作る職人さんによりそれぞれ特徴があり、同じ製品でも履き心地などが微妙に異なるので、自分の好みに合う靴作りの癖をもっている職人さんを選びます。そしてその方が、自分担当の靴職人さんとなるのです。プライベート・デザイナーを持つような感じでしょうか?

それでも毎回、全く同じように作れるわけではないので、本番に履く靴は慎重に選びます。それに加えて、できあがった靴をただポンっと履けばよいというものでもないのです。

靴が脱げないように、リボンやゴムを自分の好みの位置に付けたり、靴の外側にすり減り防止の枠を縫い付けたりしなければならなく、一足のトウシューズが履けるようになるまでには、かなりの時間と手間がかかります。ようやく準備が整った後は、人それぞれではありますが、私は個人的に、自分の足になじませるため、試し履きをした後に、少しでも長持ちさせるため、つま先部分と中敷きにニスを流し入れて強化します。こうしたプロセスを経て、ようやく本番に履ける靴の候補ができるのです。

全幕物の長いバレエ作品の主役を踊る場合は、人によっては舞台ごとに10足以上の候補を用意し、幕ごとに履き替える人もいます。トウシューズは衣装の一部と思われがちですが、踊っているときは私たちの体の一部となるため、合わないトウシューズで踊っているときはなんとも気持ちの悪いものなのです。

「バレエの美はつま先に宿る」と言われるように、クラシック・バレエではつま先の美しさがとても重要視されます。トウシューズと一体化した、しなるつま先ほど美しいものはありません。

学校時代には、「つま先で物語を語れるようになりなさい」とよく言われたのを今でも覚えていますが、それが実際にできるダンサーとなると、世界に数える程しかいないでしょう。

つま先はバレエの美を構成する重要な一部というのはもちろんですが、でもそれだけではありません。トウシューズを脱いだバレリーナの裸足を見たことがありますか? 美とはうって変わったものが目に飛び込んできますよ!

 
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小林ひかる
東京都出身。3歳でバレエを始める。15歳でパリ、オペラ座バレエ学校に留学。チューリッヒ・バレエ団、オランダ国立バレエ団を経て、2003年から英国ロイヤル・バレエ団に入団。09年ファースト・ソリストに昇進した。
今後のスケジュール
「Ashton's mixed program (La Valse)」 3月12、15、21日
「Apollo / New Wheeldon / New Ratmansky (Apollo)」 3月22日 から
(予定は突如変更になる場合があります)
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