第22回 温度戦争
子育てに関して、父親と母親の意見が対立するのは自然なことなのかもしれない。我が家では、息子のお風呂タイムになると、必ずと言っていいほど私と夫の間である衝突が起こる。その名も、「温度戦争」。
北国スコットランド育ちの夫は、非常な暑がり。東京に住んでいたときなどは、夏場は夜通しエアコンをつけ、寝室を冷蔵庫のようにキンキンに冷やさないと眠りにつけなかった。そんな彼の傍らで、温暖湿潤気候育ちの私は、冬用のパジャマに毛布を何枚もはおり、虫のようにうずくまって寒さをしのいで寝た。体感温度が違いすぎるのだ。そして、これが温度戦争の原因となっている。
私がベビー・バスのお湯をはると、「お湯が熱すぎる! 子供を火傷させる気か」とまくしたてる夫。一方、夫が水を足すと、「これではぬるすぎる! 子供が風邪をひいてしまう」と応戦する私。「あなたの肌には熱すぎるかもしれないけれど、○○(息子の名前)は半分日本人なんだから」「英国生まれの、半分英国人だぞ」。このような応酬が、毎回のように交わされるのだ。
ベビー・バスの水温が適温かどうかを色で示してくれるお風呂温度計が売られているのだが、この温度計は英国仕様、つまり、日本人の私からしてみればかなりぬるめに適温が設定されている。日本では、ベビー・バスなど使わず、普通のお風呂に大人と赤ちゃんが一緒に入るのが一般的のようだが、英国のお風呂温度計が適温と定義する水温のお風呂に私が入ったら、水風呂じゃないかと思うだろう。が、夫はこのお風呂温度計をふりかざして、自分を正当化する。
他の国際結婚の家庭ではどうしているのかと思い、私より数カ月前に出産した日本人の先輩ママさんに、「温度戦争、起こりませんか?」と訊いてみた。すると、「うち、日本から持ってきたお風呂温度計使ってるから」との答え。そうか、その手があったのか! しかし時すでに遅し……。