第7回 妊婦を旅に駆り立てるもの
以前つわりについて書かせてもらったが、つわりが落ち着いて安定期に入った頃、多くの妊婦に共通してみられる行動がある。それはずばり、旅行。「ああ、やっと安定期に入った」という解放感と、「今後数年間は旅行などろくにできないのでは」との焦燥感が妊婦を旅行へとかき立てるのだ。
ただでさえ天気も悪くて物価も高い英国生活のストレス解消法と言えば、隣国への海外旅行。妊婦友達Yちゃんも、フランス日帰り旅行やらイタリア長期旅行やら、忙しく海外に出掛けていたっけ。我が家では夫の仕事が忙しく、残念ながら海外旅行は行けなかったものの、国内旅行には何度か出掛けることができた。
ロンドン暮らしの利点は、海のすぐ向こうに魅力的な観光都市があることだと言われるけれど、国内旅行も捨てたものではない。大気汚染むんむんのロンドンを離れ、緑豊かな郊外へ出るだけで心が洗われるものだが、風景だけでなく、文化や人々のトーンも違う。ロンドンはあくまで英国の一部に過ぎないのだ、と実感するひとときだ。
私のお気に入りの旅先は、すでに何度も訪れているスコットランド。歴史と伝統、穏やかなアクセントで話す気さくな人々。首都エディンバラは昨年、ロンドンに次いで最も多くの外国人旅行者を集めたそうだ。
食欲増進期まっただ中の妊婦にとって、旅行先の食も楽しみの一つ。こってりした伝統英国食もなんでもこいだ。ただ、アルコール御法度の身であるため、地酒が楽しめないのが難点。スコットランドの小島で泊まったホテルでは、地元の蒸留所で作られた名産ウィスキーがサービスとして振る舞われたが、涙を飲むしかなかった。次回訪れた時こそは……って、それこそ何年後になるのかな?