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Fri, 19 April 2024

スチュアート・ピアース英国統一チーム監督インタビュー

開幕まであと半年を切ったロンドン五輪に向けて、英国ニュースダイジェストでは関連情報を随時掲載していく。今回は、52年ぶりの英国統一チーム結成で話題を集めるサッカー男子に注目。同五輪代表を率いるスチュアート・ピアース監督へのインタビューを、2回に分けて掲載する。

取材: 小杉敏之/東京中日新聞 
コーディネート: BAREFOOT COMMUNICATIONS LTD 
翻訳・編集: 大塚麻里ほか

スチュアート・ピアースStuart Pearce MBE
1963年4月24日生まれ、ロンドン出身。2012年のロンドン五輪サッカー男子監督を務める。ファビオ・カペッロ監督率いるイングランドA代表のコーチと21歳以下の選手で構成されるU-21代表の監督を兼任。現役時代はイングランド代表の主将も務めた。

ロンドン五輪サッカー男子代表選手の選考基準は何ですか。

サッカー男子においては、オーバーエイジ枠の選手3人を含む23歳以下の選手全18人、加えて補欠4人を選出することになっています。とりわけ、今夏開催のUEFA欧州選手権に出場する代表選手を注視しておかなければなりません。

というのも、私たちが抱える課題の一つとして、五輪開催前に行われる欧州選手権の出場選手を、五輪にも出場させるべきかどうかを決める必要があるからです。彼らは、昨年から続く国内リーグにおいて10〜11カ月にわたってプレーした後で、今度は6月いっぱいを欧州選手権に費やすことになります。引き続き7月8日から五輪代表選手団に参加することは、あまりに大きな負担となる可能性があります。

北アイルランド、スコットランド、ウェールズといったイングランド以外のサッカー協会は英国統一チームの構想に反対を表明していますが。

個人的には、それらすべての国が協力してくれることを望んでいます。また五輪に出場するか否かを最終的に決めるのは、個々の選手の五輪に対する意欲や気持ちであるとも思います。イングランド以外の各国のサッカー協会は、確かに英国統一チームの結成について好印象を持っていません。反対理由の一つとして、各協会の持つ独立性が失われてしまうことを恐れているというのがあるのでしょう。加えて、英五輪協会はイングランド・サッカー協会に英国統一チームの監督を選出する機会を与えましたが、それが他国のサッカー協会の反感を買ったのかもしれません。まあ、このあたりは私の憶測に過ぎませんが。各サッカー協会の懸念はある程度は私も理解できますが、一方で今回の五輪を取り巻くサッカー界の状況はやや混乱しているのではないかとの印象を受けています。

私にとっては、政治とサッカーは全く別のものです。この2つは決して混同すべきではありません。大切なのは、五輪で我々のプロフェッショナリズムを見せつけることだと思います。また18人の選手全員と補欠の選手に、満員になった会場でプレーするチャンスを与えることが重要です。選手たちにとって最高の経験となるでしょう。

イングランド、北アイルランド、スコットランド、ウェールズの各国から少なくとも一人選出する予定なのでしょうか?

まず、私は「政治的な理由のために、各国から選出すべきだろうか」と考えを巡らせてみました。しかし、そのような選考基準は、選手たちに対して結局、不公平であるとの結論に達したのです。だから出身国にかかわらず、選手の個々人としての能力を判断していくことになるでしょう。その結果、一国から全選手を招聘したものになっても、あるいは各国出身選手が混在したものになってもどちらでも良いと思っています。可能性としては、2〜3カ国からの出身選手だけで英国代表が構成されることもあり得ます。ただチームの構成がどのようになろうとも、皆同じユニフォームを着た、英国代表の選手であるということには変わりありません。

英国統一チームへの参加を積極的に望む選手を選出するのでしょうか。

現時点では、我々の方から選手に連絡を取って、書類を送り、英国統一チームの選手として選考されることを望むか否かの回答を求める、というのが公式な過程となっています。この作業はもうすぐ開始されるでしょう。その結果、五輪に参加したくないと言う選手がいたとしても構いません。でも、そのような考えを持つ選手はあまりいないのではないでしょうか。皆参加したいと思うでしょう。およそ250人の選手に打診する予定です。

各サッカー協会の要望などに優先して、そうした選手の決断が尊重されるべきだと考えていますか。

こうしたあらゆる大きな大会が巡ってきた際に、監督として私が取り入れる基準は、選手の経験と選手自身にとってのメリットです。そして自分自身に対して、「もし私がまだ現役選手であったら、英国統一チームのメンバーとして、母国で五輪に参加する方がいいか、それとも代わりに所属クラブに留まり、シーズン開幕前に行われるいくつかの親善試合でプレーする方がいいか」と問い掛けるでしょう。自分がどちらの道を選ぶかは明らかです。ご存知のように、私はロンドンで開催された欧州選手権の1996年大会でプレーする幸運に恵まれましたが、それはサッカー選手としての私の人生において最高の経験となりました。代表チームのメンバーのほとんどが若い選手になるかと思いますが、そうした若い選手へ与えられるチャンスを、私も、またどの国のサッカー協会も奪うべきではありません。

ワールド・カップが一大イベントとなっているサッカーにおいて、五輪に参加する意義とは何でしょうか。

第一に、母国でこのような大会に参加できる機会はあまりありません。この国で五輪を開催できるなんて、私たちは本当に幸運に恵まれていると思います。我々は、国民的スポーツであるサッカーを五輪で紹介することができるのですから。できるだけ長く五輪の舞台で勝ち残り、注目を集めることができたらと思っています。

こんなチャンスは、人生で一度しか来ないでしょう。私がこれまで会話を交わした選手の多くは、五輪をワールド・カップやそのほかの主要な大会から独立した、それ自体で楽しむための大会であると見なしています。ワールド・カップや欧州選手権の重要性は分かっています。なぜなら、私はかつてその舞台でプレーしていましたし、また監督としても参加したことがあるからです。ロンドン五輪に関しては、どれほど注目を集める大会になるか、想像すらできません。サッカー男子が英国統一チームとして五輪に参加するのは1960年以来のことですからね。ものすごい注目を集めるのではないでしょうか。



 

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