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Tue, 03 December 2024

Euro Tour: London, 20 October 2018 今度のライブは僕の集大成であり、
新たなスタート
布袋寅泰

布袋寅泰

前回のロンドン単独公演から早3年。ミュージシャン、父親、そして一人の男としてロンドンに生きる布袋寅泰さんの、待望のライブがロンドンで10月に開催される。公演に先立ち、英国生活が生んだ「新しい音楽スタイル」について布袋さんに話を伺った。
(取材・文:ニュースダイジェスト編集部 / 写真:富岡秀次)

Tomoyasu Hotei 1962年2月1日生まれ。群馬県出身。81年にロック・バンド「BOØWY」のギタリストとしてデビュー。88年の同バンド解散後はソロ活動を本格化。クエンティン・タランティーノ監督の映画「キル・ビル」のメイン・テーマとなった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」は、英国のiTunes Store の音楽部門で1位を獲得した。2012年8月に家族とともにロンドンに移住。今年の10月7日より欧州ツアーを開始し、最終日の同月20日に3年ぶりのロンドン公演を行う。 http://www.hotei.com

自分自身に退屈したら
アーティストとしておしまい

ロンドンに住んで今年で6年目となりますね。

移住当時、僕が50歳で、娘は10歳。周りからは、もう成功しているのだから日本にいれば何の問題もなく過ごせるのにと言われたけど、ミュージシャンとして、世界という新たなステージに挑戦してみたかった。自分自身に退屈したらアーティストとしておしまいだなと思っていますから。

また、娘に様々な人種や異なる価値観のなかで育ってほしいという、父親としての願いもありました。今では流暢なブリティッシュ・イングリッシュを話すようになり、そんな姿を見て頼もしいと感じています。

ロンドンという街は、世界のなかでも群を抜いて多国籍社会ですよね。来たばかりのときは「自分は日本人だ」なんて特別な意識を持っていたけれど、外見も言葉も違う人がたくさんいるロンドンのバスに乗っていると、自分もそんな多国籍の要素を構成する一つのパーツなんだなって思えてくる。不思議な話ですが、赤の他人と親密な繋がりを感じることができるんです。最近はその事実にむしろ安心感さえ覚えているんですよ。

移住には不安もあったし、今でももちろん大変なことはあるけど、この5年間で家族全員がタフになったかな。あのときの選択は間違っていなかったと、6年目を迎え実感しています。英国での暮らしで日々感じる喜びや苛立ちは、きっと読者の皆さんと同じなのではないでしょうか。

音楽に対する気持ちに変化はありましたか。

過去の曲を振り返ってみると、音を詰め込み過ぎていたなと思う。装飾過多になるのは、勤勉で繊細な日本人気質ゆえなのか。英国人の音作りはディテールより骨格を大切にし、ダイナミックで芯がある。会話でも、それぞれが自分の核となる部分を大切にしていると感じますね。その中にいることで、自分の考え方や曲作りに対する姿勢は自然と変わっていった。ポジティブな変化だと思いたいです。

Hotei Tomoyasu

この3年間で生まれ変わった
「最新の布袋寅泰」を聴いてほしい

前回のロンドン公演から3年経ちますね。

できれば毎年ライブをやりたいけれど、長いキャリアもあってか、作品作りのハードルが年々上がり、より時間をかけたくなってきている。僕の最愛のアーティスト、デービッド・ボウイの最後のアルバム「ブラック・スター」を聴いたとき、作品はアーティストがこの世に生きた証として残るものだから、ライブとは違った意味で大切なものだ、ということに改めて気付かされた。

また制作に加え、日本での音楽活動も忙しく、ライブ活動とスタジオ・ワークだけであっという間に時間が過ぎ去ってしまった。振り返ってみれば中身のある濃い3年だったので、この年月で成長した新たな姿を皆さんに見てほしい。  

今回選んだ会場シェパーズ・ブッシュ・エンパイアはオペラ・ハウスの作りになっていて、音の響きがとてもいい。大きな会場だけど、ステージとお客さんとの距離感も良く、2階の観客もはっきり見えます。今回は、軽快なロックだけではなく、スローなバラード、幻想的なインストゥルメンタルなど、様々なスタイルのギターをじっくり楽しんでもらえるように、すべてシート席にしました。

てっきりロック感満載のライブかと思っていました。

海外という舞台で自分の音楽をアプローチしていくうちに、ロック特有のアグレッシブな演奏だけではなく、僕の可能性をギターに託すような、今までにないスタイルを発見することができた。この重要な過程で、イタリアの国民的アーティスト、ズッケロが僕の奏でる音楽に目を留めてくれたことは大きかったと思う。僕は彼のコンサートにゲストとして招かれたことがあるんだけど、その当時ヨーロッパでの活動歴はまだ浅かったので、僕のことをよく知らない人たち、つまり何の先入観も持っていない2万人の観客の前で演奏することになったんです。僕は踊りながらギターを演奏したんだけど、みんなすごく反応してくれてね。そのとき、自分のスタイルは海を越えて伝わるんだって確信できた。海外で演奏するときは、歌よりギター・プレイの比重が大きいかな。日本にいたころとは別のベクトルで、今は音楽そのものを自由に楽しめていると思う。 

今回は、僕のキャリアを飾ってきたBOØWY やCOMPLEX時代の懐かしい曲や代表曲に加え、ある種、成熟したと言えるような大人も楽しめる深みのある新しいサウンドを、ホーン・セクションも加えた10人編成の華やかなバンドでお届けします。たぶん皆さんの持つイメージと違う音楽を披露できるのが、このロンドン公演だと思ってます。

日本へのライブ配信も行うそうですね。

音楽業界におけるテクノロジーの進歩は目覚しいものがあります。ここ数年で、アジア諸国の優れたアーティストたちが、世界を席巻してますよね。K-Popというジャンルも今や皆知っていますし、この現象はテクノロジーありきのことだと思うんです。

それから先日、ローリング・ストーンズのライブに行き、ロックを創生した人たちがあの年齢を迎えても生々しく、また技術と共に進化し続けている姿を見て、常に前向きに変化していくことの大切さを強く感じた。今この瞬間を楽しみつつ、新しいものにも敏感でありたいですね。今回は、最先端のテクノロジーを使って、ロンドンの熱気を日本の皆さんにもお伝えします。

この公演にかける意気込みを教えてください。

「やってやるぜ ! 」と気合満々ですよ(笑)。僕は常に「最新の布袋が最高の布袋」を信念に活動してきました。本公演は紛れもなく「最新の布袋」であり、僕の集大成、そして同時に新しいスタートでもある。ファンだけでなく、初めて聴きに来てくれる方にも僕の「今」を伝えたい。ロンドンに移住して6年、プロとしての36年というキャリアで培った様々な経験を通し、自分のパフォーマンスに今、誇りと自信を持っている。力まず、ナチュラルに演奏すれば必ず観客に届くと信じています。

英国へ単身赴任中の人、英国に留学している若い人、たまたま旅行に来ている人。英国やロンドンを愛し、また日本の良さを忘れず、今この瞬間を夢に向かって頑張っている人たちと、一人でも多く音楽を分かち合いたい。それぞれの楽しみ方で、音楽を聴いてほしいですね。

Hotei

可能性に対してオープンでありたい

今後の新たな挑戦についてお聞かせください。

これまで自分で道を切り開いてきたけれど、タランティーノやストーンズ、デービッド・ボウイ、ズッケロなどのビッグ・ネームとの出会いが人生を変えてくれたことも事実。そんな豊かな経験を大切にしつつ、これからは無名でも実力のある若手アーティストと積極的にコラボしたいと思っています。あらゆる可能性に対してオープンでありたいし、それを受け入れ、自分を生かせる実力を常にキープしていたいです。隣の家に歌がうまい子がいたら、ぜひ情報をお寄せください(笑)。

僕はレコードをセールスするとか、大きな会場でライブを成功させるとか、そういう結果だけを求めて音楽をやってるわけでは決してないんです。なかなか思うようにことが広がっていかないこともあるけれど、一歩一歩の積み重ねが必ずチャンスを生むと信じています。

最後に、ロンドンに住むことについて率直なご意見を教えてください。

それは「むかついたこと」って意味かな(笑)。笑えるようなエピソードはたくさんありますよ。Wifiがとにかく遅いから、日本から送られた映像データが全然ダウンロードできなくて、どこが007の国だよ、って思うことはしょっちゅう(笑)。あとは宅配便の配達時間がいい加減ですね。日本なら時間通りに配達される荷物が、英国では届かないことがむしろ普通。  

音楽的な観点から言うと、ライブの開始直前になっても誰も「時間です」って言わない。日本では秒刻みなのに。初めはもっとちゃんとしようよ!と思っていたけど、やるべきことをやれば別にいいのかって最近は思うようになったかな。ロンドンの生活に慣れてきたというより、東京での生活テンポが抜けてきた、と言うほうが正しいかもしれません。  

僕はかれこれ30年くらいロンドンと縁があるんだけど、昔は今に比べもっと暗くて臭くてね。特に冬を迎えると、ここで一体何やってるんだろう?って思うくらい沈んだ気持ちになったものでした。でも、春に鳥がさえずり、街中に新緑が溢れ出すと、なぜか全部許せちゃって。どうしてこんな小さなことで帳消しにできるのかって思うけど、日本の四季とは違い、ロンドンには光と影、夏と冬というように、強いコントラストが存在している。影の時間は内なる自分と向き合い、光の時間は自分を解放する。その一見極端に思えるコントラストが人間を強くすると思っています。これからも、ロンドンでの生活を厳しさも含めて楽しんでいきたいです。

ロンドン公演

Euro Tour: London

2018年10月20日(土)19:00
£31.95~37.60

O2 Shepherd’s Bush Empire
Shepherd's Bush Green, London W12 8TT
Tel: 0844 477 2000
www.ticketmaster.co.uk

布袋さんからのメッセージ

 

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*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

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