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Sun, 24 November 2024

作家
角田光代さん
インタビュー

1990年のデビュー以来、数々の文学賞を受賞している人気作家の角田光代さんが訪英し、ロンドンで国際交流基金主催のトーク・イベントにゲストとして出席した。このイベント前の忙しい時間の合間を縫ってインタビューに応じてくださった角田さんに、翻訳について、そして現代社会で女性が置かれている立場について、お話を伺った。

Profile


かくた みつよ: 神奈川県出身。早稲田大学第一文学部文芸専修卒業。1990年に「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞を受賞し、プロ・デビュー。以来、「空中庭園」で第3回婦人公論文芸賞、「対岸の彼女」で第132回直木三十五賞、「八日目の蝉」で第2回中央公論文芸賞、「紙の月」で第25回柴田錬三郎賞などを始め、多くの文学賞を受賞。また作品の多くがテレビ・ドラマ化、映画化されている。

今回、英国のあと、すぐスペインへ行かれるそうですね。

スペインのバルセロナで「サロン・デル・マンガ ※1」というイベントがあり、吉本ばななさんと一緒に出席する予定です。

※1 今年で22回目を迎えた、日本の文化を紹介する大規模 なイベント。マンガだけに留まらず、今年は「日本文学」がテーマだという。

角田さんの作品は英語だけでなく、スペイン語やブルガリア語など様々な言語に訳されています。ご自身も絵本の翻訳をされますが、英語に訳されたご自分の作品をチェックすることはありますか。英語では現在、短編5作がキンドルの形で発表されています。

読んでも、そのニュアンスが正しいかどうか分かるほどの英語力はないので……。ただ読んで感激するばかりです(笑)。

海外の読者が、翻訳されたものを通してどのように角田さんの作品を理解しているか、気になり ますか。例えば角田さんの作品の幾つかは、日本ならではと思えるような独特な状況に置かれた女性を主人公にしています。

最初に英訳された作品は「対岸の彼女」ですが、このプロモーションのため米国へ行き、現地で大学生の人たちとトークをするイベントに出席する機会がありました。このとき、彼らから「 いじめ」が日本ではこんなにすごいのかというような質問をたくさん受けました。実は話の大筋とはあまり関係のないこの「いじめ」に大きなスポットが当たったのは意外に思いました。また、ヨーロッパでは「八日目の蝉」に対して、「日本で女性はこんなに虐げられているのか」というようなことを言われたりもしました。

違和感のみに目がいってしまったということでしょうか。では、あえて海外の読者に向けて書いてみるというチョイスは考えたことはありますか。

いえ、それはありません。日本の社会の中で女性として生きて、何が息苦しく、何が問題なのか。その空気の中で書くのが私の基本になっているのです。翻訳されることを前提にして書くというのは考えられません。ただちょっと思ったのは、先ほどの米国でのトークで気が付いたのですが、彼らは翻訳された小説を読むこと自体に慣れていないのではないかと。日本では、私もそうですが、皆が小さいころから海外の翻訳本を読んでいます。例えばキリスト教的考え方というのも、それが何かよく分からなくても、そういう宗教や文化があるとして、日本人はそのまま受け入れる。米国などではそういう読書感覚が薄く、文化の違いに戸惑う場合もあるのかもしれません。

翻訳といえば、角田さんはNGOのプラン・インターナショナル・ジャパンで、ボランティアで翻訳活動をされているそうですが、これはどういった経緯で始まったのですか。

2009年に女性誌の依頼で、プラン・インターナショナルの「Because I'm a Girl ※2」というキャンペーンの取り組みを紹介するため、アフリカのマリを視察したのが最初です。それがきっかけでこのキャンペーンに賛同し、サポーターになりました。2年に1度、女性が虐げられている国へ行き、視察リポートを書いています。そんな中、「Because I'm a Girl」という本が英国で出たので、これを訳してほしいという話になったのです。

※2 Because I am a Girlは、国際NGOプラン(本部は英国)が展開する世界的なキャンペーン。女性であるゆえに、様々な困難に直面する途上国の少女たちの問題を訴え、彼女たちが生きていく力を身に付け、途上国の貧困が削減されることを目指す。角田さんが訳したのは、キャンペーンの主旨に賛同した7人の作家がそれぞれ異なる国を取材し、その体験を基に執筆した短編集「Because I am a Girl ―― わたしは女の子だから」。

角田さんの作品は、多くの女性の読者が主人公に自分を重ね合わせて、「自分でもこう行動するだろう」「こんな風に思うだろう」と共感しています。女性について描くことが多いのは、自然にそうなるのでしょうか。それとも、次はこのプロジェクトでいこうという風に決めるのですか。

女性に興味があります。今の日本で生きていると、やはり女性の方が大変だと思うし、立場としての変化が激しいので、描くのが面白いということもあります。女性ばかり描くと言われて反発して、男性を主人公にしたこともありますが、基本的にはやはり女性を描きたいという気持ちの方が強いです。

では最後に、今後のご予定をお聞かせいただけますか。

去年から始めたのですが、2018年までは3年掛けて「源氏物語」を現代語に訳しています。これは河出書房の日本文学全集の一環で、現代作家が古典を訳すシリーズのうちの一つです。2018年までは自分の小説は連載も入れず、こちらに集中する予定です。2019年には、新聞連載が決まっています。東京オリンピックが2020年なので、何かオリンピックに関連したものをと言われていますが、まだきちんとした構想は立てていません。

 

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