映画プロデューサー/小説家/絵本作家 川村元気
ロンドンではテート・モダンに行ったりと、
アート鑑賞を楽しみました
ベストセラーとなったシュールな寓話小説「世界から猫が消えたなら」の英語版、「If Cats Disappeared from the World」の刊行(Picador社)で、2018年の秋にチェルトナム文学祭*1から招待を受けた川村元気さん。最新作や英国滞在時のことなどについて、お話を伺った。(協力: 国際交流基金)
*1 英西部チェルトナムで毎年10月に開催される文学の祭典。2018年はフェスティバル内にEast Meets Westというプログラムがあり、川村元気さんを始めとした日本や韓国の作家が招待された
2019年は、文芸春秋で連載されていた小説「百花」が出版されますが、この作品におけるテーマは、どのようなものでしょう。
認知症になり様々なことを忘れていくシングルマザーと、その一人息子の愛と記憶の物語です。
いつも作品作りの前に取材を敢行され、とても多くの人にお話を聞かれるそうですが、どうしてそのような方法を?
ノンフィクションの世界には、フィクションでは決して思いつかないような言葉や出来事があり、そういうものを少しでも物語の中に取り込んでいきたいと思っているからです。
2018年の10月に英国に滞在されたときのことについてお聞かせください。
「世界から猫が消えたなら」の英語版出版を機会に、チェルトナム文学祭で講演をしました。イギリスの読者とのQ& Aでは非常に興味深い意見が出て面白かったです。夏目漱石を始めとして、日本の小説が「猫」をテーマとするものが多いということに関した質問や、本作の中で「携帯電話」が消えることについて*2、インターネットやスマートフォンが我々の生き方をどう変えたのか、などの議論が活発に行われました。
*2 悪魔に「世界からひとつ何かを消すと、1日寿命が伸びる」と囁かれた主人公は、まず携帯電話を消すことにする
短い滞在だったとは思いますが、空いた時間は何をされていましたか。
ロンドンではテート・モダンや、フリーズ・アート・フェア*3に立ち寄ったり、アーティストのダミアン・ハーストの作品が展示されているレストランに行ったりと、主にアートを楽しみました。
*3 毎年ロンドンで開催される大規模な現代アート・フェア。ロンドンの美術誌「フリーズ」が主催している
これまでの川村さんの作品のファンや、英語版「世界から猫が消えたなら」で新たに読者になった英国在住者に向けて、一言いただけますか。
イギリスで「世界から猫が消えたなら」がどんな方に読まれ、どんな感想が出てくるのか、楽しみにしています。何かが「無い」という状態を想像することで、そこに「ある」ものを感じるというのは日本的な発想だと思っていますが、きっと世界中の誰もが共有できる感覚でもあると思っています。