ニュースでよく見かけるあの人は誰?
第2期政権
キャメロン内閣の
主要閣僚 Who's Who
総選挙で保守党が驚きの過半数を獲得してから既に数週間が経過。
5月27日には国会が開会、キャメロン新政権もついに本格的に始動した。
これからテレビのニュース番組などで、
彼ら閣僚たちの顔を何度も目にすることになるだろう。
また各閣僚の動向を追えば、英国が今後どんな国に
なろうとしているのかがぼんやりと見えてくるはず。
個性豊かな主要閣僚たちの横顔を紹介する。
閣僚名簿
首相、財務第一卿、公務員担当大臣 | デービッド・キャメロン |
財務相、主席大臣 | ジョージ・オズボーン |
内務相 | テレーザ・メイ |
外務相 | フィリップ・ハモンド |
司法相、大法官 | マイケル・ゴーブ |
国防相 | マイケル・ファロン |
年金・雇用相 | イアン・ダンカン・スミス |
保健相 | ジェレミー・ハント |
下院院内総務・枢密院議長 | クリス・グレイリング |
国際開発相 | ジャスティーン・グリーニング |
教育相 | ニッキー・モーガン |
上院院内総務、王璽尚書 | バロネス・ストウェル・オブ・ビーストン |
運輸相 | パトリック・マクロクリン |
ビジネス・改革・職業技能相、商務省議長 | サジード・ジャビド |
北アイルランド相 | テレーザ・ビリアーズ |
環境・食糧・農村問題相 | エリザベス・トラス |
コミュニティー・地方自治相 | グレッグ・クラーク |
ウェールズ相 | スティーブン・クラブ |
ランカスター公領尚書 | オリバー・レトウィン |
文化・メディア・スポーツ相 | ジョン・ウィッティングデール |
スコットランド相 | デービッド・マンデル |
エネルギー・気候変動相 | アンバー・ラッド |
そのほかの閣議出席者
外務担当閣外相 | バロネス・アンリー・オブ・セント・ジョンズ |
無任所相 | ロバート・ハルフォン |
内閣担当・出納担当閣外相 | マシュー・ハンコック |
財務省首席担当官 | グレッグ・ハンズ |
財務政務次官・院内幹事長 | マーク・ハーパー |
雇用担当閣外相 | プリティ・パテル |
ビジネス・改革・職業技能担当閣外相 | アナ・スーブリ |
法務長官 | ジェレミー・ライト |
素晴らしきかな政治家人生
デービッド・キャメロン首相(48)
David Cameron - Prime Minister
顔のツヤの良さから伺えるように、良家の出身。父親を含め、祖先には金融関係者が多く名を連ねる。彼のひいひいおじいさんは、日本史にも登場する大物。日露戦争の勃発後に日本銀行の高橋是清が訪英した際に、大財閥のロスチャイルドとともに日本の戦費調達を助けたとの逸話を残している。そんな良き血筋を受け継いだ彼自身も、名門パブリック・スクールのイートン校とオックスフォード大学卒、成績も優秀とエリート街道まっしぐら。若いときから、父親の知り合いが手掛ける仕事の手伝いの一環として議会に出席していたという。大学卒業後は保守党の調査部でメージャー首相(当時)などへのブリーフィングを担当。サマンサ夫人の母親からの紹介を受けて民放局に就職し、広報活動を指揮するなどした。2001年より国会議員に。そのわずか4年後に保守党の党首となり、初当選から10年未満、43歳という若さで首相となった。今回の総選挙で勝利し、2期目に突入。目を細めたくなるほどに輝かしい政治家人生である。
ただ今イメージ回復中
ジョージ・オズボーン財務相(44)
George Osborne - Chancellor of the Excheque
2010年からの5年間で、保守党と自由民主党の連立政権が何よりも優先したのが緊縮財政だった。それら一連の政策を牽 けん引いんしたのがオズボーン財務相である。生まれは貴族階級。10代前半で「ギデオン」という名を「ジョージ」に改名した。ギデオンという名を持つ人物に「好きな人はいないし、成功した人も知らない」というのが理由だったそう。2001年の選挙で初当選を果たし、最年少の保守党議員(当時)に。34歳で影の財相、そして20世紀以降では最年少となる38歳で財相とトントン拍子で出世。キャメロン首相とは盟友であり、お互いの子供の名付け親となっているほど。ただ英国民に痛みを強いる緊縮財政政策の数々はさすがに反感を買い、今ではすっかり嫌われ者になっている。2012年に開催されたロンドン・パラリンピックの表彰式に登場した際には、会場から大きなブーイングを浴びた。この一件が結構応えたようで、以後は専属のPRを雇い、髪型を変え、減量するなどしながらイメージ回復に努めている。
意外とおしゃれな砂かけ婆
テレーザ・メイ内務相(58)
Theresa May - Secretary of State for the Home Department
移民制限を強める一方の保守党政権。在英邦人にとっては滞在許可関連で厄介な申請作業を行う相手となる内務省を管轄するのがメイ内務相だ。目の下にできた大きな隈、睨みを利かせているような顔つき、灰色に染まった髪。砂かけ婆のような姿で、不法移民を懲らしめる。英国の政治家にとって、内務省とはまさに鬼門。移民問題やテロ容疑者の扱いをめぐるミスが多発しており、過去の内相はそのトラブル処理に巻き込まれるという事態を繰り返してきた。しかし、メイ内相は2010年の就任以来、この地位を死守。キャメロン首相が「次期首相候補の一人」に挙げる逸材でもある。実はこのメイ内相、そのキャラに似合わず特徴的なデザイン靴を履くおしゃれさんという横顔を持っている。しかも党大会にヒョウ柄のキトン・ヒール、女王に謁見する日にニーハイ・ブーツという具合に結構シュールなセンス。この人がニュースに出てきたら、足元に注目すべし。
陰気ながらも調整能力高し
フィリップ・ハモンド外務相(59)
Philip Hammond - Secretary of State for Foreign and Commonwealth Affairs
笑うと傾いて歪む顔。神経質そうな視線。猫背で細身の身体。見ているだけで胃が荒れてきそうな印象を与える。オックスフォード大学の学生時代はゴシック・ファッションに身を包んでいたというから、当時の陰気臭さは相当なものだったに違いない。そんな容姿とは裏腹にこれまでの人生はバラ色。政界入りする前には不動産開発を通じて蓄財し、現閣僚の中では有数の資産家として知られている。2010年から始まった保守・自民の連立政権では運輸相、防衛相を歴任。保守党支持者が景観維持を理由に反発する高速鉄道の建設案を進め、軍の安全を危惧する声を抑えながら防衛費の削減を断行した。そして、今回の組閣では外務相に就任。欧州懐疑派で、かつこれまでに調整能力の高さを証明してきた彼の任命にはもちろん、キャメロン首相の意向が働いている。2017年までに実施予定の欧州連合離脱を問う国民投票が近付くにつれ、ハモンド外相のやつれた顔をテレビで見掛ける機会が増えてくるはずだ。
バリトン・ボイスと豊富な語彙で魅了
マイケル・ゴーブ司法相(47)
Michael Gove - Secretary of State for Justice
美しきバリトン・ボイスと余裕たっぷりの佇まい、そして当意即妙な切り返し。「これぞ英国の政治家」と思わせるのがマイケル・ゴーブ司法相だ。オックスフォード大学では英文学を専攻し、過去に多数の政治家を輩出している同大のディベート・クラブ「オックスフォード・ユニオン」の議長に。その後、保守党を支持する高級紙「タイムズ」紙のコラムニストとして名を馳せた。連立政権時に就任した教育相としては、英国の文学や歴史に重点を置くよう中等教育のカリキュラム変更を要求。ほかにも理想主義的な改革案を続けざまに発表し、教育現場からは徹底的に嫌われた。その華麗な経歴と洗練され過ぎている感のある言動、そして市井の人々をいとも簡単に敵に回してしまうあたりが良くも悪くも典型的な保守党議員である。生まれながらの保守系エリートかと思いきや、育ったのは労働党支持の家庭。父親は水産加工業を生業としていた。この家庭に生後4カ月で養子として引き取られたのだという。また議会では痛烈な野次を飛ばすことでも有名。実に引き出しの多い男だ。
どん底から復活した、日本人の血を引く男
イアン・ダンカン・スミス雇用・年金相(61)
Iain Duncan Smith - Secretary of State for Work and Pensions
曽祖母はなんと武家出身の日本人女性。政治家になる前は軍人として動乱中の北アイルランドや現在のジンバブエに派遣されていた。キャメロン首相の2代前に保守党党首になるも、不信任案が可決されてしまい党首を辞任。痛烈な批判を受けても口を閉ざし、自ら付けたあだ名は「静かなる男」。フルネームが長いと面倒くさがられてよく「IDS」と略される。試しに小説を書いてみたら酷評だらけ。学歴や経歴詐称疑惑も報じられたこと多数。人生の後半は暗い話題ばかりだ。その彼が、キャメロン政権で復活を遂げた。保守党党首の座から滑り落ちた後に、貧困問題の解決を目指すシンクタンクを設立。同機関で培った知識と経験が、「富裕層に優しく、貧困層に冷たい」という保守党のイメージを刷新しつつ、「真面目に働く人を応援する」という同党のメッセージを伝えるのに一役買ったのだ。現在は、貧困と深く関係する雇用と年金問題への取り組みに従事。どん底からはい上がってつかんだ任務を全うするため邁進している。
イアン・ダンカン・スミス議員インタビュー
実は日本語ペラペラなんです
ジェレミー・ハント保健相(48)
Jeremy Hunt - Secretary of State for Health
父親は海軍関係者、名門パブリック・スクールでヘッド・ボーイ(日本の生徒会長に相当)を務め上げ、オックスフォード大学へ通ったという生粋のエリート。文化・オリンピック・メディア・スポーツ相として2012年のロンドン五輪を経験した。同年に実施された内閣改造で保健相となり、現内閣でも留任している。実は1990年代に日本へ約2年に及ぶ語学留学経験あり。自身のホームページにおける自己紹介欄に「日本が大好き」「日本語の新聞を読むためには3000文字ほど覚えなければならない。当選するのと同じくらい難しい」と書き込むほどの親日家。日本滞在中は英語の教師として生計を立てていたという。現在でも日本語をかなり流暢に話すことができるとの噂。帰国後には英国の語学学校に関する情報をまとめた情報誌「ホットコーシーズ」を設立し、成功を収めた。マーマレードを日本に輸出するビジネスを立ち上げて失敗した経験を持つなど、何かと余談が多い政治家である。
オックスフォード大学出身多し
キャメロン首相が通った、オックスフォード大学の
ブレーズノーズ・カレッジ。観光名所である
ラドクリフ・カメラのすぐそばに位置している
首相を入れて22名に上る内閣閣僚のうち、9人がオックスフォード大学の出身。そのうち4人が同大の政治経済哲学部(PPE)を卒業している。キャメロン首相とハント保健相、そしてロンドン市長を務めるボリス・ジョンソン氏に至っては、かつて同大学同学部の同級生だった(在籍したカレッジはそれぞれ異なる)。またケンブリッジ大学出身者は3名。つまり、両大学の総称である「オックス・ブリッジ」出身者の割合は半数以上を占める。ちなみに次に出身者が多い大学はブリストル大学とエディンバラ大学の2名となっている。
女性閣僚が占める割合は3分の1
ラッド・エネルギー・気候変動相は、
英俳優ヒュー・グラント主演の映画
「フォー・ウェディング」への
出演歴もあり
今回の組閣人事で最も注目されたのが、女性閣僚の多さ。全体の3分の1に相当する7名の女性が閣僚入りを果たした。彼女たちの多くは、今回の総選挙で大躍進を遂げた「キャメロン首相のお気に入り」と呼ばれる女性議員たちだ。また閣外相にも3名の女性議員が名を連ねる。今回の総選挙で当選した保守党の女性議員の数が64名なので、そのうちの約16%が要職を与えられたということになる。「男性的で、古臭い」という旧来の保守党のイメージを払拭する狙いがあるとされている。
ボリス・ジョンソン議員も
特例で内閣入り
キャメロン内閣に招聘された
ジョンソン議員
ボサボサの髪と太鼓腹。難解な語彙と相当なギャップを感じる軽妙な語り口。人気者キャラのボリス・ジョンソン・ロンドン市長は、今回行われた総選挙で国会議員としても晴れて当選した。2016年5月にロンドン市長の職が任期切れとなるまで、市長と下院議員を兼任することになる。以前から次期首相との呼び声も高かったこのジョンソン議員を、キャメロン首相は内閣に特別招聘。一年生議員であるにも関わらず、閣議に参加する。ただ大臣として内閣入りしたわけではないので、すべての閣議には出席せず、またいずれの省庁に対しても責任は持たない。