#09 英国産スパークリング・ワイン創世記のワイン
ブレイキー・ボトム / キュヴェ・コイズミ・ヤクモ
Breaky Bottom / Cuvée Koizumi Yakumo
2010 Seyval Blanc 750ml 6本入りボトル・ケース £354
https://www.breakybottom.co.uk
英国のスパークリング・ワインはこの十数年で飛躍的な成長を遂げた。高緯度に位置する英国はこれまでブドウの糖度が上がりにくい場所として知られていたが、近年の温暖化の影響、また英南部がフランスのシャンパーニュ地方と同じ白亜質土壌を持つことから、同地域を中心に良質なワインが次々に生まれ、今ではシャンパンに引けを取らない商品として進化を続けている。
そんな中、1974年に早くもこの土地の可能性に賭け、東京ドーム約半分の広さの土地を切り開いたワイナリー「ブレイキー・ボトム」がある。その舵を取るのはピーター・ホール氏。ホール氏は、明治期に活躍し、日本文化に関する書物を残した英文学者ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の子孫にあたり、日本と不思議な縁でつながっている。今回は家族経営で切り盛りしつつも数々の華々しい賞を受賞してきた同社のワインの中から、八雲の名を冠したスパークリング・ワインを紹介しよう。
熟しても酸味が消えないセイヴァル・ブラン種を使用したワインは、その香りを「果物とブリオッシュ(バターを塗ったこんがり焼けたパン)のバランスが絶妙」と称される。シトラス系の柑橘系と梨、アプリコットのフルーティーな香り、さっぱりとしたドライな飲み口が特徴で、2014年にはインターナショナル・ワイン・チャレンジで栄えある金賞を受賞した。また、ロンドンのメイフェアにある有名カフェ・バー、スケッチに英国産スパークリング・ワインとして唯一採用されており、名実共に優れた一本として認められている。「いつかきっとおいしいものを」、と信じ続けたホール氏の挑戦を堪能してみたい。
9 January 2020 vol.1546