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Mon, 21 September 2026

第322回 放蕩仲間が生んだロンドンの白亜の豪邸街

大英博物館近くのブルームズベリー・スクエアの北に、18世紀の政治家チャールズ・ジェームズ・フォックスの像が鎮座しています。ところがフォックスはこの広場に顔を向けず、外側を向いています。その視線の先にあるラッセル・スクエアに立つ第5代ベッドフォード公爵フランシス・ラッセル像もやはり外側を向いています。つまり、両者は約250メートルの距離を置いて向き合い、見つめ合っています。この奇妙な配置には理由がありました。

向き合うフォックスとラッセルの像向き合うフォックスとラッセルの像

公爵が上院議員になったとき、フォックスはホイッグ党を率いる下院の大物政治家でした。フォックスの演説に心酔した公爵は自らの師匠と仰ぎ、二人の深い師弟関係が始まります。フォックスは大酒飲みでギャンブル好き、数知れない浮名を流す豪放磊落ごうほうらいらくな性格でした。しかしながら知的な魅力と揺るぎない自由主義への政治的信念を兼ね備え、人の心を瞬時につかむ天才的なカリスマとして多くの人々を魅了していました。

チャールズ・フォックスの肖像画チャールズ・フォックス

フォックスを囲む放ほうとう蕩仲間には、のちのジョージ4世となる皇太子もいました。米国独立やフランス革命を応援するフォックスと敵対していたのがジョージ3世でした。そして、伝統と秩序を重んじる厳格な父ジョージ3世に失望した皇太子は、自由奔放なフォックスと意気投合し、夜な夜な酒席を囲み、ギャンブルに興じる親密な間柄になりました。ある日、その輪に飛び込んできたのが野心ある建築家ジョン・ナッシュでした。

ジョン・ナッシュ(左)と皇太子(右)ジョン・ナッシュ(左)と皇太子(右)

ナッシュは20代のころ、ロンドンに建てたしっくいの集合住宅の外壁が剥がれ落ちて不評を買い31歳で事業が破産した過去を持ちます。その後、母が住んでいたウェールズで家屋修繕の腕を磨き、大庭園に囲まれた絵画のように美しいカントリー・ハウスを建てることで名声を回復しました。再びロンドンに舞い戻り、フォックスの放蕩仲間に加わると、気きうそうだい宇壮大な人柄に触れ、巨大な宮殿群を庭園沿いに建てるアイデアが浮かびました。

リージェンツ・パーク沿いの邸宅街

リージェンツ・パーク沿いの邸宅街リージェンツ・パーク 沿いの邸宅街

フォックスの紹介で皇太子と出会ったナッシュに最高の好機が訪れます。ローマをレンガの街から大理石の街に変えた皇帝のごとく、ロンドンを変えたいと熱望する皇太子のためにナッシュは白い魔法を注ぎました。伝統あるレンガの街に固執したベッドフォード公爵が所有するブルームズベリー地区を尻目に、その西側にリージェンツ・パークをはじめとする曲線美の白亜の豪邸街が次々と誕生しました。冒頭に戻ってベッドフォード公爵像が、同じ放蕩仲間でもおごれる者は久しからず、流行より伝統が大事なのだとフォックス像に語りかけているようです。

リージェンツ・クレセント

リージェンツ・クレセント リージェンツ・クレセント

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『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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