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Fri, 08 May 2026

第313回 ロンドンのパブから生まれた銀行間決済システム

18世紀に海外貿易が盛んになるとシティ中心部のロンバード通りにはたくさんの貿易商人が集まるようになりました。特にギャラウェイズ・コーヒー・ハウスやジョナサン・コーヒー・ハウスでは株式取引が行われ、ロイズ・コーヒー・ハウスでは保険証券が引き受けられました。やがてそれらはロンドン証券取引所やロイズ保険取引所に発展しました。さらに聖メアリー・ウールノス教会裏のパブ、ファイブ・ベルズには銀行員が多く集まっていました。

ロイズ・コーヒー・ハウスの様子ロイズ・コーヒー・ハウスの様子

一体、銀行員がパブに集まって何をしていたのでしょう。実はこのころのロンドンは貿易手形の決済をするための銀行が急増していました。当時は手形による決済が一般的でしたから、ウォーク・クラークと呼ばれる銀行員が毎日市内を駆け巡り、指定された支払い銀行に手形を呈示して現金決済をしていました。ところがある日、ファイブ・ベルズで出会った2人の銀行員が気付きました。ここで手形の差額分だけ決済すればよいのではないか?と。

為替手形の例 為替手形の例

1770年ごろから夕刻のファイブ・ベルズに銀行員が集まり、手形を呈示し合い、支払い金額の差額だけ現金決済するようにしました。これにより手形と現金を持って街中を歩くよりも安全で効率的な決済が可能になりました。さらに1833年、パブでの集まりは39の銀行が出資するロンドン・クリアリング・ハウスに変わり、54年からイングランド銀行の口座を使って振替決済するようにしました。これが現代の銀行間決済システムの始まりです。

クリアリング・ハウスでの手形決済の様子クリアリング・ハウスでの手形決済の様子

クリアリング・ハウスは2001年にその役目を終え、銀行間の決済業務はイングランド銀行が管理・運営するCHAPS(Clearing House Automated Payment System)に変わりました。CHAPSはデジタル化されて即時決済され、ロンドンの銀行間決済システムの根幹を成しています。そして03年、近くの広場には旧クリアリング・ハウスのメモリアルが建てられました。そこにはかつての参加銀行のシンボルが刻まれています。

クリアリング・ハウスのメモリアルクリアリング・ハウスのメモリアル

当時の決済に参加していた主要11行はグリン・ミルズ & Co、ディストリクト、クーツ、ミッドランド、バークレイズ、ナショナル・プロヴィンシャル、ナショナル、ウィリアムズ・ディーコンズ、ロイズ、マーティンズ、ウェストミンスターであり、そのうちロイズ、マーティンズ、ウェストミンスターの3行以外の残り8行のシンボルが壁に飾られています。もし、パブで1杯引っ掛けながら半ば気楽に手形決済をしていた銀行員がいたならば、天国でこのメモリアルに恥ずかしい思いをしているか、合併でなくなった銀行を懐かしく思っていることでしょう。

主要参加行のシンボルが刻まれている 主要参加行のシンボルが刻まれている

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 
シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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