ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 20 March 2026

第310回 英国の住宅ローンと暗黒の水曜日(前編)

先日、住宅ローンについて英国人に教えてもらいました。1986年の金融ビッグバン以前は住宅ローン専門会社の英国住宅金融組合が変動金利しか提供しなかったので、住宅ローンは変動金利だったそうです。最近は短期の固定金利型住宅ローンが増え、それは若いときから家を買い、自分の人生計画に合わせて家を次々に買い替えていくのでそれが自然だそうで、一方、欧州大陸では返済計画の立てやすい固定金利が昔から主流です。

住宅ローンは固定金利か変動金利か?住宅ローンは固定金利か変動金利か?

その話を聞いて思い出したことがあります。30年以上も前ですが92年9月16日に暗黒の水曜日と呼ばれるポンド危機が起きました。それは米国のジョージ・ソロス氏らのヘッジファンドが巨額のポンド売りを仕掛け、イングランド銀行が防戦に敗れてしまい、英国が欧州為替相場メカニズム(ERM)を脱退して大幅なポンド安になった事件です。ソロス氏はこの投機により数千億円もの収益を手に入れたといわれます。

1992 年9月16日の暗黒の水曜日事件 1992 年9月16日の暗黒の水曜日事件

当時の英国は国内のインフレを抑えるため高金利政策を取り、ドイツ・マルクと固定相場に近い仕組みで欧州通貨統合を目指したERMに参加していました。低迷する景気に比べてポンドが人為的に高く設定されていると判断した投機家がポンド売りを仕掛けました。そのきっかけが、ソロス氏の部下で若手アナリスト、スコット・ベッセント氏(現在米国財務長官)が書いた英国住宅に関する報告といわれます。

米国財務長官ベッセント氏米国財務長官ベッセント氏

当時の英国は前サッチャー政権のRight to Buy政策(公営住宅の賃貸者に公営住宅を安く売り、持ち家比率を高める政策)による住宅ブームが終わるころでした。この政策により、多くの労働者が初めて住宅を所有できるようになり、また、当時の住宅ローンの9割が変動金利の借り入れだったそうです。そのため、イングランド銀行が政策金利を利上げした翌々日には住宅ローン金利も上がり、各家庭がコスト増に苦しむ状況でした。

サッチャー首相の持家促進政策が住宅バブルに サッチャー首相の持家促進政策が住宅バブルに

92年9月、ソロス氏らがマルクを買ってポンドを売る投機を始めます。すると政府は為替市場でポンドを買い支え、大幅な利上げをすることでポンド売りのコストを高めてポンドを守ろうとしました。でも、その利上げは同時に英国景気をさらに弱め、住宅ローンを借りている多くの国民を破産に追い込みます。通貨統合のためにポンドを高く維持するか、国民のために金利を引き下げるか、最終的に政府はソロス氏に降参して、ERMから脱退し、金利を引き下げました。この事件が欧州統合への疑念を深めたことは容易に想像できます。(中編に続く)

英国はERMから脱退し、その後、危機一髪で助かった 英国はERMから脱退し、その後、危機一髪で助かった

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 
シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


Dr 伊藤クリニック, 020 7637 5560, 96 Harley Street 日系に強い会計事務所 Blick Rothenberg お引越しはコヤナギワールドワイド Ko Dental

JRpass totton-tote-bag