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Wed, 04 December 2024

第216回 細かすぎて伝わらない仕掛け時計 - フォートナム&メイソンからマルクスまで

前々号のコラムでレスター・スクエア近くのスイス時計塔をご紹介したところ、仕掛けで動く人形や動物のことだけでなく、時計のデザインやその動き方も紹介してほしかったと友人から言われました。確かにそうでした。この時計を見てすぐ気が付くのは、秒針の先が丸く赤いこと。この意匠は鉄道の列車が出発する際に駅員さんが使う合図棒に由来します。この時計はスイス連邦鉄道で使われる駅の時計デザインを真似しているのです。

スイス連邦鉄道の時計を模倣した時計塔スイス連邦鉄道の時計を模倣した時計塔

さらにスイス連邦鉄道の時計にはStop2Goという機能があります。秒針が約58秒で回り、12のところで約2秒間静止します。60秒経過したところで秒針が動き、同時に分針がカチッと1分進みます。これは全国3000の駅の時計を60秒ごとに合わせて調整するためだそうです。ところがレスター・スクエアの時計は秒針だけStop2Goの動きをし、分針は滑らかに動きます。スイスの人ならこのおかしな動きに気が付くかもしれません。

駅員の持つ出発の合図棒駅員の持つ出発の合図棒

また、ピカデリー・サーカスにある有名老舗店フォートナム&メイソンの外観に付いた仕掛け時計は、午後の定時になると鐘の音と共に、赤い服でロウソクを持つフォートナム氏と緑の服で紅茶セットを持つメイソン氏が時計台の奥から登場してきます。二人が向かい合うと互いに少しだけ会釈を交わし、すぐに振り返って壁の奥へと消えていきます。とても愛らしい仕草ですが、望遠鏡で見ないとこの繊細な芸は見る者に伝わりません。

F&Mの時計では二人が互いに会釈するF&Mの時計では二人が互いに会釈する

最後にソーホー地区にある「スピリット・オブ・ソーホー」という壁画をご紹介します。1991年作の壁画には、ソーホー地区を有名にした著名人がたくさん描かれています。2006年に仕掛け時計が追加され、時計の左端に若きモーツァルト、その隣に「D.K.」(Das Kapitalism=資本論)を持つカール・マルクス、その隣にオペラ歌手のテレサ・コーネリス、右端がカサノヴァと、全員この地区に住んだ人たちです。

スピリット・オブ・ソーホーの壁画スピリット・オブ・ソーホーの壁画

定時になると仕掛けが動き出し、カサノヴァが口をとがらせてテレサにキスを求め、テレサがウインクします。そしてマルクスが本の影からコカ・コーラを取り出して飲みます。共産主義を唱えるマルクスが資本主義の象徴とされる飲料を飲む設定がジョークになっていますが、マルクスを知らない若い世代には伝わらないかもしれません。そもそも現在故障中で仕掛けが動きません

仕掛け人形は現在故障中仕掛け人形は現在故障中

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」第十五話「レスター・スクエアとピカデリー・サーカス」もお見逃しなく。

 

シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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