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Sun, 20 October 2019
jojihirotaさん マルチ・ミュージシャン
廣田丈自さん

[ 後編 ] 尺八や民謡、大太鼓といった日本の伝統音楽を、シェイクスピア演劇やオーケストラといった西洋文化と合わせることで新しい音楽を創造する音楽家の廣田丈自さん。日本の伝統文化を海外にも広める上で重要なのは何かと問うと、返ってきた答えは意外なものだった。全2回の後編。
プロフィール
ひろたじょうじ - 北海道小樽市生まれ。京都芸術大学在籍時より、パーカッショニストのツトム・ヤマシタ氏が主宰する「レッド・ブッダ・シアター」の一員としてフランス、英国、米国など世界各地で公演を行う。同シアターのミュージック・ダイレクターを務めた後に独立し、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーによる「マクベス」の音楽担当など多くのプロジェクトに参加。大太鼓、小太鼓、尺八、パーカッション、民謡など様々な楽器や音楽様式を駆使するマルチ・ミュージシャンとして、ロンドンを拠点に世界各地で活動している。www.jojihirota.com

 

音楽家は感動しないといけない

世界ツアーに発展した総合芸術プロジェクト「レッド・ブッダ・シアター」に区切りをつけていったん日本に帰国し、しばしの充電期間を経て再びロンドンへと戻ってきた廣田さんはやがて、音楽家として活動する上では常にアイデンティティーを求められるということに気付いた。関係者と会う度に、「君のカラーは何?」「何が一番表現したいことなんだ」と絶えず問われる。そんなとき、「日本人であること」が拠り所となることが往々にしてあると廣田さんは言う。世界各国からアーティストが集い、また細かくジャンル分けされた音楽表現が一般市民レベルにまで膾炙(かいしゅ)しているロンドンにおいては、確かに「日本人性」とでも呼ぶべき、単純明快かつ包括的なイメージが受け入れられやすいのかもしれない。

ダンス劇「女形」
廣田氏が作曲を担当したダンス劇「女形」は1991年に
「タイムアウト」誌のベスト・ショーに輝いた

「ただ、日本の伝統音楽の伝達者なんて意識はないですよ。そうした日本の伝統をきちんと伝えられる人たちはほかにいらっしゃいますから」。そもそも、廣田さんが指導を受けた太鼓の先生からは「君は海外で音楽活動を行っているのだから、ただ僕の真似をしてはだめだよ。教えたことを基本として、きちんと自分の音楽を作りなさい」と常々言われていたそうだ。以来、その言葉を守り続けてきた。「『これが日本の音楽である』と定義して紹介するのは学者の仕事でしょう。もちろんそういう仕事もとても重要なんだけれど、僕のやろうとしていることとは違う。音楽家は感動しないといけない。演奏を通して感動を伝えるのが音楽家」。

廣田さんが音楽家として追い求め続けているのは、今この瞬間に得られる感動である。そのために大切なのは、ときにごく一面的な解釈になることもある文化や伝統といった枠にとらわれずに音楽を深く理解し、音楽を通じて自分は何を表現したいのかを突き詰めること。「音楽の本当の魅力は、言語化できる地点からもう一歩掘り下げた部分に詰まっている」と信じているからだ。一つの音楽を奏でる際には、作者や共演者の個人的な思いにまで耳を澄ませる。「例えば民謡を聴いて感動したのだとすれば、それは何も過去の歴史を勉強できたからではなくて、今の自分の心に響いたからでしょう。過去を過剰に意識する必要はない。むしろ、大昔に作られたものに今、感動することで時代を隔てた人々ともつながることができるというのが伝統の素晴らしさじゃないかな。だから、出発点となるのは感動すること」。

「継続してきた」との事実が強みに

もちろん、音楽家として活動を続けていくためには、感動の瞬間だけを慈しんでいればよいというわけではない。西洋のクラシック音楽を始めとする日本以外の音楽文化にいくらでも触れる機会があるロンドンで日本人音楽家が生き延びていくためには、多くの困難が伴うことも事実。「英国にいるのに、なぜ英語で民謡を歌わないのか」といった質問を何度も受けるような環境の中で、地道な活動を続けていかなければならない。「自分が今、ロンドンで居場所を確保できている理由というのがあるとしたら、それは自分が懲りずに続けているからなんでしょうね。ロンドンに音楽活動しに来た日本人はこれまでにもたくさんいたけれど、みんな30年も40年もやらないから。継続できているってことが僕の強みかな」。

在英日本大使館より大使館長賞を授与
2004年には在英日本大使館より大使館長賞を授与

一生懸命勉強して、練習して、また練習してを繰り返して早数十年。すべては、今この瞬間に感動するために。

 
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