スコットランド再度の住民投票は実現するか - ブレグジットを機に、独立の夢が再燃
皆さま、少し日にちが過ぎましたが、明けましておめでとうございます。日本から英国に来て驚くのは、正月休みが元旦ぐらいしかなくて、2日から通常業務に戻ってしまうことですよね。
昨年末の総選挙では、英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)実現を掲げた与党・保守党が大勝する一方で、スコットランドの独立を掲げる地域政党スコットランド民族党(SNP)が大きく躍進しましたね。
3年前のEU離脱を問う国民投票で、英国全体では離脱支持が約52%、残留支持が約48%になりましたが、スコットランドでは残留支持が約62%。総選挙では、スコットランドだけ英国から独立してEUに留まるべきという声が高まりました。
スコットランド行政府のニコラ・スタージョン首相は、今月末に予定されている離脱が実現してもしなくても、今年後半にも英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を行うことを望んでいます。「2度目」というのは、2014年9月、同様の住民投票が行われたからですね。当時は投票率が85%と大きく盛り上がったので、覚えている方も多いと思います。結果は住民の55%が残留を支持し、独立は否決されました。
スタージョン氏が率いる与党SNPは、再度、独立への住民投票を実行しようとしてきましたが、住民投票には英中央政府の合意が必要となります。ボリス・ジョンソン首相は再度の住民投票は認めないと言っていますので、現在まで、実現できないままとなってきました。でも、昨年10月には首都エディンバラで、11月には最大都市グラスゴーで住民投票を求める大規模デモが発生し、独立への機運が再燃しています。
英国北部に位置するスコットランド地方は、1707年にイングランド王国と一緒になるまでは独立した王国で、独自の行政府・議会を持っていました。面積は英国全体の3分の1を占めますが、人口は1割弱の約540万人です。スコットランド議会が再開したのはスコットランド出身のトニー・ブレア政権のとき(1999年)ですから、議会再開には約300年のブランクがありました。しかし、独立や自治を求める声が昔から絶えず、独立派は1970年代に開発の進んだ北海油田からの税収を、スコットランドが英国から独り立ちできる根拠としてきました。ただし、次第に資源が枯渇するとも言われています。
SNPの躍進も独立運動の機運を高めました。独立を党の方針とするSNPは、公平性を重視する民主主義を支持しており、2007年に地方選挙で第一党となり政権を取得。11年には単独過半数の議席を得ましたが、16年の選挙では議席を減らし、現在は少数与党政権となっています。
では、独立派はどんな未来図を描いているのでしょう? 2013年にスコットランド政府が発表した白書「スコットランドの将来」によりますと、新たな憲法が作られ、独立したスコットランドはエリザベス女王を元首とする体制を維持するようです。英国と通貨同盟を組み、ポンドは維持。他には、核兵器システム「トラインデント」の廃止、1万5000人規模の国防体制を設置、独自の情報収集体制を構築、英国生まれでスコットランド在住の人にはスコットランドの国籍とパスポートを提供、郵便事業のロイヤル・メールを国営化などの構想が示されました。イングランド王国に併合された歴史やEU残留派が多いのに、離脱する道を歩まざるを得なくなったことを考えると、スコットランド住民が独立を望むのは無理もない感じもしますね。
でも、気に掛かるのは財政面です。スコットランドは中央政府から、「バーネット・フォーミュラ」と呼ばれる算定方式による一括交付金を受けながら、自治政府の財政をカバーしています。独立後はどのような取り決めになるのでしょう。果たして中央政府が住民投票にゴー・サインを出すでしょうか。