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Tue, 19 March 2024

スクワットに関する法律が改正へ - 刑法上の犯罪となる可能性も

刑法上の犯罪となる可能性も
スクワットに関する法律が改正へ

「スクワット(squat)」及び「スクワッター(squatters)」は、日本人には耳慣れない言葉であるかもしれないが、ここ英国では、マスコミによる報道にはしばしば登場する単語である。政府は現在、イングランドとウェールズにおけるスクワットに関する法律改正の試みを行おうとしており、大きなニュースとなっている。

数字で見る英国のスクワット事情

2万人 英国におけるスクワッターの数の推定 (i)
10万件 英国におけるスクワットの年間発生件数 (ii)
12年 スクワッターが、占拠している建物の所有権を主張するために、当該の建物に住み続けることが必要とされる期間(ただし、当該の建物が立っている土地が未登録の場合。土地が登録されている場合は10年)
1381年 イングランドで、他人の土地への強制的な侵入を禁じる「強制的侵入禁止法」が制定された年
73万7000戸 イングランドに存在する空き家の数 (iii)
39% 独身のホームレスにスクワット経験者が占める割合 (iv)
87% スクワッターに男性が占める割合 (v)
26〜35歳 スクワッターに最も多い年齢層(43.4%)(v)
51.9% スクワッターに刑務所または少年院入所経験者が占める割合 (v)
46.3% スクワッターに麻薬依存症の人が占める割合 (v)
Source:
(i) Ministry of Justice(2011年)(ii) Daily Telegraph(2011年)
(iii) Empty Homes(2010年) (iv) Crisis(2011年)(v) Crisis(2004年)

スクワットに関するアンケート調査結果

★ スクワットを刑法上の犯罪とするという政府の案を支持しますか?


「イブニング・スタンダード」紙が同紙のウェブサイト上で実施した調査の結果

★ スクワッターは刑務所に収容されるべきだと思いますか?


「デーリー・メール」紙が同紙のウェブサイト上で実施した調査の結果
スクワットとは?
空き家や空きビル、居住者が留守中の家屋などを、所有者や居住者の許可なく占拠し、住むこと

スクワットの行為そのものは合法

空き家や空きビル、居住者が留守中の家屋などを無断で占拠することを「スクワット」と呼び、こうした行為を行う人々を「スクワッター」と呼ぶ。最近、特に保守系メディアを中心に、有名人や一般人の家がスクワットされ、多大な迷惑を被っているという報道をしばしば目にする。例えば、「イブニング・スタンダード」紙などは最近、ロンドン北部に医師とその妊娠中の妻が所有する高級住宅がスクワットされた話を盛んに報じていた。

イングランドとウェールズの現行法下では、スクワットの行為そのものは、刑法上の犯罪ではない。つまり、誰も住んでいない空き家や空き建物を無断で占拠することは犯罪ではない。こうした事態が起きた場合、当該の家や建物の所有者は、家屋または建物の「所有権回復命令」の発行を裁判所に申請することにより、スクワッターを退去させることができる(より迅速に退去させたい場合は、「暫定的所有権回復命令」を申請することもできる)。

政府が協議文書発表

既に誰かが住んでいる家が、休暇などの留守中にスクワットされた場合、居住者は、裁判所に対し、自分が当該の家に住んでいる事実を証明する必要がある。スクワッターが、家の居住者であると裁判所から認められた者から退去を申し入れられ、拒否した場合、これは刑法上の犯罪となり、その場合、警察はスクワッターを逮捕できる。このように、スクワットの被害に遭った後、家を取り戻すには、煩雑な裁判手続きを経る必要があること、それに時間と多額の費用がかかることなどが、家の所有者・居住者に大きな精神的苦痛を与えていると報道されている(なお、スクワッターが家の侵入時にドアや窓を壊すなどした場合は、それだけで犯罪行為とみなされる)。

こうした状況を受け、司法省は今年7月、イングランドとウェールズにおけるスクワットに関する法改正案をまとめ、一般の人や専門家から意見を募るための協議文書を発表した。文書に盛り込まれた改正案の一つは、スクワットの行為そのものを、刑法上の犯罪とすることである。また、家屋の所有者などが、家に住んでいる者の意向に反して、暴力や脅しを使って家の中に入ることを違法とする現行法を廃止するとの案も盛り込まれている。これは、悪徳家主が暴力的な方法でテナントを追い出すことを防ぐための法律であるが、スクワッターが家を占拠する権利を主張するために利用しているとも言われている。

「ホームレスから住む場所奪う」との声

これに対し、ホームレス支援団体などからは、「大半のスクワッターは、長期間空き家になっている建物や家に住んでおり、一部のマスコミが報じているような休暇中の留守宅に入り込むケースは稀。不況と失業率増加、公共支出削減と住宅不足で、ホームレスの更なる増加が見込まれる中、スクワットを犯罪とすることは、ホームレスから住む場所を奪うのと同じである」などの意見が出ている。 政府の意見集約作業は10月初旬まで行われ、その後、制度改正案を盛り込んだ法案が国会に提出される見込みである。詳細は司 法省のウェブサイト(www.justice.gov.uk)を参照。


SQUASH

スクワットを違法化する政府案に反対するため、今年5月に立ち上げられたキャンペーン。90年代に当時の保守党政権による同様の案に対する反対運動を行い、今回は、本文で紹介した現政府の案を受けて、再び活動を開始した。ホームレス支援団体「クライシス(Crisis)」及び「シェルター(Shelter)」、国会議員、弁護士、アーティスト、スクワッターなどの連合であり、再結成の会合では、労働党のジョン・マクドネル下院議員が司会を務めた。ウェブサイト(www.squashcampaign.org)では、スクワットに関する情報提供を行うほか、政府の意見集約作業への返答を呼び掛けている。

(猫山はるこ)

 
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