投資ゾーンについて
9月23日に「財政措置」の発表がありましたが、主要な措置の多くがその後に撤回されたようです。何か注目すべき施策は残っていますか。
この記事の執筆時点で、あまり議論にならなかった施策の一つである「投資ゾーン」の政策は残っているようです。
「投資ゾーン」とは何ですか。
新規事業や既存事業の拡張に際して、大幅な税制優遇措置を受けられる指定地域のことです。イングランドでは38の地方自治体が投資ゾーンの設置に関心を示しており、今後はスコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各地域も巻き込んでいく予定です。
大掛かりですね。私のビジネスには何か利点がありますか。
事業の設立や拡張を計画している場合、投資ゾーンに設立すれば次のような優遇措置があります。
・新規に入居または拡張した事業所に対するビジネス・レートの100%免除
・初年度の設備や機器のキャピタル・アローワンス(税法上の減価償却費)の100%控除
・構造物・建物のアローワンス(SBA)の年間20%の控除(フリーポートでは10%、そのほかの地域では3%)
・雇用主の国民保険料(NIC)の免除。これは、対象地域での労働時間が全体の60%以上で年収が5万270ポンドまでの新規従業員の給与が対象
・事業目的、および住宅開発業者による土地や建物の購入にかかる印紙税の免除
・最小限の計画要件で、大幅に簡素化された計画プロセスが適用される指定開発用地
これはおそらくゾーン内にのみ適用されるのでしょうね。
そうです。つまり別の場所でも事業を行う場合、別の場所にある事業所で主に働く従業員についてはNICの免除を適用できません。また、ゾーン外で使用するために設備や機器を購入し、手厚い控除を申請することもできません。
優遇措置はいつまで続くのでしょうか。
ほとんどの優遇措置は最長10年間適用される可能性があり、これは現行のフリーポートの制度における同様な優遇措置よりもかなり長い期間となります。NICの減免がいつまで続くかは不明です(フリーポートでは36カ月)。フリーポートと比較すると、投資ゾーンの制度はほかの点でもフリーポートより手厚いものになっています。NIC免除の所得基準がかなり高く、SBA控除が大きく、印紙税の免除の適用が事業開発だけでなく住宅開発にも拡大されています。
フリーポートが勝っている点はありますか。
フリーポートが投資ゾーンに勝っている点は関税関連です。フリーポートでは手続き書類の簡素化、関税の保税措置、再輸出の例外措置などがありますが、これらは投資ゾーンでは適用されません。既存のフリーポートも投資ゾーンの申請ができ、より手厚く長期的な税制優遇措置を利用できます。
それは覚えておいたほうがよさそうですね。
そうですね。つまり、新規事業の立ち上げや既存事業の拡大を検討しているのであれば、投資ゾーンが適切な立地かどうかを検討することは非常に意味のあることです。かなりの節税効果が期待できるわけですから。
ジョン・フィッシャー
監査・会計パートナー
Ernst &
Young、野村證券を経てグリーンバック・アランへ。会計技術はもちろん、高度なビジネス日本語を操り、日系顧客から大きな信頼を寄せられる。日本語スピーチコンテストでは2年連続入賞。