FRS102に基づく関連当事者との取引
財務諸表の作成において、関連当事者とその開示に関する質問を受けることがよくあります。企業によっては、商業的に機密情報であることなどさまざまな理由から、関連当事者との取引を財務諸表で開示することに消極的な場合もあります。関連当事者との取引は、英国とアイルランドで適用される財務報告基準FRS102の第33項で言及されています。
関連当事者との取引とは何ですか。
FRS102では、関連当事者との取引とは、金額の請求の有無にかかわらず、報告企業と関連当事者との間のリソースやサービスまたは義務の移転のことを指しています。
なぜ関連当事者との取引を開示するのですか。
関連当事者の存在および関連当事者との取引や残高によって、企業の財務状況や業績が影響を受けている可能性を認識する上で必要な開示が、企業の財務諸表に確実に含まれるようにするためです。
関連当事者の名称を開示する必要はありますか。
名称を開示する必要はありませんが、関連当事者との関係の性質を開示することが求められます。ただし、以下の関連当事者については、個別に開示することが必要です。
•その企業を支配するか共同支配するか、または企業に対して重要な影響力を持つ事業体または個人
•その企業が支配するか共同支配するか、または重要な影響力を持つ事業体
•主要経営幹部(KMP)。すなわち、企業の活動を計画し、指揮管理する権限と責任を持つ者
•その企業にKMPのサービスを提供する事業体
•その他の関連当事者。これにはグループ内の子会社、投資家の近親者、KMPが含まれるが、これらだけとは限らない
財務諸表では何を開示すべきですか。
開示が必要な最低限の項目は、以下の通りです。
•関連当事者の関係の性質
•取引と金額に関する情報
•取引条件や担保・保証を含めた未決済の残高とコミットメント
•関連当事者の残高に関して認識された貸倒費用
•KMPの報酬の合計。これには給与、雇用者が負担する国民保険料(NIC)、医療などの従業員給付、年金拠出金、株式による報酬が含まれる
•その他、財務諸表の理解に必要な重要な情報
小規模企業による開示について教えてください。
FRS102の第1A項に基づいて報告する小規模企業の場合、関連当事者の開示が少なくて済みます。
以下の者との間で、通常の市場の条件下で締結されていない重要な関連当事者との取引については開示が必要です。
•その企業に対する参加持分を有する所有者
•その企業が参加持分を有する企業
•その企業の取締役
関連者当事者との取引を開示できる場合、小規模企業は以下の詳細を提供しなければなりません。
• 取引の金額
• 関連当事者との関係の性質
• 小規模企業の財務状況を理解するためのその他の情報
イアン・ロウ
監査・会計 パートナー
会計監査部署に所属。25年以上の経験を様々なビジネスにて駆使し、また財務会計に関して企業の立場からアドバイスを提供する姿勢から、多くのクライアントの信用を得ている。