クラシカルな名画から最近の話題作まで、ロンドンを舞台にした映画は数知れず。今回は、その中から代表的な8作の主なロケ地について、ニュースダイジェスト編集部直属、シネマ特捜部のデカ長と、部下のタロウ刑事&ジロー刑事が私見を交えてご報告!(黒澤里吏)
デカ長→映画の舞台裏捜査と言えばこの男、業界随一のベテラン | |
タロウ刑事→ネバっこい捜査でデカ長を支える熱血刑事 | |
ジロー刑事→鋭さも天然っぷりも兼ね備えた、特捜部きっての優男 |
Closer クローサー
(USA/2004年/98分)
監督: Mike Nichols
出演: Julia Roberts, Jude Law, Natalie Portman, Clive Owen
小説家志望のジャーナリスト、ダンは通勤途中の交差点でニューヨークから来ていたストリッパーのアリスに出会い、同棲を始める。1年半後、アリスをモデルにした小説の出版を控えたダンは、フォトグラファーのアンナに一目惚れするが……。
4人の男女が複雑に絡み合う恋愛劇だが、いやー、濃いねしかし。 | |
ええ、本音トークの応酬ですからね。恋愛において言いたくても言えない、聞きたくても聞けないことを全部あの4人に言わせているような感じです。でもダイレクトすぎて逆に笑っちゃう部分も多いですね。 | |
基になっているのはコメディアン、俳優、劇作家など多彩な顔を持つパトリック・マーバーが手掛けた戯曲なんですよね。この映画の脚本も彼が担当しています。台詞が時にものすごく芝居がかっているのも納得ですし、「本当の気持ち」にこだわる英国人の理屈っぽさも出ているような。 | |
それで肝心のロケ地だが、全編通してロンドン一色、しかもいい具合にお洒落な大人のロンドンっていう感じだな。 | |
僕が最初に目を留めたのは、写真家であるアンナのスタジオです。アーティストのアトリエとかスタジオって、興味深いじゃないですか。だから映画でああいうシーンを見ると、ここどこなのかなってつい思ってしまうんですよね。 | |
で、どこだったんだ? | |
ロンドン東部、オールド・ストリートの近くにある E M Miller & Sonという印刷会社でした。実は、写真撮影中のダンをアリスが訪ねる場面で、この会社の看板がそのまま映っています。 | |
僕は London Aquariumに行ってみたくなりましたねー。あんなふうにぼんやりとオサカナを眺めて佇んでいる女性がいるんじゃないかという妄想が。 | |
私はアンナがラリーに、離婚届にサインしてもらうために会う、眺めのいいレストランが気になったな。 | |
あそこは National Portrait Gallery内のレストランですね。 ちなみにその後、つまりラリーとのコトが済んだ後に、アンナがダンと落ち合う場所が Theatre Royal Drury Laneです。モダンとクラシックの対比が絶妙ですね。 | |
ふむふむ。そして誰もが気になるであろう、ダンとアリスが最初にふらりと足を運び、最後に再び登場する、あの公園は……。 | |
Postman’s Parkですね。映画中に登場する「あの名前」は本当にあるのか、みなさん、ぜひご自身の目で確かめてみてください。 |
E M Miller & Son 3-11 Westland Place, London N1 7LP |
|
London Aquarium County Hall, Westminster Bridge Road, London SE1 7PB www.sealife.co.uk/london |
|
Portrait Restaurant (National Portrait Gallery) St Martin’s Place, London WC2H 0HE www.npg.org.uk |
|
Theatre Royal Drury Lane Catherine Street, London WC2B 5JF www.theatreroyaldrurylane.co.uk |
|
Postman’s Park King Edward Street, London EC4M 7DQ |
Bridget Jones’s Diary:
The Edge of Reason
ブリジット・ジョーンズの日記
きれそうなわたしの12か月
(UK/2001年/97分)
監督: Sharon Maguire
出演: Renée Zellweger, Colin Firth, Hugh Grant 他
恋人のマーク・ダーシーと相思相愛、今までの人生で一番幸せな日々だと感じていたブリジットだったが、ささいなことから亀裂が生じ、けんか別れしてしまう。そんな時、元カレのダニエルと仕事でタイへ行くことになる。
お馴染み「ブリジット・ジョーンズの日記」の続編となる本作では、オーストリアのスキー場やタイのリゾート地まで出掛けて行ったりもするが、相変わらずロンドンの風景もふんだんに盛り込まれているな。 | |
はい、まず冒頭の、ブリジットが「サウ ンド・オブ・ミュージック」のイメージでマーク・ダーシーと丘の上で抱擁を交わすシーンですが、ここはこれまでにも数多くの映画の ロケ地として使われてきた Primrose Hillです。界隈には俳優やミュージシャン、文化人など数多くのセレブが住んでいることで知られていますね。 | |
おう、私も行ったことがあるが、ここ眺めがいいよなあ。ロンドン・アイとかBTタワーとかまで見渡せるんだな。 | |
それで思い出しましたが、テムズ河沿いの夜景もきれいに撮られていますね。相変わらずブリジットは、バラ・マーケット近くの The Globe Pubの階上にあるあのフラットに住んでいますしね。 | |
相変わらずと言えば、彼女の友達も全然変わらないよなあ。そういえば、みんなで飲んでるところに、毒っ気がある言葉でちくっと人を刺す「クラゲ女」が来るシーンがあったよな。 | |
はい、あれはショーディッチにある The Light Restaurant & Barです。業界人なんかもよく顔を出す、スタイリッシュなスポットですね。バーだけでなく、フレンチ&地中海料理を出すレストランも、なかなかロマンチックな雰囲気で人気のようですよ。デートにも良さそうですね。 | |
ほおー。そう言えば、ブリジットが大切なパーティーの前にコルセットを買うお店は、なんていうところなのかな? | |
ああ、あそこは Rigby & Pellerという、メイフェアにある高級ランジェリー店ですよ。デカ長、女性に下着のプレゼントでも? | |
い、いや別にそういうわけでは……。み、店としてちょっと気になっただけだ。 | |
ふうーん、デカ長もなかなか隅に置けないですねえ。マーク・ダーシーとダニエル・クリーヴァーのごとく、1人の女性を取り合ったりしちゃうんですかあ。 | |
そんなわけないだろう。しかしあの2人のケンカは毎度、可笑しいよなあ。 | |
はい、本作でも派手にやらかしてますね。ダニエルがギャラリーで収録しているところにダーシーが乗り込む場面、あれはケンジントン・ガーデンズ内にある Serpentine Galleryです。その後、噴水のところで格闘するわけですが、あれも同園内のイタリアン・ガーデンで撮影されています。 | |
因縁の対決ね。ブリジットもいい男2人を手玉にとって、悪い女よのう。まあ、私もブリジットが好きだから、仕方ないけどな。 | |
そうですか。僕は別に好みのタイプじゃないけどなあ。 | |
僕はストライク・ゾーン広いんで、オッ ケーっすね。 | |
…………。 |
Primrose Hill Primrose Hill Road, Primrose Hill, London NW3 |
|
The Globe Pub 8 Bedale St, London SE1 9AL |
|
The Light Restaurant & Bar 233 Shoreditch High Street, London E1 6PJ www.thelighte1.com |
|
Rigby & Peller 5 Conduit Street, London W1S 2XD www.rigbyandpeller.com |
|
Serpentine Gallery Kensington Gardens, London W2 3XA www.serpentinegallery.org |
The Bank Job バンク・ジョブ
(UK/2008年/111分)
監督: Roger Donaldson
出演: Jason Statham, Saffron Burrows, Stephen Campbell Moore 他
Websters (Office Building)
136 Baker Street, London W1U 6DU
1971年のロンドン。借金取りに追われる毎日を送っていた中古車ディーラーのテリーは、昔なじみの美女マルティーヌから、ロイズ銀行の貸金庫を破るという儲け話を持ちかけられる。迷った挙げ句に承諾したテリーは、仲間とともに地下通路を掘り当て貸金庫強奪に成功するが、そこには全英を揺るがす王室にまつわる秘密が隠されていた。
実話を基にした非常にスリリングな犯罪フィクションで、私も思わず息を呑んで観てしまったよ。映画のシーンと同様に、当時このオフィスビルの屋上で実際に窃盗団の1人が見張り役をしていたっていうんだからドキドキしてしまうね。それにしても、英国政府が2054年まで封印しているという、黒人活動家マイケルXが金庫に預けていた文書の中身が気になりますなあ……。
Love Actually ラブ・アクチュアリー
(UK・USA/2003年/135分)
監督: Richard Curtis
出演: Alan Rickman, Bill Nighy, Colin Firth,
Emma Thompson 他
Grosvenor Chapel
24 South Audley Street, London W1K 2PA
部下に恋してしまった若くてハンサムな英国の首相デイヴィッド、弟に恋人を奪われ、傷心旅行に出掛けた先のポルトガルで現地の女性に恋した作家のジェイミー、円満な家庭生活を送りながらも、部下からのアプローチに惑わされる会社社長のハリー……。クリスマスのロンドンを舞台に、19人の男女が織り成す9つの恋模様を描く。
このチャペルはキーラ・ナイトリー扮するジュリエットの結婚式が行われる教会です。ほかにもロンドンの名所が満載ですが、首相官邸はスタジオ撮影。ちなみにゴードン・ブラウンが首相に就任した際、反米的な政策に転換するのでは、と憶測した識者たちは、この映画で英国の首相が米大統領に対抗するシーンになぞらえて「ラブ・アクチュアリー・モーメント」なんて言ってたらしいですよ。
A Hard Day's Night
ビートルズがやってくる! ヤァ! ヤァ! ヤァ!
(UK/1964年/87分)
監督: Richard Lester 出演: The Beatles他
Charlotte Mews
Camden, London W1T
リバプール出身の4人組ビートルズは今や人気絶頂。今日も興奮しきったファンたちをうまく煙に巻き、ロンドン行きの電車に飛び乗った。しかも今回は変わり者であるポールの叔父さんまでツアーに便乗し、マネジャーもイライラ。そんな中、分刻みのスケジュールをこなしていた彼らだが、生放送の収録直前に突然リンゴが姿をくらましてしまう。
低予算で製作されたにもかかわらず、今もまったく色褪せることのない愉快痛快なビートルズのアイドル映画。行方不明になっていた リンゴをやっと探し当てたメンバーが、猛ダッシュでテレビ局へ滑り込む手前でくぐり抜けるのが、グッジ・ストリート駅近くのこの路地です。ちなみに熱狂的なファンに追い回されるシーンは、メリルボーン駅で撮影されています。
The Da Vinci Code ダ・ヴィンチ・コード
(USA/2006年/149分)
監督: Ron Haward
出演: Tom Hanks, Audrey Tautou, Jean Reno他
Fairfield Halls
Park Lane, Croydon CR9 1DG
www.fairfield.co.uk
ルーヴル美術館館長が殺され、ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」を模した姿で遺体が発見される。仕事でパリを訪れていた米ハーバード大学教授の宗教象徴学者ロバート・ラングドンは、警察から捜査協力の依頼を受け、事件現場へ向かう。しかしそこで、殺された館長の孫娘で暗号解読官のソフィーに意外な事実を知らされ……。
ウエストミンスター寺院をはじめ、お馴染みのロンドン名所も数多く登場しますが、ここではあえてこの、クロイドンにある総合芸術施設をご紹介。冒頭でラングドン教授が講演を行う場面は、このコンサート・ホールで撮影されています。このホールではかつてビートルズやザ・フー、チャック・ベリーなど歴代のスターたちも公演を行っているんですよ。
Harry Potter
and the Half Blood Prince
ハリー・ポッターと謎のプリンス
(UK・USA/2009年/153分)
監督: David Yates
出演: Daniel Radcliffe, Rupert Grint, Emma Watson
Millennium Bridge
River Thames, London W1X 1LE
邪悪な闇の魔法使いヴォルデモートが支配力を強めようとしていることを察知したダンブルドア校長は、6年生になったハリーに決戦の準備を整えるよう促す。また、ヴォルデモートの防御を打ち砕くため、元同僚のホラス・スラグホーンをホグワーツ魔法魔術学校に迎え入れた。一方、学校内では恋の病が蔓延。誰もが誰かに夢中になっていた。
冒頭でミレニアム・ブリッジが、まるで致命傷を負って海に沈んでゆく竜のごとく、見事に崩壊するシーンがなかなかの迫力です。実はこの橋を渡るたびに毎回、「揺れてるなあ~、大丈夫かなあ~」という思いがふと頭をよぎるので、このシーンを見て、似たような怖い想像をしてる人は意外と多いんじゃないかな、なんて思ったのでした。
Lock, Stock and
Two Smoking Barrels
ロック、ストック&
トゥー・スモーキング・バレルズ
(UK/1998年/107分)
監督: Guy Ritchie
出演: Jason Flemyng, Dexter Fletcher, Nick Moran他
Battersea Bridge
Battersea Bridge Road, London SW11
闇商売で小金を稼いでいたエディは、チンピラ仲間から金を集めてカード賭博で勝負に出るが、八百長に引っかかり、莫大な借金を負うはめになってしまう。返済猶予もたったの1週間。途方に暮れる彼らだったが、そんな矢先にある麻薬絡みの強盗計画を耳にし、そこからブツを横取りしようと目論む。ところが事態は思わぬ方向へ進み……。
全編を通してロンドンの下町風景が満載だけど、痛快なエンディングのどんでん返しで、携帯電話を口にくわえたトムがぶらさがっている橋が、この片持ち梁のバタシー・ブリッジなんだそうだ。1885年に再建されるまでは、ロンドンに残る唯一の木製の橋として、ターナーをはじめ多くの画家が絵のモチーフにしていたらしいぞ。