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Tue, 03 December 2024

A GUIDE TO THE BRITISH PUB 読めばさらに行きたくなる 英国のパブ Part 1 うんちく編

英国に来て間もない人でも、パブが英国人にとって大切な存在であることにはすぐ気付くはず。レトロな内装が英国らしくて良い、と感じることはあっても、わざわざパブそのものについて調べることはあまりないのではないだろうか。今回はそんなのパブの魅力を2号に分けて徹底解剖。今回はうんちく編として、パブの歴史や巷で有名なパブ、店名の秘密など、パブで友人に話せる話題になりそうなネタを紹介する。
(文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

参考: 「the joy of pubs」Frank Hopkinson by Portico、 https://inews.co.uk、www.historic-uk.com ほか

知ってたら自慢できる英国で最も〇〇なパブ

まずは、話題作りに励むオーナーたちの努力の結果、英国全土で約4万5000ある店舗の中から「1番」を勝ち取ったパブを紹介しよう。

最も長い名前
The Old Thirteenth Cheshire Astley Volunteer Rifleman Corps Inn

英北部スタリーブリッジ(Stalybridge)にあり、通称The Riflemanで親しまれている。1950年代からパブとして経営されてきたが、もともとはビールのみの販売が許可されたビア・ハウスで、臨時の自警団の訓練所として使われていた場所。2016年に一度閉業したが、元所有者の知人がこの地域でパブを新規開業することになり名前を譲ったそう。新オーナーはオープンに向け看板を作ったが、「文字数が多いため請求書の金額に驚愕した」らしい。

www.facebook.com/p/The-Old-Thirteenth-Cheshire-Astley-Volunteer-Rifleman-Corps-Inn-100063759722565

最も短い名前
Q

最も短いパブとして1995年にギネス世界記録に登録されており、正式名称はQ Inn。Qは風変わりを意味する「Quirky」からきているのだとか。2019年にオープンした最も長い名前のThe Riflemanから50メートルほどの場所にあり、最も短い、長い名前のパブが至近距離にあると話題になった。ちなみに英南東部にはかつてThe Pub With No Name(「名前のないパブ」、現在はHaus On The Hillに改名)があったが、文字数が少ないという点ではQに軍配が上がる。

www.our-pub.co.uk/Pubs/QBar.php

最もキャパが大きい
BrewDog Waterloo

2022年にロンドン中心部のウォータールーにオープンしたスコットランド発のクラフト・ビール・ブランド、ブリュードッグのパブ。かつてユーロスター駅として機能していた駅舎が同年ショッピング・センター「The Sidings」に生まれ変わり、その中に入っている。9.5個分のテニス・コートと等しい約2415平方メートルと巨大な空間を有し、醸造所も併設。2階もあるので、席の確保にはまず困らない。ビールは60を超えるタップから選ぶことができ、新鮮なビールが飲めると好評だ。

www.brewdog.com/uk/brewdog-waterloo

BrewDog Waterloo

最も人里離れている
The Old Forge

広大で自然豊かなハイランド地方のインヴェリー(Inverie)にあるこのパブは、周辺地域からアクセスできる道路がない。天候が良ければインヴェリーより南西のマレーグ(Mallaig)発のフェリーに乗れるが、フェリーが出なければ山越えを含む約29キロをハイキングしなければならないという健脚向けのパブとなっている。苦労してたどり着いたら休業、なんていうことがないように、訪問の際は事前に営業時間の確認をお勧めする。

www.theoldforge.co.uk

最も古い
複数の店が主張

起源が古すぎて正確な記録が見つかっていないために、最も古いパブとして明記できるところはなく、各パブの主張合戦となっている。一般的に知られているのは、英東部セント・オールバンズのYe Olde Fighting Cocks(793年)、英北部バードジー(Bardsey)のThe Bingley Arms(953年)、ロンドン郊外のビーコンズフィールドにあるThe Royal Standard of England(1120年ごろ)、英中部ノッティンガムのYe Olde Trip to Jerusalem(1189年)など。 「Ye Olde」は古い英語で「The Old」の意味。

簡単に振り返るパブの歴史

ビール文化が英国に定着し現在のパブになるまでの歴史はとにかく長い。ここではビールを飲みながら読める程度に簡潔にまとめてみた。

仕事終わりのパブ仕事が終わると多くの人がパブに集まる

パブは社交場

ビールを飲むだけではなく、その地域のコミュニティーの場としても機能しているパブだが、その歴史は2000年ほど前にさかのぼる。ローマ軍の侵攻により、すでに西暦43年にはタバナイ(Tabernae)と呼ばれるワインを提供する場所が英国の主要な都市に作られた。なお、この言葉が訛り、後に酒場を意味するタバーン(Tavern)という単語ができた。

現在のパブの形態が生まれたのは意外と遅い19世紀ごろ。それまではエールやビールを提供するエールハウス(Alehouse)、ワインを中心に提供するタバーン、旅行者や巡礼者の宿泊施設イン(Inn)などさまざまな形態に分けられており、これらの総称として使われたのがパブ=パブリック・ハウス(Public House)だ。この名が正式に残っている最古の記録は1669年で、1880年までにパブとしての運営ライセンスや規格が厳重化し、現代に見られるパブが形成された。

19世紀後半のパブ19世紀後半のパブ。文化人たちもここで意見を交換した

パブ文化が廃ることなく今日まで繁栄した理由は、かつては生水を飲むより醸造の過程を経たエールやビールの方が安全だったこと、また17世紀に英国に入ってきたコーヒーや紅茶は富裕層だけに許された高級嗜好品であったことなどが挙げられる。

1960年代には約7万5000軒ものパブがあったが、現在は4万5000軒ほどに減少。これは、スーパーで安くお酒を買えるようになったこと、店内禁煙など人々の飲酒習慣に影響する社会的な変化、賃貸費の上昇や再開発などさまざまなことが影響している。

1899年作成のロンドン中心部のパブ数を表した地図1899年作成のロンドン中心部のパブ数を表した地図。
左上のRegent Circusは現在のOxford Circus駅で、
この地域だけで259軒ものパブがひしめきあっていた

パブの看板の変遷

パブの外には特徴的な絵柄の看板が吊るされていることが多い。こういった看板は、先に紹介したタバナイがワインの葉を店外に吊るしたり、低木を置いたことに始まる。その後、エールをかき混ぜる際に使うポールが使われるようになり、ワインとビールを売る場所はその両方を飾っていた。現在の看板スタイルは12世紀には定着。国民の識字率が低かったことから、絵で見て分かるよう工夫した。パブの名前や絵には、王室関連、その地域で知られる職業や動物を使ったスポーツ、また大地主の名前などに関係していることが多い。

パブのサイン貴族の紋章(写真左)や狩猟(同右)など、家系や昔の習慣などに関連しているパブのサイン

一体なぜそうなる……パブで起こった珍事件

多くの人が集まるパブだからこそ、おかしな出来事もたくさん起こる。当時世間の注目となった事件を4つ紹介しよう。

事件1酔狂親父の怒りの一発

2002年の大晦日の夜、英東部スティーブントン(Steventon)のThe North Star Innで、押し入ってきた酔っ払いの男性客を店長があしらったが、その男性はパブのオーナーだった。怒り狂ったオーナーはショベルカーでパブに戻り、グレードⅡ指定の建物に突撃。中で楽しんでいた客の中には自身の息子もいたが、お構いなしに屋根を掘削する。奇跡的にけが人は出なかったが、7万ポンド(約1300万円)の損害を出した。

事件2現代版ロビンフッド現る

2010年、英南東部ウィンチェスターのパブで男性が「たった今銀行強盗をやってきた。飲み物は俺のおごりだ!」と豪快に1200ポンド分(約23万円)の紙幣を空中にばら撒く事件があった。調べてみると本当に銀行から奪ったお金であることが判明。パブは旧刑務所を意味するThe Old Gaolhouseで、格安でお酒が飲めるチェーン店、ウェザースプーンの経営。「常連客が皆貧しいことを知っていた」のが動機だったそう。

事件3大麻の事件で訪れたはずが……

英北部バーケンヘッド(Birkenhead)にあるThe North Star Pubの上のフラットで大麻の違法栽培が行われたことが2011年に発覚。警察はさらなる調査のために12月にこの建物を訪れた際に、パブが異常なほど暖かいことに気付く。パブの地下を調査したところ、壁からぶら下がったガス・メーターを発見。5年もの間ガスを盗んで暖房として使っていたことが分かり、営業停止となってしまった。

事件4チンピラを制したオーナー

2013年、英北部ストックポート(Stockport)のチップス店の前で20人規模のけんかが発生。警察が到着すると、米映画に登場するバットマンとバズ・ライトイヤーが事態を収めていた。2人の正体は店の隣のパブThe Horse & Jockeyのオーナーとバーテンダー。当時パブで仮装パーティーが行われており、2人はそのまま外に飛び出した。若者たちはあまりにもびっくりして殴り合いを思わず止めたらしい。

英国の隠れた観光スポット著名人が訪れたパブ

現在も営業するパブの中には、多くの著名人が訪れたり映画の舞台となったスポットが多数存在する。

現役の政治家が出入りする The Red Lion, Westminster

The Red Lion, Westminster

中世のタバーンの跡地に立ち、現在の建物は1890年ごろに建てられたフラーズ系列のパブ。ホワイトホールやウェストミンスター宮殿など政治の中心地にあり、過去にはウィンストン・チャーチルやエドワード・ヒース元首相がグラスを傾け、現在も多くの政治家が訪れることで知られている。また、店内には議会の開始などを知らせるベルが設置されており、一般客は火災報知器の音とよく間違えるのだとか。

www.redlionwestminster.co.uk

文学者が頻繁に訪れた Ye Olde Cheshire Cheese

Ye Olde Cheshire Cheese

出版業が栄えたロンドンのフリート・ストリートにあるパブ。13 世紀のカルメル会修道院の一部で、現在の建物は1667年ごろに再建されたもの。サミュエル・ジョンソン、チャールズ・ディケンズなどの多くの文豪や博士が訪れたパブとして有名だ。また、性交する男女が描かれたタイルが近年発見されたことで、18世紀半ばに売春宿としても機能していたことが示唆されている。

https://ye-olde-cheshire-cheese.co.uk

SFコメディー映画の舞台 The Wilbury

スリー・フレーバー・コルネット3部作で社会派のSFコメディー映画「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(The World’s End、2013年)の舞台になった場所。The Wilburyを含むロンドン郊外の数十軒のパブで撮影が行われ、現在も聖地巡礼で多くのファンが訪れている。

www.stonehouserestaurants.co.uk/nationalsearch/eastofengland/thewilburyletchworth#/

英国の心霊スポット幽霊が出ると噂されるパブ

古城と同じくらい、パブでの幽霊目撃情報は多い。一般人が利用してきた場所だけに、より具体的なモデルの幽霊が出現するようだ。

絞首刑が行われていた The Skirrid Inn

ウェールズ南部にあるブレコン・ビーコンズ国立公園内にあるインで、この場所はかつて法廷として活用された場所だった。絞首刑となった囚人は垂木に括り付けられていたためか、めまいや息苦しさを覚える利用客が続出。また、ドアを激しく閉める音が聞こえ、グラスが割れることがあるそう。中庭では兵士と馬の気配がするという。また、定期的に現れる男女3人の幽霊がおり、突然香水の香りがしたり、スカートのすそを引きずる音が聞こえたりするのだとか。

www.skirridinn.com

髭のある男性は要注意!? The Red Lion

「古代遺跡は直線的に並ぶ」という仮説をもとに引かれたレイライン(Ley Line)が交わる、英南西部エーヴベリーにあるパブ。17世紀に当時の女将フローリーが不倫の罪により夫に殺され、その霊が頻繁に目撃されている。フローリーは髭面の男性が好みだったようで、ある日店内のシャンデリアが突然揺れたときはその真下に豊かな髭を蓄えた客が座っていたという。中庭を横切る馬車や部屋の隅でうずくまる子どもの姿を見掛けた人もいるそう。

www.chefandbrewer.com/pubs/wiltshire/red-lion

アンデッド狩りの中心地 The Flask

The Flask

かつて死んでもなお魔力で動き続ける「アンデッド」狩りが盛んに行われたロンドン北部のハイゲート墓地のそばにあり、正体不明の女性の霊が出ることで有名。頻繁ではないようだが、部屋が急に寒くなると幽霊が現れたという明確なサインになる。照明の光が揺れ始め、グラスがテーブル上を移動するらしい。また、メインのバー・エリアでは、騎士の格好をした男性が何かを見張るように外を眺めている姿も目撃されている。

www.theflaskhighgate.com

英国人のように楽しもう!パブの遊び方

英国人のようにパブを利用するにはビールを飲むだけでは足りない。 友人や家族と一緒にできるゲームでよりパブを遊びつくそう!

パブ・クイズ Pub Quiz

パブ・クイズ Pub Quiz

英国ではテレビで常にクイズ番組が放映されるなど、知識を競い合うことが好きな人が多い。パブ・クイズはそんな人にもってこいのゲームだ。パブ・ナイトなどとも呼ばれ、複数人のチーム制でクイズを楽しむ。現在多くのパブで浸透しているゲームだが、1970年代ごろから始まったといわれている。通常は客の少ない平日に行われ、10〜80問があらゆる分野から出題されたり、音楽やスポーツ、時事問題などテーマに絞られることもある。チームで参加することが基本で、そのチーム名も面白いものやウィットに富んだものであることが暗黙のルールだ。参加費がかかることもあるが、クイズの賞金やパブで使えるクーポンなどに還元される。自分や仲間の知識だけが頼りのゲームだ。

パブクイズ

パブ・クロール Pub Crawl

バー・ホッピングなどとも呼ばれるパブ・クロール(Pub Crawl)はパブのはしごのこと。夜に行うことが多いが、酒好きの多い英国人の中には休日の1日をパブ・クロールに当てることもしばしば。明確なルールはないため、ゆるりと回ったり、一定のペースを保ちつつ計画的に回るなど参加メンバーによってさまざまだ。ちなみに、街中で同じコスプレをした男性たちを見掛けたら、大抵の場合結婚式の前に独身最後の夜を楽しむために新郎とその友人が飲み明かすスタッグ・パーティー(Stag Party)の最中だ。パブ・クロールはスタッグ・パーティーの定番となっている。今後スタッグ・パーティーに参加する機会があり、よりスリルを味わいたい場合は以下のリストを自己責任で参考にしてほしい。

パブ・クロールのリスト

パブ・クロール楽しく飲みすぎて結婚式前に大失態を犯さないように……

気楽に参加できるそのほかの遊び方

パブ・クイズやパブ・クロールは事前の準備が必要だが、もっと簡単にパブの時間を楽しく過ごす方法はたくさんある。代表的なゲームはビールを片手にできるダーツ。ダーツ・ボードがあり、ダーツ・ボードにダーツが残っていればそのままプレイを始めてOK。ダーツがない場合はスタッフに尋ねると貸してくれる。プレイ料金は基本無料だが、パブによってはデポジットを渡す、またはバー・カウンターに設置されている募金箱にお金を入れることで利用できる。

一部のパブでは定期的にカラオケ・ナイトと呼ばれる、飛び入りのカラオケ大会も開催される。人前で歌う度胸がある人はぜひチャレンジしてほしい。日本のように歌詞の背景にイメージ動画やミュージック・ビデオが映されることはなく、シンプルな画面にはなるが、英語圏の歌であれば一通り歌うことができる。また、場所によってはバンドによる生演奏で歌える豪華な演出もある。

また、数はそこまで多くないものの、パブの上階や地下にシアター用のスペースを完備していることもあり、お芝居やマジック・ショーなどを鑑賞することも可能だ。同様に演奏用のステージを完備しているパブもあり、ライブ・ミュージックが楽しめる場所もある。パブでの演奏からキャリアをスタートさせてきた英国の名だたるアーティストも多いので、英国の音楽シーンに興味のある人は積極的に聴きに行くと、新たな才能を発掘できるかもしれない。

パブでのライブ・ミュージックビールを片手に聴けるのがパブのいいところ

似たような店名が存在する理由パブの名前の由来

パブを利用しているうちに、同名の店を多く見掛けることに気付くはず。よく知られたパブの名前にはさまざまな由来がある。

Red Lion & White Lion

エドワード3世の息子、ジョン・オブ・ゴーント(John of Gaunt、1340〜99年)の2番目の妻の出身地であるカスティーリャ王国の紋章に使われていた赤いライオンに由来。ジョン・オブ・ゴーントは正当な王位継承者だったが、14世紀当時のイングランド王リチャード2世との確執により虐げられた。ジョン・オブ・ゴーントを支持したインやパブはRed Lionを、リチャード2世側ならWhite Lionの看板を掲げた。

パブ The White Lion

Adam & Eve

旧約聖書の創世記に登場する2人の名が使用されている場合、そのパブが古いことを表している。大聖堂や修道院があるヨーク、グラストンベリー、カンタベリーなどの聖地巡礼ルートにはこの名を使ったインが多く点在している。

Bell

ほとんどの村に教会とパブがあった背景から使われるようになった。パブの看板が生まれた初期、ベルは月や王冠、星と同様に簡単に描けたことで一気に普及。教会のベルの数に合わせ、セブン、エイト・ベルズなどの名前もある。

パブ Bell

Duke’s Head

「君主の首」を意味するこの名は英国と他国との間に起こった数々の戦争に関連する。デュークは君主の総称なので、その時代に起こった争いで活躍した英雄をイメージし、ポジティブな意味で使用されることが多かった。

Britannia

古代ローマ時代にグレート・ブリテン島の南部を指し、後に神格化され女神となったブリタニア。中世にはその存在は忘れ去られていたが、他国との抗争が増えた18世紀初頭に人々を団結させるために意図的に増やされた。

Swan, Black Swan, White Swan

12世紀より白鳥は王室を象徴する鳥に指定されたことで広く知られ、生息区域であるテムズ川沿いや湖のそばのパブでよく見られる。

パブから名付けられた地下鉄の駅名

ロンドンの地下鉄駅はその地に関連する場所や地主の名前、風景から付けられている。Angel、Elephant and Castle、Maida Vale、Manor House、Royal Oak、Swiss Cottageはその周辺地域にあったパブやインの名前から来ているのだ!

著名人が残したパブ、ビールにまつわる格言

国民にたくさんのビール、おいしいビール、
そして安いビールを与えなさい。
そうすれば人々の間で革命は起こらないから。

ヴィクトリア女王

1杯のエールと身の安全のためなら、
自分の名声の全てを捧げる。

劇作家ウィリアム・シェイクスピア

いいえ閣下、良いタバーンやインほど
多くの幸福を生み出すものは、
まだ人間によって作られておりません。

文学者サミュエル・ジョンソン

人生における野望が二つある。
一つは全てのパブで乾杯すること。
もう一つは地球上の全ての女と寝ること。

俳優オリヴァー・リード

ジョージ・オーウェルが考えた理想のパブ

パブを愛した作家ジョージ・オーウェルが1946年に発表したエッセイで、自身の理想を投影した架空のパブMoon Under Waterについて書き記している。

  1. パブの2階ではボリュームたっぷりのランチを食べることができる
  2. 会話できるほどの静けさがある。ラジオを流したりピアノの演奏はしない
  3. パーテンダーは全ての客の名前を知っている
  4. スナックとして、レバーとソーセージのサンドイッチ、ムール貝、チーズ、ピクルス、キャラウェイ・シード入りのビスケットが提供される
  5. 建物や家具はヴィクトリア朝風であること
  6. ガラスやピューター製とは別に、ストロベリー・ピンク色の陶器製の水さしがある
  7. 広い裏庭を備えている
  8. 食事エリアとは別の場所でダーツを楽しむ
  9. タバコ、アスピリン、切手など、客にとって便利なものも販売。電話の使用も認められている
  10. ピューター製のポットでクリーミーなスタウトをドラフトで提供。スタッフは酒器に非常にこだわりを持っており、取っ手のないグラスで1パイントを提供するなどの間違いは決して起きない

ピューター製のマグ錫を主成分とした合金のピューター製のマグ

エールを守り、パブの繁栄を促す 活動団体CAMRA

パブで国内外のさまざまなビールやエールが楽しめる一方で、大量生産品に押され小規模な醸造所がより苦しい経営を迫られているのも事実。そんな状況に待ったをかけるべく、英国産の高品質のエールや洋梨を発酵させたペリーを守り、パブをコミュニティーの一部としてより繁栄させることを使命とする消費者団体CAMRA(Campaign for Real Ale)が英国にある。

具体的な活動内容は、国内各地のエールやサイダーを集めたエール・フェスティバルの開催や、パブ情報をまとめたガイドブックの販売、優れた改修と保存を行ったパブや並外れた美しい建築デザインの新店舗に贈られる、イングランドの歴史的景観の保護に努めるヒストリック・イングランドと共同開催のパブ・デザイン・アウォーズなど、実に多岐にわたる。

伝統的なパブを後世に残していくため、私たちがおいしく同団体に貢献できる方法は、メンバーシップに加入すること。会費は年間30.50ポンドで、団体が認めたリアル・エールが飲める30ポンド分のバウチャーがもらえるほか、さまざまな特典もつく。現在会員は約15万人と多くの賛同者が活動を支援している。

www1.camra.org.uk


 

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*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

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