ニュースダイジェストのグリーティング・カード
Wed, 04 December 2024

環境団体が語るクジラを食べたらいけない理由②

International Fund for Animal Warfare (IFAW)
クジラ生物学者
ヴァシリ・パパスタブルさんの主張

「国際法に違反しているから」

「国際法に照らし合わせた際に重大な懸念があります」

-まず始めに、捕鯨問題に対するIFAWのスタンスを教えてください。

日本の調査捕鯨を含む、あらゆる形態の商業捕鯨活動に反対です。捕鯨を実施すれば人間がクジラを絶滅に追いこんでしまうことは過去の歴史が証明していますし、被弾してからクジラが息絶えるまでに長時間苦しみもがくという殺し方も残酷だと思います。さらに言うと、国際法に照らし合わせた際に重大な懸念があります。

-「国際法」とは、具体的にどんな法律のことを指しますか。

クジラは非常に移動性が高く、海に住む哺乳類であるということから、国際法の見地から見て特別な地位を持っています。ゆえに国連の海洋法条約には、クジラの保存の仕方について、世界各国の話し合いの下に慎重に決定することが定められているのです。

1994年のIWC総会において世界各国が話し合った結果、日本というたった1カ国を除いたその他の23カ国が南氷洋クジラ保護区を設置し同地区での捕鯨を中止することに賛成しました。この時点で世界諸国の見解が一致した以上、日本もこの決定を尊重し、捕鯨を中止すべきというのが理に適った考えだと思います。実際、1982年より実施されたモラトリアム以後は、スペインやブラジルといったかつての捕鯨国もこの決定を尊重し、捕鯨産業から撤退しているのです。

-ただIWCで出された決議の全てが法的拘束力を持つわけではありませんし、既に捕鯨活動を再開しているノルウェーやアイスランドの例もあります。捕鯨しているという理由で日本を罰することはできない以上、「国際法違反である」との主張にはどこまで説得力があるのでしょうか。

国際司法の場で法的に訴える方法はいくらでもあります。ただこういった行動は政府が起こさないと意味をなしません。私たちは政府が動くよう働き掛けているのです。

「研究資金を集めるために動物の肉を売るという仕組みが出来ているのは、恐らく「調査捕鯨」のみでしょう」

-IWCの決定でいえば、IFAWが反対を唱えている日本の調査捕鯨については認められているのではないでしょうか。

国際捕鯨取締条約第8条には「科学的研究のために捕獲したクジラは可能な限り加工して利用しなければならない」ことが定められています。同条約を日本政府はクジラ製品を販売すべき、と解釈しているようですが、これは間違っています。確かにクジラを加工処理してよいし、製品を分配することも許されています。しかし販売することまでは認められていない。IWCで定められた「調査捕鯨」の目的とは、何千頭ものクジラの殺戮を許可することではなくて、最低限必要なサンプルを採取して、そしてそれらのサンプルを決して無駄に扱ってはならない、ということなんです。

-ただクジラの生態調査には、やはり多大な資金が必要となりますよね。研究目的で一度捕獲したクジラの肉をそのまま捨てるのではなくて、必要としている食産業に販売し、その売上をまた研究活動の資金とする、という考え方には一理あるような気がします。

科学者が研究資金を集めるために研究対象となる動物の肉を売って資金を集めるというのは非常に稀なことであり、恐らくこんな仕組みが出来ているのは「調査捕鯨」のみでしょう。だからこそ、科学者たちの間に利益を巡る争いが発生してしまうのではないでしょうか。

「IWCは日本が集めているデータなんて必要としないのです」

-多くの生物学者たちがクジラの生態調査の難しさを述べています。ほとんど海面下に隠れているため、彼らの生活を人間が観察するには色々と不具合があるようなのです。もし日本の調査捕鯨が認められなくなったとしたら、クジラの生態を正確に把握する術はあるのですか。

IFAWはここ20年間にわたって、クジラの生態調査を行うための新たな科学技術開発の第一線に携ってきました。なぜならば、死んだクジラを解剖する「調査捕鯨」で集められる情報量には、限界があるためです。とりあえず倫理的な観点は一切排したとしても、科学者の間では「調査捕鯨」という研究方法は評価が非常に低く、学術誌上で取り上げられることもほとんどありません。

理由の第一として、殺してしまったらデータを取るのは一回きりです。しかし特定の生きている動物を対象とすれば、成長に従って繰り返し調査を行うことができる。第二に、「調査捕鯨」では捕獲しやすいクジラばかりがサンプルとなる傾向があって、データに偏りが出てしまいます。そして最後に、IWCは日本が集めているデータなんて必要としないのです。なぜならば、捕鯨がもし再開されて捕獲数を設定するとなったら、現在の生存数と、過去に人間が捕獲した記録さえ分かればいいのだから。現在の生存数に関しては、クルーズに乗ってホエール・ウォッチングをすれば確認できるのです。実際、IWCは「調査捕鯨は本組織の運営に当たっては必要とされない」と明言しています。

-最後に、このいわゆる捕鯨問題は、クジラを食べる習慣を持たない国々による日本に対する文化侵略だとの声があります。こういった意見を聞いてどう思われますか。

英国はかつて、日本よりもずっと強い捕鯨文化を持っていました。今から200年程前、日本が捕鯨を本格的に開始する以前から、英国を含めた欧州諸国は捕鯨活動を行っていたのです。日本にクジラを撃つための大砲の使い方を教えたのもノルウェーです。

さらに言えば、IFAWとグリーンピースが共同して行った調査によると、日本の国民はクジラの肉をほとんど食べず、しかも捕鯨を日本の文化として強く意識しているわけでもない。だから日本の水産庁が一体なぜこれほどまでに捕鯨問題にこだわるのか、理解できません。日本の国際的な評判を落とすだけだと思うのですが。
Photo: IFAW

International Fund for Animal Welfare(IFAW)
1969年にカナダで設立された環境保護を目的とするNGO団体。元々はアザラシの子どもの捕獲を阻止するために発足したが、今ではクジラを含め広く野生動物やペット用の動物などの保護運動を展開している。
www.ifaw.org


 

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