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Mon, 11 November 2019

英国で暮らす日本語学習者が語る 私たちが見た日本

英国での長期滞在経験を持つ誰もが、日本語を驚くほど流暢に話す外国人に出会った経験を持っているはずだ。ある調査によると、英国における日本語学習者の数は約1万5000人。欧州の言語とは文字から文法まで根本的に構造が異なり、また日本以外の国ではほぼ全く使用できない日本語というマイナー言語を、彼らはなぜ学ぶのか。その問いを通して、彼らの目に映る日本の姿を探る。

ティム・ラメーリスさん

オランダ東部ヘルダーラント州出身、ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)在籍。3月に行われた第8回大学生のための日本語スピーチ・コンテストのカテゴリー1(日本語を専攻・副専攻として学ぶ生徒を対象)で優勝。高校2年生のときに日本のホスト・ファミリー宅での滞在経験あり。2011年9月から1年にわたり一橋大学に留学。大学卒業後は、日本での就職が決まっている。

親は「日本語なんて勉強してどうするの」

初めて会った人や久しぶりに再会した友人に、大学で何を学んでいるかと尋ねられて「日本語」と答えると、たいてい驚かれます。先日もオランダの実家に戻った際に髪を切りに行くと、美容師に「日本語って、字がたくさんある言葉だよね。すごいね」と言われました。「何がきっかけとなって日本語を学び始めたのですか」とよく聞かれるのですが、自分でも明確な理由が分からないんですよね。昔から日本への漠然とした憧れは持っていたのですが、何に対しての憧れだったのかがはっきりしません。少なくとも侍とか漫画のキャラクターに特別な思い入れがあったというわけではないです。

高校生のころから、外国語を学ぶのが大好きでした。オランダ語と英語で授業を行うバイリンガルの学校に通学しながら、フランス語、ドイツ語、スペイン語を履修。理系専攻だったために必修科目そのものが多く、いくつかの授業が重なってしまうこともあったほど外国語学習にはのめり込みました。そのうち欧州の言語とは文法も語彙も全く異なる外国語を習得したいと思うようになって、日本語を学び始めたんですよね。自分にとって日本語学習は、新たな挑戦としての意味合いを持っていたのです。

大学進学に際してはもともと医学部に進もうと思っていたので、進路を変更して日本語を専攻したいと両親に伝えたときには、「日本語なんて勉強して将来は一体どうするの」と言われてしまいました。でも最終的には「好きなことを続けてみなさい」と理解してもらうことができて、現在に至っています。

日本人が持つ思いやりの心は世界で一番です

日本について私が好きなのは、何と言っても日本人の礼儀正しさ。日本人が持っている思いやりの深さは、世界で一番です。誰もが親切で、皆お互いを信用している社会であると感じます。日本での滞在経験のある友人たちの間でよく話される話題ですが、落とした財布が持ち主の元に戻ってくる、なんて日本以外の国ではあり得ないですよ。

逆に少し違和感を覚えるのは、海外を一括りにしてしまう傾向でしょうか。日本滞在中に何度も「海外での事例はどうでしょうか」といった質問を受けました。その度に私は「オランダと英国の例しか知らないのですが」と断ってからそうした質問に答えていましたが。また日本のテレビ番組には「海外ではこんなものが流行しています」という形で様々な事象を紹介するものがたくさんありますよね。当たり前のことですが、いわゆる「海外」には異なる国がいくつも存在します。だから「海外では」という前置きをした上での説明には無理が生じると思うのです。

もしかすると、日本では異国に対する憧れが強すぎるがために、「海外」という言葉がときに一人歩きしてしまうのかもしれませんね。

外国語は実践しなければものになりません

日本は、国内の至るところに山もあれば海岸もありますよね。私の出身国であるオランダは小さな国なので、観光旅行するにせよ、ビジネスするにせよ、とにかく国外に出なければ大したことができない、という現実があるのです。外国へと足を延ばし、他言語を使う機会が自ずと増えます。

外国語は、実践する機会がなければ絶対にものにはなりません。例えば中高で習得したはずの僕のスペイン語は、高校を卒業して以来全く使う機会がなかったためにすっかりさびついてしまい、スペインを先日訪れた際には片言しか話せませんでした。その意味では、国内にいくつもの魅力的な観光地があり、日本人だけを対象としたビジネスが成り立ちやすい日本という国で暮らしながら外国語を磨くというのは、とても難しいことなのかもしれません。

あと日本のテレビで放送される外国の映画やドラマって、吹き替えが多いのではないでしょうか。オランダの番組はすべて字幕放送。だから小さな子供たちが、すぐに英語のセリフを真似するんですよね。英語嫌いで知られるフランスにおいても吹き替え放送が多いという印象があります。日本人の英語に対する苦手意識を克服するためには、吹き替え放送を禁止にする、なんていうのも一つのアイデアとなるかもしれません。

エリザベス・チャハルさん

ケンブリッジ大学クレア・カレッジ文化人類学学科卒。JET プログラムを通じて、1995年より静岡県浜北市の高校や同県掛川市の総合教育センターに外国語指導助手として派遣される。その後、日本のブリティッシュ・カウンシルなどを経て、現在はラフバラ大学の学生サポート・センターに勤務。2月に行われたビジネス日本語スピーチ・コンテストで優勝を果たした。

日本語を話すと言っただけで感心されます

多くの英国人が、日本語は習得がとても難しい言語であるという印象を持っていると思います。そもそも英国には日本語を話す人の数が少ないですから、非常に特殊な能力であると思われるのでしょうね。「日本語を話します」と言っただけで感心してくれる人が結構います。

私が日本語を学ぶようになったのは、JETプログラムを通じて日本に派遣されてからのことです。正直に白状すると、私は以前からアジア全般に興味は持っていましたが、特に日本に行きたいと思っていたわけではないんですよね。英国の若者たちの多くが、大学の入学前や卒業後に「ギャップ・イヤー」と呼ばれる長期休暇を取った上で、世界中をバックパッカーとして回ったり、ボランティア活動を行ったりします。私は大学入学前に取ったギャップ・イヤー期間中に、インドネシアでボランティア活動に携わったことがありました。そのときの体験が非常に印象深かったので、大学を卒業したらまたどこかアジアの国に長期滞在したいな、と漠然と思っていたのです。ただインドネシアでのボランティア体験は、家族や友人など周囲の人々からの多大な支援を受けて実現できたことだったので、今度はもう少し自立した形で夢を実現できたら、と考えていたころにJETプログラムの存在を知りました。

英語の指導助手として日本に派遣されてからは、かなり本格的に日本語を勉強しました。もともと外国語を学ぶのは好きなのです。学生時代にはフランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ロシア語を学んでいたんですよ。日常生活を送るには困らない程度に日本語を話せるようになったのは、日本での滞在を始めてから1年ほど経ってからでしょうか。

英国人と日本人は似ていると思います

十分な予備知識を持っていなかったにも関わらず、日本に着いてからカルチャー・ショックのようなものを受けることはありませんでした。回りくどい言い方をするところなど、英国人と日本人はとても似ていると思うのです。むしろ私がカルチャー・ショックを受けたのは、日本での英語教育の研修で一緒になった米国人の人々に対してです。彼らのあまりに直接的な物言いに、同じ英語を話すのにこんなにも違う文化を持つ人がいるのか、と驚愕したことを今でもよく覚えています。日本について何か驚いたことがあるとすれば、食べ物でしょうか。静岡県の赴任先に着いたばかりのころに、現地の小さなお店で、見た目の至ってシンプルなパンを購入したのです。そのパンをかじってみると、意外なことに中には甘いものがぎっしり……。あんパンだったのですね。何も知らずに食べたので、あのときはびっくりしました。

私がこれまでに出会った日本人は、皆優しくて、正直で、信頼できると感じられる人ばかり。ごくたまに考え方がすごく固いと感じられる人にお会いすることもありますが。特に年配の男性にそういう傾向がある人が多いかもしれませんね。英国のメディアには日本を閉鎖的な社会であると捉える風潮がありますが、私自身はそのように感じたことはありません。むしろ海外に関する興味が旺盛で、フレンドリーな人々ばかりであるという印象を持っています。

英国では受け身では物事は進まない

日本の職場では良い同僚たちとの出会いに恵まれました。日本で暮らしていると、外国人というだけでお客様扱いというか、周囲の人が興味を持って話し掛けてくれたり、世話を焼いてくれたりするじゃないですか。逆に英国では良くも悪くも外国人を特別視しないので、渡英したばかりの人々が受け身でいたら物事が進まない、ということはあり得るでしょうね。ただ当たり前のことですが、英国で生まれ育った英国人も、今までの付き合いとは別の新しい友達を作りたいと思っています。だから英国に住む日本人の方々も、積極的に交遊しようとさえすれば、英国人の友達を作るのはそれほど難しくはないと思いますよ。

*JETプログラム
正式名称は「外国語青年招致事業」。日本の地方公共団体が、主に英語を母語とする大学卒業者を日本に招聘し、外国語指導助手や国際交流員などとして各地域の学校や地方公共団体の国際交流担当部門に派遣する事業。

お二人へのインタビューは、すべて日本語で行われました

 

日本語学習者たちに好きな漢字を書いてもらいました

主にアルファベットを使用する欧州圏の出身者や留学生にとって、日本語の漢字学習はかなり骨の折れる作業であるに違いない。そんな彼らに、好きな漢字を手書きで表してもらった。
Photo: Ryohei Takimoto

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